沈みゆくなかで(5)


同じ職場で働いていて

夫にもバレたのだから

辞めなければいけない



でも、もう数日で7月

あと数日で辞めます、では
あまりにも無責任だから

入っているシフトの分は勤めてから
辞めたい、と

お前の願いはこれから俺が叶えると
夫は愛の再建を誓っているから

今なら言いたいことがちゃんと言える、と

残りのシフトを出勤するよう、決めた。



翌日出勤し

帰り際、彼とすれ違うチャンスがあり



本当に、ごめんなさい


m(_ _)m


と、お互い同時に頭を下げた


思わず、二人で笑ってしまい

少し話せた、昨日のこと。



旦那さんが店に来て、駐車場で話をした

これまでの経緯を謝罪し
金輪際、接触しないように誓ったこと

あのまま、俺たちあと少し遅かったら

どうなってたか、わからなかったもんね

と、どこか救われたような清々しい笑顔で
俺は、危なかった
もう、踏みとどまる限界にいたんだ、と

そして夫からは
男として、社会人として
あるべき姿や、お前はそのままでいいのかと

兄のように、旧知の先輩のように

なんかいっぱい、為になる話を
してくれて

俺は、すごい人だなと思った
こんな言い方、変だけど、感動したんだ

すごい大人の男だなと思うと
自分が情けなくなったし

ちゃんとしなきゃって思った、と

清々しい笑顔で嬉しそうに話す。




これまでの事、ありがとう

旦那さんと、仲良くしなよ

ものすごく、愛されてると思うから



私は、昨日の今日なのに
笑顔で話せたことが嬉しくて

この時のふたりの間に流れた

幼なじみの共犯者のような

一緒にイタズラした事がバレて

あはは、と笑っているような

大いなる愛の庇護のもとにいる
子供たちのように無邪気だった。



その日以降職場には、平日でも


仕事を抜け出したのか
車を飛ばして夫が様子を見に来たり

帰る時間に合わせて迎えに来たり

土日は、子供を連れてお昼を買いに来たり

しょっちゅう、夫が
職場に来るようになっていた。

お前の事が、心配だから

お前は魅力的だからあいつ以外にも
男が寄ってきそうだから

働いてる時のいきいきした姿を見るのが
好きだから


残り数回のシフトのうち
夫が何らかの形で
私が気づいていなくても、遠くから
見ていたらしい


私が気づいていなくても、
離れたところから、姿を見ている

接客してる時の笑顔は、最高だから

ずっと、見ていたいから、、、



今まで抑えていた、私への愛情表現を

抑えることを辞めたんだ、と
宣言してからの夫は


それまでとは別人のように

歩く時には手を添えてエスコートし
常に私の意見を求め
どうしたい?全部お前が決めていいよと言い
家事はすべて引き受け
夜中までかかっても、寝ないで
ずっとご飯を作ったり
片付けたり、掃除したり

ほとんど寝ない興奮状態で
毎日私を抱き

明け方もう、仕事に出掛けるような

不自然なサイクルで
張り切っていた


毎年、夏になると突然ターボがかかり

寝られない、、という
悶々とした不眠ではなく

やりたい事があり過ぎて!
やるだけのエネルギーが溢れてて!
全然疲れないし、眠くならない!!


というサイクルが、やってくるのは
把握していた

これは、もしかして、

躁状態と、呼ぶのではないか、、?

と思いながらも


家政婦扱いを返上し

突然お姫様のように大事大事に扱われ

座ってて、やらなくていい、
寝てていい、何もしないで

ただ、幸せそうに、笑ってて、、


夫の、ターボと反比例するように

何か、ザワザワする、違和感、、


でも、愛を再建したい、と

必死に愛情表現をし、
一日中、手を繋いだり
愛してるよとキスをしたり
すべて、結婚前にもなかったような

今まで見たことのない夫の姿に


本当は。こういう人だったのかな、

強がって、見せなかったものが

私の浮気発覚というショックにより

浮かび上がってきた素直な姿なのかな、と

少しづつ、少しづつ

歩み寄るように、

この、再建しようとしている愛に

安心して、踏み込めるかな、

大丈夫かな、グラグラしないかな、、


探るように一歩づつ

少しづつ、夫の愛を受け取ろうと

心を緩めて

それまでの事を許すように

私が、わだかまりを解くだけだ、、



恐る恐る、こわごわ

受け取りながら、過ごした


身を任せて良いのだ、と
思えば思うほど


本当に?ほんと?

もう、前の姿には、戻らない?

夢のような景色はパチンと消えて

また、家政婦に戻るんじゃないの、、?


愛という名の、真綿のように見える
なにかに

ゆっくりゆっくり

沈んでいくように

安心なのか安全なのか

確かめながら

身を任せることも楽しくなり

本当に、どうやらもう

このまま、お姫様で居られるようだ、、

じっくり時間をかけて

この愛に、委ねてみようと

手綱を緩めながら寄りかかるように


ゆっくりゆっくり

沈んでいく、2ヶ月が過ぎた

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