生きるために、手放す(4)


この2月は、

毎日の密度が濃厚で

死んでいくようだ、と思っていた日々は

今思い返すと
生きようとするエネルギーに
溢れていたのかもしれない



深い闇を
無抵抗に掘り下げていく日々は
強い強い光の当たる
裏側に落とされた陰だったようだ



バレンタインデーが近づくと
一年前のバレンタインのあの時期を
毎日、思い出していた。


濃厚に、性欲、愛欲で引き合いながら
必死に抵抗し、自分の欲深さを怖がり
繋がりたくてたまらない

あの、ぐるぐるぐるぐる
悶々としていた、日々の中で

バレンタインデー、
そんなイベントを気にしたのは
何年ぶりか

渡すのか、渡さないのか

渡せるか、渡せないか

初めて恋をした娘のように
ドキドキして
艶っぽくきらめいていたはずの

あの日々から、一年


雲泥の差、と呼ぶのがふさわしいような

真っ暗闇の、この年の2月。
この年はバレンタインなど気にもならず
死んだような体を引きずり

仕事、子供たちの送迎、家事に明け暮れ
忙しく動いていた。



スーパーで、私の後から入ってきた
何人かの人たちと仲良くなり 
私が辞めたあとも
プライベートでも、集まったり
連絡を取り合ったりしていた。

その人たちから、
今回の人事異動で
異動になる社員が、いっぱい居る、と

その中に、彼の名前も、あった。

一年前、この時期の異動で
彼は自分が異動になるだろうと予想していた。

当初から、
短期間だけと言われて配属されたこともあり、

仲良くメールしていた頃、
年に数回ある、異動のたびに
今回の異動、どうなるかなぁ~という
やり取りをしていた。

異動になっちゃったら、、
もう、毎日のように姿を見られないのかぁ、、
それを考えるだけで
電池が切れるような気持ちになり

でも、異動になったら
正式に、個人的に友達になろうね、と
彼に言われると、嬉しくもあり

でも、でも、
そう言いながら会えない方が不安、
そのまま会えなくなるくらいなら
仕事してて、ただ顔を見るだけでも
近くにいて、姿を見ていたい

俺がどこに異動になっても
どこまでも、連れて行くから


と、言われてもいたし

でも、エロトークまみれになったら

個人的に、仲良くしようね、とも
お互い言っていたし、

ずっと、一緒に、いたい

でも、それにはかなりのリスクがある

なにも、超えられず、終わったけれど

あの時、リスクを超えてでも

会ってしまえば良かったのかも、

二人っきりで会ってもいないのに、
戦犯扱いされて
あいつを殺す殺すと
毎日恨み言を聞くくらいなら

いっそのこと、やっちゃえば良かったのに

責められるのは、同じだったよね、、

一人、乾いた笑いを漏らす



会いたいなぁ、いつか、、

やっぱりわたしは、
めちゃくちゃドロドロでもいいから

すべて無くしてもいいから

飛び込んだら、良かったのかな、、

そんな回想で、胸が疼き
忘れていた、忘れようとしていた

彼への、愛欲が
ふつふつと、湧き出す


そして、友達から

彼の異動先が、

いま私の働いている
派遣先と、同じ街、

とても近くに、異動する、と聞き


運命、、という

陳腐な、メロドラマのような単語が

 頭の中にテロップで光る



運命、、

職場を替えて、離れようとした

その直後に

彼もおなじ街のお店に

異動になった、なんて


一体、なんのはからいなのだろう、、


この時のわたしは、
ただそれを、

何かいけない符号のように受け止め

ものすごく、怖くなった


同じ街で働いているなんて

絶対に、夫にバレてはいけない、、

またひとつ。

鉛の玉が、心の中に
深く沈んだ。


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