旅立ち(3)


決意は固めたけれど
ずっと苦しかった。

それでも、離婚届を用意し
頭の中で段取りを考え
するべき事を整理する。

可愛くて、かわいくて、たまらない
息子たち

顔を見るといちいち涙が出て
今度の土曜日にさー、などと
明るい未来の話をされては、胸が痛み

覚悟から、決行までの2日間
やっぱり、、
でも、、と

何度も、迷った

今じゃなくても良いのかも
実家の家族に相談したら
もう少し違うやり方もあるのかも

でも何故か、もう、決めたことを
翻すつもりもないのが、わかっていた

出奔の2日前
いつものように寝るまえに 次男に本を読む

子ねずみが、お月見をするという
優しい絵の、美しいお話のその絵本、
子ねずみたちが、月を見上げて喜ぶ絵をみて
子ねずみと同じように目をキラキラさせ

お月見、しようねー、と言われ

本を読みながら声を詰まらせる

こんな事を繰り返し

前日の夜は、夫が泊まりがけで不在

長男の習い事を休んで、
3人で、ごはん何食べようかと、出かける

これが、最後の晩餐だな、、と
涙をこらえる

食後にはいつものようにアイス屋さんに寄り
アイスを嬉しそうに食べる、その顔を見て
苦しくなり
運転しながら、泣く

もう、どれだけ泣いても
引き返さない

愛おしい顔を、焼き付けるように
いつまでも、寝顔を眺め
家を出る理由を手紙に書く

最小限の荷物を持ち
書いた手紙を封じ


家の中を見回す

そして家の中で天を仰ぎ

どうか、どうか

この子達がつねに

愛の中にありますように

健やかに、育ちますように

どうか、どうか、、、

私に、愛を見せてください

すべては、愛なんだと

この子達にも、わかるように

どうか、幸せでありますように

絶対に、大丈夫だと
この子達は、大丈夫だと

委ねて、手放します



愛、と呼ばれる、空の中に

ふわりと、手をはなし


あとは、祈るしかなかった。



朝になり
予定通りに、子供を連れて家を出る
私が、用事があるので
実家に預けることになっていた、
母が最寄り駅まで、来てくれていた

母の姿を見て
ごめんなさい、と胸の内で呟く

何も言わずに、出て行くのは
止められたくなかったからだ

実家に相談したら、絶対に止められる

でも私は何故か
これは、やらなきゃいけないと、
一人で、出て行くのだと
ものすごくしっかりと、決めていたので
止められたくなかった。


家を出るまえ、
斜め向かいの彼女にも言えず
黙って一人で抱えていたこの計画を
言わずにいようと思っていたけど
偶然会い、話す事になった

泣きながら、不安なの、怖いの、と
言う私に
大丈夫、絶対に大丈夫
と背中を押され
実家の家族には、止められそうで言えないこと
こんな事をしでかして、嫌われると思う
だから、
何も言わずに、出て行くことを
話した。


嫌われたく、なかった
親にも、妹たちにも
ひどい母親だと、罵られたくなかった

父にも、母にも
心配と迷惑をかけるだろう
なにかあればすぐに動くのは妹たちだろう

本当に、ごめんなさい

あとの事を、頼むことになると思うけれど
よろしくお願いします。


もう、会えなかったら、ごめんなさい

母の顔を見て改めて
自分の実家の家族のことも、手放すのだと
胸が痛み
子供の手をひいて、駅に向かって歩く後ろ姿に
頭を下げ、
失うものの大きさに、また泣く

泣いてもいい、泣くだけ泣いて


進むしかない。

もう、すでに全ては整い

旅立ちは、始まっているのだから。


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