オタクは『伝え方が9割』のとおりに伝えたら結婚できるか?

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                  『伝え方が9割』
                        
なんとなく面白そうだったので、立ち読みしてみる。

この本を簡単に紹介すると、
【伝え方には技術があり、それを使うことで相手に『イエス』と言わせる可能性が上がる】
という内容だ。

たとえば、
「芝生に入らないで」
と、こちら側の希望だけ伝えるのではなく、
「芝生に入ると、農薬の臭いがつきます」
と、“こんなデメリットがあるから、やめてください”という情報も伝えるという方法が書いてある。

そしてこの本には、デートの誘い方も載っていた。
「デートしてください」
ではなく
「驚くほど旨いパスタの店があるけど、どう?」
と、相手の好きなものと関連させて誘うのだ。


デートの誘い文句にマニュアルを求めてしまうところが、いかにも恋愛初心者だ。
しかし、僕は百万の援軍を得た気持ちで、レジに向かった。

準備する

ただ、僕は慎重だった。
自分はオタクだ。まずはある程度身なりを整えるところから始めた。
脱オタクに成功した友人にアドバイスを求める。
床屋(1800円)ではなく、美容院(5000円)に行くようにした。
スーツは、オーダーメイドのものを購入する。
職場での服装も大事だと聞いたから。
職場のおばちゃんには、
「宗一郎くん、雰囲気変わったねぇ。彼女でもできた?」
と言われた。
よしよし。変化が出ている。

勝負に出る

デートに誘いたい。
士気は高まったが、二人きりになるチャンスはなかった。
始業から終業まで、人がいる。
辛抱して待った。

すっかり暑くなった7月上旬、桜さんと二人でコピー用紙を倉庫まで取りに行くことになった。
倉庫は別の階にあるため、行くまでに5~6分かかる。
二人きりになっただけでも、緊張した。
唇がパリパリに渇いたし、歩き方も不自然になる。
鼻毛は飛び出してないか?と、急に不安になった。

でも、言うなら今しかない。

「こう暑いと、まいっちゃうよね。夏バテしてない?」
「大丈夫です。しっかりご飯を食べてエネルギーを充電してますよ」

「桜さんは休日も自分でご飯を作るの?」
「作りますよ。でも、ランチに出かけることも多いです」

「そうなんだ。おいしい鶏の唐揚げを出す中華料理屋があるんだけど、一緒にどう?」










なぜ、唐揚げを選択してしまったのか。
どうして、中華料理屋なのか。
たしかに桜さんは唐揚げが好きと言っていたが、他にも好きなものがあるはずだ。
ピザやパスタといった、女性が好きそうでオシャレなものにすべきだったと思う。
恋愛経験値が低いゆえの過ちだった。
女性をデートに誘うのは初めてである。

桜さんは、
「えっ」
と驚いたあと、
「予定を確認してからでもいいですか」
と言った。

僕は、
【勇気を出して言えた!】
という安堵と、
【どうせ遠回しに断られるんだろうな】
というあきらめで、複雑な心境だった。
もし乗り気なら、
「どんなお店なんですか?どのあたりにあるんですか?」
と言った質問があるはずだ(桜さんは、会話を盛り上げるのも得意だ)

しかし、桜さんは無言になった。
自分たちのフロアに戻るまでスゲー気まずかった

フロアに到着し、コピー用紙を補充して席に着き、雑務をこなした。
五分ほどしたら、桜さんから、

『〇月×日、空いていますよ』

と、いつもどおりの達筆な文字のメモを渡された。
周りの人に気づかれないよう、さりげなく。
椅子から飛び上がるほどうれしかった。

そのあとはメモの応酬で細かいことを決めた。
こうして、デートの誘いに成功した。

デートをする

〇月×日。
11時に待ち合わせ場所の駅へ車で迎えに行く。
15分前に到着したのだが、彼女の方が先にいた。

「ごめん!お待たせしちゃった」
「いえいえ、私が早く来すぎちゃっただけですよ」

私服も麗しかった。
ふんわりとした白スカートに、水色を基調とするストライプの半袖シャツ。
髪型は、可愛らしくまとまっていた。
ヘアピンを使い片方の耳を出しており、いつもより小顔が際立っていた。
職場でのきちんとした身なりとは違った魅力がある。

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