世にも奇妙なお客様part3

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 で、ホテルのお客様の話です。大阪のやさしいおばさまたちが心をこめて日々もてなしているのですが、それでも客商売にクレームはつきものです。とんでもないクレーマーにぶつかってしまうと、そのおおさかのやさしいおばさまもなかなかもって平常心を保てなくなり、そのはけ口として、私はよくとんでもない仕打ちを受けたものです。
 それはいいとして、ある日のことです。客室から電話があり「DVDがうつらへん」とのことでした。詳しい事情を説明しますと、客室にはリモコンが一つ置いてあって、それですべてのメディアを操作できるようになっているのですが、やはりそれは老朽化のすすむホテルの悲しい性で、客室に備え付けのDVDデッキに関しましては、センサー不良で操作できないケースが多々ありました。そうしたケースにおいては、そのデッキ専用の純正リモコンを持っていきまして、解決しておりました。
 しかしながらです。その日のかなりよぼよぼのクレーマーは簡単に引き下がりませんでした。ボストンバッグ一杯にアダルトDVDを詰め込んだそのお客様は、「わしゃ、ビデオ見にきとるんじゃ。見れかったら意味ないやろ」と息巻きまして、「ですからこのリモコンなら再生できます」と弁明しても、「わしゃ、このリモコンで長年やってきたんじゃ」と客室に備え付けのリモコンを大変ご愛用なされていた模様でした。
 しかたがないので、客室を変更していただいたはいいのですが、すぐさま「DVD映らへん」との電話です。今度は「試しに操作していただけますか」と頼んでみると、快く引き受けてくれたはいいのですが、見ると、全然関係のないボタンを押していました。「そのボタンではございません」と説明したのですが・・・
 もう大方の予想はついていますでしょうが、「わしゃ、長年このボタンでやってきたんじゃ」の一点張りでした。おまけに「年寄りをあんまりいじめないでくれ」などと言いだしました。拉致があかないのでお引取り願いました。

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