0歳で脱毛症になった娘
「ママ、優芽ちゃんの耳のうしろ見て。ハゲができてる。」
娘の脱毛症にいちばん最初に気づいたのは、保育園の先生でした。
当時0歳。もう少しで1歳の誕生日を迎えるという時だったと思います。
「えー、なんでこんなに小さいのにハゲなんかできちゃったの?」
「早くから保育園に預けた事がストレスになっていたんじゃ・・・」
「そんなこと言ったって・・・」
夫とあれこれ言い合いながら、娘の耳の後ろにできた10円玉ハゲを見つめていた私。
この時はまだ、これから壮絶な闘病生活が始まることなど知るよしもないのでした。
あっという間に多発性脱毛症へ
先生の指摘によって娘の脱毛に気づいた私は、すぐさま近所の皮膚科へ駆け込みます。
こんなに小さい子が脱毛症になるなんておかしい。
なにか悪い病気だったらどうしよう・・・
頭をよぎるのは良くない想像ばかり。
しかし、そこで言われた言葉は「脱毛症だね、これ塗っといて。」
たったそれだけ。
そして、ぽんっと渡された塗り薬。
「まあ、よくあるから。」
先生の口調から感じる威圧感に負け、それ以上何も聞けずに病院を後にしました。
しかし、いくら薬を塗り続けても効果はなく、半年もたたないうちに脱毛箇所は大小合わせて5つ以上に広がっていったのです。
この頃から皮膚科ジプシーに。
県内にある皮膚科を日替わりで受診しては、「こんな小さい子にできる治療はない」と言われ肩を落とす毎日。
ある病院で思わず泣いてしまった時、看護師からこんな事を言われました。
「お母さんがドンと構えてなくてどうするの!」
うるせーよ。と思いました。
説教を聞きに来たんじゃない。そんなもの聞きたくもない。
そう口から出てしまう前に、保険証をひったくるようにして病院を出ました。
自己免疫疾患
ジプシーの末、行き着いたのは大学病院の脱毛症外来。
最初から専門外来に行けば良かったじゃん。と言われそうですが、本当にそうですよね。
スマホもGoogleも既に存在していたというのに、とんでもない情弱でした。
ひとつ言い訳をするならば、開業医の先生に「大学病院の治療は15歳以上でないと基本受けられない」と言われた事が頭にあったからでしょうか。
おそらくこの先生はステロイド点滴治療の事を申していたのでしょう。
いっぽう大学病院ですすめられたのは、局所免疫療法(SADBE)というかぶれを起こす治療。
なんでも娘の脱毛症は自己免疫疾患が原因で起こっているのではないか、という事だったのです。
例えば風邪のウイルスが体内に侵入した時、免疫機能は体を守るため当然そのウイルスを狙って攻撃をしかけます。
しかし脱毛症患者の場合、免疫機能がなぜか毛根を異物と誤認識して攻撃してしまうのだそう。
それにより毛根がやせ細り、抜け落ちてしまうというメカニズムなのだとか。
確かに抜けた毛を見てみると、先端に毛根は無く先細り、ちょうど「!」のマークのような形になっています。
このため攻撃された毛は「感嘆符毛(かんたんふもう)」と呼ばれているのだそう。
だったらその攻撃を毛根から別のものにそらせば良いんじゃね?という趣旨のもと編み出されたのが先に挙げた「局所免疫療法」というものになるようです。
この局所免疫療法、「自然界には存在しない成分が入った薬品」を直接脱毛している部分に塗布します。そうすると猛烈なかゆみ・かぶれが発生。(個人差あり)
このかぶれ反応こそが免疫反応で、まさに「体内に侵入者アリ」という事で退治しようと頑張ってくれている状態なんだそうな。
日本皮膚科学会でも推奨度の高い治療であると発表されており、脱毛が広範囲にわたる重症患者でも発毛が認められるという報告があるそうです。
しかしながら当然副作用もあるわけで、白斑が出たりすることも稀にあると主治医から聞かされました。
当時の私はどうしてもその副作用が怖く、結局その時は治療に踏み切ることができませんでした。
「(局所免疫療法を)やる気になったらいつでもおいでね。」と言われ、決心がつくまでは副作用の心配がほとんどないと言われる鍼治療を試すことに。
しかしこの鍼治療も半年以上通ったものの、娘に至っては効果なし。
ネットではいくつか完治例もあったので、かなり落胆しました。
4歳で、髪も眉毛もまつげも失った
それからしばらく無治療で過ごしていましたが、とうとう4歳の夏、頭髪から眉毛、まつ毛まで全て抜け落ちる「汎発性脱毛症」へと進行。
もはや帽子で症状を隠せるレベルではありません。
眉毛がないだけでこんなにも人相が変わるのか・・・毎日私のアイブロウで眉を書いてあげていましたが、いくら有能なウォータープルーフであっても夏場の子供の汗量にはさすがに未対応。
しかも驚くことに鼻毛までなくなっており、少しでも風邪をひくと鼻水が止まらず顔面大参事。
その頃の私のメンタルはもうドン底のさらにドン底で、誰にも会いたくないし、娘の姿を見られたくない。「大丈夫?」とか心配されるのも鬱陶しい。とりあえず私らには関わらないでくれ。
そんな状態でした。
今でもあの頃の私を知る友達には「とても怖くて近寄れなかった」と言われます。
なんていうか、御免。
そしてありがとう。今も友達でいてくれて。
・・・さて。
ここまでお読み下さった方は、そろそろ気になり始めているのではないでしょうか?
ところでその優芽ちゃんはどんな子なのよ?と。
母ちゃんが辛かったのはわかるけど、肝心の子供本人はどうなのよ?と。
まさにそれがズバリ。このストーリーの要であります。
これまでの内容はぜーーーーーんぶプロローグ。
長々とすみませんでした。
では本題へ。
「自分が脱毛症であること」に対し、娘がどう感じているのか。
それはぶっちゃけ私にもわかりません。
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