「運命の人」を信じたくなるドラマみたいな本当の話

私と彼は、仕事上の接点もなければ、出身もばらばら、共通の知人もいません。あの日がなければ、おそらく二度と出逢っていないと思います。その日は、いろんな偶然が重なっていました。あの日のことを、形として残しておきたくて、ここに書き留めようと思います。


私は友達数人と、バリ島へ旅行する計画を立てていました。旅費を節約するために、格安の航空券を半年以上も前から予約していました。格安なのにはそれなりの理由があって、フライト時間がものすごく早かったんです。成田空港に朝の6時半までにはいなければならないスケジュールでした。
始発に乗っても間に合わないのは明白でしたし、終電で深夜バスに乗っても、せいぜい2時頃には空港に着いてしまう…。つまりどこかしらには滞在する時間が生まれるんですね。
友達の一人が、空港のカプセルホテルに泊まるから、と予約先のシェアをしてくれて、何人かは同じホテルに宿泊することにしていました。
またある友達は、都内の温泉施設と深夜バスのセットプランなるものを見つけてきました。温泉施設は早朝まで営業しているので、深夜でもそこで過ごすことができます。深夜バスが定期的にその施設に発着するので、適当な時間まで温泉に入って、ちょうどいいバスに乗る、というわけです。
この二つのどちらかにするのが、賢明だと思われました。でも、私は悩んでしまったんです。そもそも節約のためにこの航空券にしたのに、ホテル泊まったり温泉入ってたら、意味がないのではないか。だったら最初から、少し高くてもちょうどいい時間の航空券を買ったのに…。それにカプセルホテルって窮屈そうだし、温泉入るのも準備とか考えると面倒だし…と、いつまでも結論を先延ばしにしてたんです。
結局、フライトの二日前まで決められなくて、ひとまず予約不要の深夜バスに乗ることにしました。終電でバス停まで行って、なるべく遅いバスに乗ろう、とかなり土壇場で決めました。空港には早く着いてしまうけど、せいぜい3-4時間待てば友達も来るし、読みかけの本でも読みながら過ごすつもりでした。自宅からの行きやすさや、バスの時間を検討して、銀座のバス停から乗ることに決めました。
当日は仕事を終えてから一度帰宅し、シャワーを浴びて、終電で銀座駅へ向かいました。それでも、バス停に着いたのは出発の30分前で、まだバスも到着すらしていませんでした。
銀座からバスに乗るのは初めてでした。最初は、空港行きのバス専用の乗り場だと思い込んでいたのですが、他にもいくつか行き先があるようでした。そして、どこを見ても、バス停によくあるようなベンチはない…仕方ないので、ぼんやりと周りを観察しながら立っていました。
深夜でも何人かバスを待っている人がいて、それぞれの行き先のバスが来るたびに、少しずつ乗って行きました。いろんなバスが来ることに驚きつつ、あの人は仕事で遅くなったのかな、あの人たちは観光してたのかな、と人間観察をしていると、
「お姉さん、座る?」
自分の左側から、急に声がしました。
見てみると、サラリーマン風の男性が、歩道の花壇に座っていて、私のためにスペースを空けようとしてくれていました。
公共の花壇に座っていいんだろうか…と思いつつ、荷物の重さで疲れてもいたので、お言葉に甘えることにしました。
ありがとうございます、と隣に座ったものの、ここからナンパとかしてくる人だったら嫌だな…と疑い始めた私。しかしその心配は全く的中しませんでした。その男性は話し掛けてくることはおろか、目を合わせようともしない…というより、顔を私と反対方向に背けていました。
ナンパしてこないのは伝わってきましたが、顔まで背けられると、本当は座ってほしくなかったけど仕方なく声掛けたのかな、とか、余計なことを考え始めました。しかも、花壇が結構狭くて、服と服が触れそうなくらい近かったんです。そんな至近距離で顔を背けられたら、なんだか罪悪感が湧いてきて…気まずさに耐えられず、ついつい話し掛けてしまいました。
「お仕事ですか?」
「あー、そうそう。お姉さんは?」
「私これからバリ行くんです〜」
「へー!いいねぇ。僕は最近そういうのないなぁ…」
最初の気まずさはすぐになくなり、会話もスムーズに進みました。嫌々声を掛けた感じでもなさそうだし、良かった。と、思っていると、
「あ、バス来た。僕はこれに乗るから。」
立ち上がった男性に、ありがとうございました、と挨拶。親切なお兄さんもいたもんだ、ありがとう、お兄さん!
「これで終わりってのもアレだから、帰ってきたらご飯でも行こうよ。」
意外でした。確かに隣に座っておしゃべりまでするとは思っていませんでしたが、その先なんて、もっと想像していませんでしたから。
でもその時の誘い方も、異性を誘いたい、という嫌らしい感じはしなかったので、社交辞令みたいなものかな、と解釈しました。私も人間関係が広がるのは歓迎する方なので、連絡先だけ交換しておくことにしました。後日確認しましたが、この時点でお互いに恋愛は一切意識していませんでした。
その後、私はバリの旅を楽しみ、バス停での出来事も薄れゆく中、帰国しました。ご飯でも行きましょう、は挨拶みたいなものだし、どうせ流れるだろうと思いつつも、何も連絡しないのも大人としてよろしくないと思い、帰国したことだけメッセージしました。
まぁどうせ既読無視とか、返事が来たとしても、お互い時間が合ったら…という感じで流れるだろうな、とやる気のない私でした。
ところが、男性はしっかりとご飯の提案をしてくれて、日取りもトントンと決まりました。約束を守る人なんだな、と思い、人としてもしっかりしていそう、と思いました。
そこからは、とても早かったです。食事をしながらいろいろな話をしていると、仕事や人生に対する価値観がすごく似ていて、お互いに驚きました。二人ともその時点で、相当心を動かされていたんだと思います。次の約束もすぐに決めて、1日デートをしたのですが、帰る頃には二人とも完全に恋愛モードになっていました。そこから自然とカップルになり、今でも仲良く過ごしています。
それで?と言われそうですが、彼から聞いた後日談で、二人の出逢った日がものすごい偶然だった!ということが分かったんです。
彼はその日、仕事後に友人とお酒を飲んでいたそうです。すごく楽しかったそうなんですが、彼はずるずると飲むタイプではなく、遅くても終電までには帰ります。実際、今でもちゃんと帰っています。
ところがその日、帰ろうと時間を確認したところ、既に終電は終わってしまっていたんです。よほど楽しかったのでしょうか…彼にとって初めての、終電を逃した日、となりました。
何とかして帰る方法はないかと探していると、自宅の方面に向かう深夜バスがあるのを発見しました。彼は新橋で飲んでいたようなんですが、隣の銀座から出ているということで、このバスに乗って帰ることにしました。
銀座について、目的のバス停を無事に見つけた彼は、駅のトイレを借りることにしたそうです。そのため、一度地下鉄に降りて、また戻って来ると…
なんと、最初に見つけたバス停と違うバス停に出たそうです。酔っていたんでしょうね…
でも幸い、そのバス停からも目的のバスには乗れそうだったので、まぁいいか、とそのまま待機することに。そして、そこに大荷物の私が現れた、というわけです。
私も土壇場でそのバス停に行くことを決めましたが、彼はもはやアクシデントですよね。でも、そんな出来事が重なって、彼と出逢うことができました。このことは、間違いなく、人生で忘れられない出来事の一つになります。運命ってあるのかも、と信じたくなる出来事でした。

著者のふにさんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。