大恋愛  ④

「もしもし…」 電話から聞こえてきたのはやはり彼女の声だった。

僕は、冷静に、そして慎重に、いま言うべき言葉を探した。でも、言うべき言葉は見つからなかった。結局、僕から出てきた言葉は「あっ、うん…」だけだった。
彼女は続ける。「昨日は…、本当にびっくりした」
「…うん、俺も。何でって…思った」 言葉を探すのが難しかった。実は、彼女と僕が恋愛をしていたのは、この場所から数百キロ離れた場所だった。彼女と離れたあと、30年かけて僕はいろいろな縁やタイミングでこの地で就業し、この地で結婚し家庭を築いた。つまり、「この地」には僕も彼女も何の所縁も無いし、ここで彼女に再会する理由も見つからない。
でも、それは彼女も同じだった。彼女も僕と離れたあと、30年という長い時間をかけてこの場所にたどり着いたのだ。
彼女は電話の向こうでこう続けた。「…この近くに住んでるの?」
「うん、麻衣子は?」
「すぐ近くに住んでるよ。ていうか、もう20年くらい住んでる。…でも何で…」 そう言うと彼女は言葉に詰まってしまった。
でも僕も同じおもいだった。
「何で」なのだろう。お互い近くに住んでいたこと、そして何故このタイミングで再会することになったのか。そして、彼女にとっての最大の「何で」は、僕が彼女に連絡先を伝えた理由。そして、僕にとっての最大の「何で」は、なぜ彼女が僕に連絡をしてくれたのか…。
僕と彼女は互いの真意を探り合うように、さまざまな言葉を交わした。でも、わずか数分の会話でお互いの真意など分かりようがない。僕と彼女は自然と、「会って話したい」という思いになっていた。当然二人とも、「会う」という行為に戸惑いもあったし、なにか罪悪感の様なものも感じていたが、罪悪感よりもお互いに感じた「何で」を聞きたい、という気持ちが上回った。
会う日時を決めて電話をきったあと、僕は指先が震えていた。後から知ったが、彼女も同じだった。
…to be continued


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