第30話 パパが女(アリッサ)になったとき LA発LGBTトランスジェンダー家族日記

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第30話 女になっていくアリッサ1


付け睫毛の練習に励んでたころ。今ではすっかりこなれたもの。
  

ガーリーなファッションが好きなんです。ずっと女になりたかったんだもんね、しょうがないね。

 



アメリカでは「ティーンエイジャーになると反抗期がやってくる」と言われます。

ティーンエイジャーとはティーンがつく年齢。つまり13歳(サーティーン)から19歳(ナインティーン)まで 。

 

 

ホルモン治療をはじめて、ホルモンのバランスが崩れたせいか、カミングアウト後の開放感のせいか、アリッサにも2度目の思春期と反抗期が訪れました。

 


(当時)42歳で迎える思春期と反抗期。優しく、控えめでおっとり。わたしの言うことを素直に聞いて、娘たちのことを第一に考えていた夫であり、父親であった人が少しずつ違う人間になっていく。初潮を迎えたティーンエイジャーのように変わっていくのです。わたしたち家族にとって、それは、思い起こすと背筋が凍る「トワイライトゾーン体験」、もしくは「あなたの知らない世界体験」でした。

 

 

当時のわたしの目から見たアリッサの変化はこんな感じ。


1、涙もろく泣き虫になった

2、感情の揺れが激しく、すぐ悲しんだり落ち込んだり、怒ったりする

3、自己主張するようになった

4、自己中心的になった

5、一層頑固になった

6、理想郷に住むプリンセスになった (これは次回に説明します)

 

 

「家族の気持ちを顧みず、多くを犠牲にして、望んでカミングアウトして、好きなことしているのに、どうして、いつも浮かない顔をして、泣いたり怒ったりしてるのかな」とわたしはアリッサのことを理解できませんでした。今思い返すと、あれはホルモン治療の影響だったのだと思います。

 

 

カミングアウト直後に交わしたアリッサとの約束の1つは、「服装常識を考えて。家族に迷惑かけません」。

 

 

約束は破るためにあるとはよく言ったものですね。アリッサはわたしたちの交わした約束などすっかり忘れてしまったかのように、キュートでセクシーな服装選びに夢中になりました。

 


スキンケア、化粧、ヘア、服選びと、朝の準備にかける時間は2時間以上。娘たちと一緒に朝食を食べる時間を削ってまでも、「完璧な外観」を目指していました。

 


「仕事の邪魔になるから、職場ではスカートをはかない」と宣言していたくせに、スカートの丈はどんどん短くなり、ハイヒールのヒールはどんどん高くなり、度肝を抜くような濃い化粧をするようになりました。

 


娘のサッカーの試合の最中に、髪の毛をブラシでとかしたり、ペディキュアをしたり、メークをしたり、と大人の女性の常識から外れたことを平気な顔でするようになりました。これはまさしく、 はじめてボーイフレンドができて、化粧を覚えたばかりのティーンエイジャーの行動ですね。

 


あの頃のわたしは、悲しみに打ちひしがれ、どん底をさまよっていたので、約束破りのアリッサの行動に腹を立てる気力もなかった。変わっていくアリッさを傍観者のごとく、ただ呆然と見ていました。

 

 

そんな腑抜けになったわたしを奮い立たせる、ある怒りの事件が起りました。

 

忘れもしないあの事件、それをわたしは「黒いパラソルの女事件」と呼ぶ。


次回は「黒いパラソルの女事件」。身の毛もよだつ恐怖体験です。

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