選挙王に俺はなる!(前編)

小学校四年の時の話を書く。 

四年生になると、児童会への参加が認められる。
会長は六年生しかなれなかったが、書記には四年生でも立候補出来た。 

四年二組からは、ビルマの竪琴というあだ名の、石田昌之くん(仮名)が立候補した。 

余談だが、四年生から児童会役員に就いた人は過去にはいない。
全て五、六年生が当選してしまう。 
四年生から役員に就いたら奇跡だ。 

俺は少し他の年代の子に比べ、興味対象がジジ臭かった。 
例えば、男の子だったら図鑑と云えば「昆虫」か「のりもの」に大概食いつく。 
処が俺が小学校一年の時に買ってもらって一番みた図鑑は「歴史」 
特に近代史をよく見ていた。 
しかも、同じページばかりをいつも見ていた。特に覚えているのが、江戸時代の庶民の暮らしのページである。川で溺死した我が子の亡骸の傍で、顔を覆って膝まづいて泣いている母親の絵をいつも見ていた。 

(このお母さん可哀想だな…)と思った。 

初めて学校の図書室で借りてきた本が「アサヒ年鑑」で、沖縄戦で、白旗を掲げて投降する少女の写真をいつまでも眺めていた。 
なんでこんなものに興味を持っていたのか、自分でも不思議だ。 

映画も「英霊達の応援歌」という学徒出陣の神風特攻隊の話や、「二百三高地」という、日露戦争の話の作品が好きだった。 

テレビなんかも、生き別れになった家族をスタッフが捜索し、母娘が何十年振りに対面する場面を食い入るように見ていた。 
また、中国残留孤児が日本に来日して、毎日夕方のニュースで、孤児と親族が対面している様子を、感動しながら見ていた。 

そんななので、多少他の子よりかは、政治的なニュースには関心があった。 

それもあって、ビルマの竪琴石田ちゃんが児童会役員に立候補するって話しは、とてもワクワクした。 

すると、担任であるメガネ出っ歯のおばあちゃん先生はこんな事を発表した。 

『この中で、選挙管理委員会に立候補する人はいませんか?』 

選挙管理委員会についてメガネ出っ歯は(ヒドイ呼び方)アレコレ説明したが、要するに、選挙の裏方さんだ。俺は役員になんてなる気はないけど、選挙管理委員には興味を示した。 

珍しく俺は、(やりたい!)って思った。 
いつもは絶対こんな積極的ではない。自分に自信なんてないから…。でもこの時は、楽しそうって気持ちの方が遥かに上回った。 

俺は立候補する意思を固め、手を挙げた。 

一瞬教室がどよめいた。そりゃそうだろう。勉強がまったく出来ない落ちこぼれが、こんな選挙管理なんちゃらなんていう堅っ苦しい、労あって利益なしみたいな裏方仕事なんかやる訳ないって思ってるから…。 

それに俺自身も、俺なんかが立候補しても、選ばれないだろうな…と思ってた。何人かが立候補して、ジャンケン勝負に持ち込めば、多少の勝算はあるな…と踏んでいた。 

処が…。 

誰も挙手しない! 
(マジか!?) 

俺は口には出さないものの、選挙管理委員になれると思ってた。 

すると、メガネ出っ歯ババァ(さっきより呼び方が悪化してる)が こういった。 

『皆さん聞いて下さい。今、◯◯くんが選挙管理委員会に立候補しました。他には誰か立候補しないのかなーと先生待ってましたが、誰も手を挙げてくれませんでした…』 

(あ、俺じゃダメなんだな…) 

話の流れで勘づいた。要はこのままじゃ◯◯くんが選挙管理委員に決まってしまいますよ? みたいな流れで、誰かに立候補を促すんだな…とガッカリした。 
予想通りメガネ出っ歯鬼ババァは、途中までそういった…。 
しかし、 

『…確かに◯◯くんはあまり勉強は出来ません! だけどね、◯◯くんがこんなに積極的な行動をしたのを先生初めて見ました。どうですか? ここは◯◯くんにやらせてあげたら…』 

こう言われて拒否するパンクな生徒はいなかった。 
まぁ、こんなこと言わなくても立候補は俺一人なんだから当選確実だとは思うのだが、先生は寛大なお方との評価と引き換えに俺を選挙管理委員にしてくれた。 

ちょっと卑屈ないい方だったな。 

ありがとう! マリア様! マリア先生様! 
こうして俺は金脈、利権、癒着、賄賂、権威、派閥… 
欲望渦巻く政治の世界に足を踏み入れる事となる。(大袈裟!) 

しかし、のちにとんでもない災難が襲いかかるとは、この時の俺は知る由もなかった…。 

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