選挙王に俺はなる!(後編)
先生は今すぐ石田ちゃんの家に電話をすると約束してくれた。
俺は喜びを一旦封印し、再び選挙管理委員としての仕事をしに教室に戻った。
あとは誰が当確するんだろう…。
黒板を見た。
黒板には当確者に印がつけられていた。
処が…。
石田ちゃんに当確印がつけられていなかった…。
(あれ?何故だ?)
もいちど黒板を見た。
石田ちゃんの票数が280に訂正されていた…。
さっきまで380だったのに!
俺は集計してる人達を問い詰めた。
『さっき四年二組の石田君が380だったじゃないか! なんでいま280になってんの!?』
誰に聞いても、
『うるさいなぁ!』
『知らねぇよ!』
と言われた。
(何かの間違いだろ!? 一体どっちが合ってんの? 280なの?それとも380なの?)
そう思った。でも…。
数字が覆る事はなかった…。
結局、四年生は今年も全滅だった。
石田ちゃんは四年生の中では一番票数をとっていた…。
でも、最早票数なんてどうでもよかった…。
俺は職員室に行きたくなかった…。
でも、行くしかなかった…。
先生にどう説明したんだろう? 多分、一度見た時は380だったけど、さっき見たら280でした…みたいな事を言ったのだろう…。
先生は残念そうに
『そう…』とだけ言った。
先生に言われたのか、それとも自主的だったのか、学校からだったのか自宅からだったのか、覚えていないが、俺は石田ちゃんに謝りの電話を入れた。
『ごめん…』
それしか言えなかった。
『いいよ…』
そう石田ちゃんが言ってくれた。
でも、明らかに声のトーンは沈んでいた。
暫く沈黙があった。
俺は再び
『ごめん…』
と言った。
また石田ちゃんも
『…いいよ』
と言った。
こんなやりとりを数回やって、電話を切った。
石田ちゃんに申し訳なくて俺は泣いた。
もう少し結果がハッキリしてから行けばよかった。
でもあの時石田ちゃんに当確印がついたから、一刻も早く伝えたくて…。
俺の勇み足だった。
石田ちゃん当確の報から一転、落選の報は、何人かが知っていたらしく、休み明けの月曜日に登校すると、何人かのやつに
てめー!受かってねーじゃねーかよ!この嘘つき!
嘘ばっかついてんじゃねーよ! と言われた。
選挙活動期間中に話し掛けてくれたクラスメイトも、話し掛けてはくれなかった。
俺は再びいつもの嫌われ者に戻った…。
著者のキブロワイトさんに人生相談を申込む
著者のキブロワイトさんにメッセージを送る
メッセージを送る
著者の方だけが読めます