暗黒時代 1

次話: 暗黒時代 2
正直いって中学校には何の期待もしていなかった。 


特に根拠はないのだが、自分自身の未来に希望などこれっぽっちも抱いてなかったから。 


自分は駄目人間 



今までずっと、そう母親に洗脳されて来た。 


勉強も駄目 

高校も無理 

友達も出来ない 


だから中学に上がっても、小学校の時と変わらぬ毎日を過ごし、そのまま大人になっていくのだろうなと思っていた。 



自分がまともな社会人として働いている姿を想像出来ない。 



俺のような人間は、一体この先どうなって行くのか…。 

自分の事ながら、そら恐ろしかった。 



そして、そんなような思いを抱いているヤツは他にも居て、得てしてそういうヤツとは導かれるようにしてくっつき合う。 


五木地 義則 
通称ゴキジ。 


この男と俺は同じクラスになり、一緒に悪行を重ねていく事となる。 







入学したK中学は創立5年の新設校だったが、開校二年目には既に新聞沙汰になる程に荒れていた学校だった。 

生徒が先生に対して暴力を振るう。 
校舎の写真まで新聞に掲載されてしまい、なかには越境で別の中学に行く者も居た。 
俺も入学前から不安だった。 


そして入学式を終えて翌日の始業式。 
俺達新入生は体育館の中を、二、三年生の間を抜け、一番前に並ぶため列をなして歩いていた。 

どいつもこいつもみな緊張の面持ちだった。 


すると突然、体育館の左後方から怒号がした。 

見ると、180㎝近くある三年の生徒二人が、一人の先生に対して暴行を加えていたのだ。 

二人の三年生は、見るからにヤンキーで、一人はリーゼント。 
もう一人はパーマをかけていて、ともに「ボンタン」と呼ばれる太いズボンを穿いていた。 


奇しくもその三年生二人は、のちに俺が所属するサッカー部の先輩であった。 


その二人の先輩は、如何にもひ弱そうな細身でメガネの先生に対して、体育館の壁に叩きつけるなどの行為をしていた。 


俺達一年生が唖然として見ていると、教頭先生らしき人が若い先生に対して、すぐにとめるよう指示。 

数人の先生が二人の先輩のもとに駆け寄りとめに入った。 


だが、校長や教頭は見てるだけだった。 


(こりゃあ噂通り、荒れた学校だ…) 


その光景を見て、そう思った。 



暴行を受けた先生と、暴行を加えてた先輩二人は体育館から消えたが、俺達一年はみな動揺して、その後の始業式は何だかみんな落ち着かなく、俺自身も記憶に残っていない。 


ただ一つだけ覚えているのは最後の校歌斉唱。 

二年生、三年生が誰一人として校歌を歌っていなかったのだ。 
それには本当に驚いた。 


シラケたムードの中、ブラスバンドの演奏だけが虚しく体育館に響き渡る。 

それを聴きながら、俺はこれから始まる中学校生活に、早くも波乱の予感と不安を覚えずにはいられなかった。 




これが、俺の暗黒時代の幕開けだった。 

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