死への恐れ 悟りを求めて 歓喜編

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高校を卒業した後も、職を転々としながら探求は続けていた。

「死」とは何か?一時たりとも脳裏を離れなかった時はない。
働く気満々でも、どんな職業についてもコミュニケーションが上手くいかない…結局半年ももたずで辞めていく。

嫌気が差し、余計にアームカットをするようになっていった。学生時代にもしていたけど…親にバレない様に気を付けながらカミソリで切って…傷跡は今も深く残っている。

無職になってしまい、大阪の吹田で治験に参加することになった前日からおかしな事が始まりだした。amazonに記録が残っている。


目が覚めればゾロ目、どこを見てもゾロ目、突然の事態に何が起こったのか理解できずに呆然としていた。異常事態だ。意識しだしたからよく見えるんじゃなくて、僕にとって本当に異常事態だった。ワケが分からん。

治験は結局、緊張のし過ぎで心拍数が激しいからお流れとなった。

それから目に見えない存在を本気で信じだして、
瞑想とは別に、海岸で祈るのが日課になった。

夕日が綺麗に見える場所で懸命に祈っていた。その時である。
物凄い感動が僕を襲った。涙が出てきて、わだかまりが吹き飛んだような気がした。

それからほどなくして、この感動から何故か仏教、とりわけ禅宗・浄土真宗に自ずから目覚めて、自身で坐禅を始めるようになった。19歳の頃だったと記憶している。

ただ…自己流で坐禅を組み、数息観をやっても上手くいかない…程よく気持ち良くなって終わるだけだ。
母がそこで臨済宗の坐禅会を紹介してくれた。偶然掲示板を見かけたからだという。
しかし中々行く勇気が出ずに2年経ち、21歳になってしまった。このままでは何も好転しない。思い切って禅寺を訪ねることにした。
その臨済宗のお寺は小学生時代の通学路、その途中にあった。荘厳な雰囲気があった。心臓をバクバクさせながら副住職に会い、その瞬間驚いた。
「ああ、この人だ」目があった瞬間に確信があった。決して誇張ではない。
坐禅会初日、僕は、アホな所があり、必死なのか瞬きを一切せずに鼻水もほったらかしで座り続け、涎も垂れ流しなので酷い有様になった。
それから月に一度通うようになった。自宅でもパソコンを破壊、ネットを絶ち、テレビを絶ち、本も読まずにひたすら数息観をした。
何時間経ったか忘れるほどに、壁に向かって坐りまくった。
壁に向かうのは臨済宗風じゃないんだけども…
副住職は色々な話を紙に纏めてくれた。特に印象に残ったのが「無縄自縛」の話。
坐禅を続けていくうちに疑問が幾つか浮かんだり、気付きがあったので、hasunohaというお坊さん相談サイトへネットを絶っていたのだが、どうしても質問したくて、姉のスマホを貸してもらい、登録し書き込んだ。
最初は「私が」何かを得ようとしていた。               
徐々に私が得る、のではなく、目前への洞察に変わっていっている。
段々と様々な見方に目覚めるようになっていった。視野が広がっていく。
そしてついに、今までの生まれて来ての後悔と苦しみの数々が報われる時がやって来た。それは2016年10月1日の事である。
坐禅会前の前日から不思議なフワーっとした感覚はあった。坐禅会当日は自転車でも原付でもなく徒歩で向かった。その日だけは何故か…。
坐禅会は3時30分から5時まで。道中、秋の虫の鳴き声がなんとも心地よかった。
到着し、合掌礼拝、副住職に挨拶し、目に飛び込んで来たのは壁に飾られた白隠禅師坐禅和讃であった。その一節が目に留まって、ぼーーーっと眺めていた…
「六趣輪廻の因縁は 己が愚痴の闇路なり」
坐禅会が始まった。私は座布団を一枚敷き二枚目を折り畳んで左下隅っこ、副住さんの対極に座る。欠気一息して数息観を始める。しかし途中からそれをやめてしまって…秋の虫の音声に魅了されていった。自らの呼吸と鳴き声が入り混じる。
座を中断、副住職が言うには「犬が突然ここに入り込んできて、ワン!と鳴いたんですよ。なんで犬は鳴いたんでしょうかね?」ということであった。
なんでかなぁ…と思いながら再び坐禅を続けていこうとしたその時である。
コオロギの鳴き声が一切を貫いていった。私を越えて一切合切を…
座禅は坐禅となり、坐禅に終わりは無くなってしまった。「今ここの呼吸になってみませんか?」なぞ噴飯モノである。
預流行預流果だの一来行一来果だの、どうでもよくなってしまった。
涙が溢れて止まらなくなった。ついに今までの努力が報われたんだと確信した…「そうか、そうだったか…」坐禅会であるから他にも参加者がいるにも関わらず、思わず声を震わせて絞り出していた。
そこまで考えられなかった。
やっと達成したんだ、と。ついに報われたんだ、と。
その後はみんなでお茶菓子を楽しんで、爽やかに過ごした。暖かい…僕はそこでも涙が止まらなかった…止められなかった。
合掌礼拝し、副住職に別れを告げて帰路についた。
秋の虫が鳴いている…秋の虫が鳴いている…なんと美しい世界か!
帰ってすぐにhasunohaに書き込んだ。
これで愚かにも、のぼせて…
突発性縦隔機腫・疼痛編へつづく

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突発性縦隔機腫・疼痛 病による発見編

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