再出発、トリップハイ 投資家として飛行機なしの世界一周 その11



朝、寝台列車のベッドで目覚めると、地平線まで見える草原がずっと流れていた。

都会から出て、ついに西安からのシルクロードに入ったのだと感じた。

寝転んだまま、音楽を聴いたりしながら景色を眺め続けていた。

起きて何もせずにただただ壮大な景色を眺めていられるのは、寝台列車ならではの贅沢だ。

携帯で株価を確かめてみる。

前日に仕込んでおいた株がいい具合に上がっていた。

すべてが順調だった。


再出発をしたのはリハビリを終えた6月13日。前回すでに上海には行ったので、今回は違う船で違う場所に行きたいと思い、下関から蘇州までの船に乗ることにした。深夜バスに乗って広島まで行き、そこから電車で下関まで行った。山陽本線は窓から延々と海の景色が続いていて、旅情を感じさせた。日常と違う景色を見て、いつもと違う世界にいることを感じることから生まれる、高揚感。また旅が始まったと感じた。


友人の中には前回行ったところまで飛行機で行けばいいじゃん」とよく言うひともいたけど、そういうわけにはいかなかった。自分にとって「楽しむ」ことはもちろんとても大事なことだけど、それが第一優先なわけじゃない。最も大事なことは「挑戦」で、登山みたいなものなのだ。登山の場合、たとえ途中で事故ったとしても、リベンジのときに途中までヘリコプターで飛んで行ってそこから再開、というようなふざけた真似はしないだろう。飛行機を使わない世界一周と決めた以上、また一からやり直すしかなかった。
そんなわけで横浜から下関に向かい、そこから乗客が3人しかいない船に乗って蘇州へ。3日ほど滞在した後、南京へ向かった。


麗江の病院で隣のベッドだったおっさんと政治や歴史について話してるとき、やっぱり南京の話になって「とりあえず自分の目で見て来い」と言われていた。それ以来気になってた侵華日軍南京大虐殺遇難同胞紀念館。大日本帝国軍が、南京で犯した虐殺についての博物館だ。
中では100人切りを達成した軍人を英雄扱いする日本の新聞などが展示されていた。戦国時代に敵を殺した数を競っていたのと同じことだ。



西安の兵馬俑



敦煌

シルクロードに入った。

敦煌に着いて宿を探していると、いきなり日本語で話しかけられた。

それが有名な敦煌料理店の隋さんだった。

隋さんからは面白い話をたくさん聞いた。

敦煌は町も適度な大きさで、人はそれまでの都会と違って温和だったし、何より隋さんのおかげで忘れられない思い出の場所になった。

鳴沙山はかなり印象強く、うわさに聞いていた砂漠の曲線は本当に美しかった。



そして敦煌からさらにバスでウルムチへ。

久しぶりの中国の寝台バス。ラオスからシーサンパンナまでのバス以来だ。

前の席はムスリムの人で三人組だった。

バスが出発してしばらくすると、彼らに話しかけられた。でも言ってることが全然分からない。中国語と英語ではないことははっきりしてるが、何語なのか分からない。そこで中央アジアはロシア語圏だと聞いていたので、片言のロシア語で話してみる。

「ヤー イズ イポーニィ」

するとなんとか通じたらしく、「おまえはホントに日本人か?」とびっくりされた。ベトナムでもカンボジアでも中国でもどこの国でもそうだったけど、とにかく日本人には見えないらしい。現地人か現地人とどっかの国のハーフみたいだと会う人会う人に言われる。確かに日焼けしてあごひげを伸ばしてるので少しは変わったと思うけど。。。で、国籍不明の顔をしたなんだかガキっぽい変なやつがいるってことで、興味がわくらしい。よく話しかけられる。

しかもここらへんの人たちは遠慮がない。言葉が通じなくても少しも気にせず、とにかく色々質問してくる。結局話してるのはロシア語でもなく、ウイグル語かとも思ったが良く分からず、片言の英語とロシア語で話し続けていた。

しばらくするとバスが故障してストップした。エアコンも止まってあまりに暑かったので、外に出る。隣のベッドだった中国人の若者がタバコをくれた。ムスリムの人たちからは色々な果物をもらった。同じバスにアメリカ人と中国人の夫婦がいて、仲良くなった。

30分くらいした後でバスが直り、出発することになった。

自分のベッドに戻り、流れる景色を見ながらipodのスイッチを入れた。

おそらく東京のOLじゃ耐えられないようなオンボロ寝台バス。

何気ないただの移動時間。。。


そこで静かだけど、強い高揚感を感じた。

これまでにも何度かあった、自分が完全なる未知の状況に放り込まれた時に感じる、トリップハイ。

フロントガラスの向こうには沈んでいく夕日が見えた。

バスはひたすら日の沈む方へ向かっていった。



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