カザフスタンの国境越え 投資家として飛行機なしの世界一周 その12

 中国語とロシア語とアラブ語と英語が入り混じる国際都市、ウルムチを超え、国境を越えてカザフスタンに入ると、景色がガラリと変わった。

 特にアルマトゥはなんだかタイムスリップしたような感覚を覚えた。

 しかも大昔ではなく、2、30年前のヨーロッパに来たという感じ。
 建物は味気ない打ちっ放しで、車は角ばった車体に 細長いヘッドランプ。ビートルズやヒッピーカルチャーが流行っていた時代の、廃れた街に来たような感じだった。広大な草原にはロバの荷馬車も走っていた。
それもそのはずで、ここ中央アジアは昔はソヴィエト連邦の一部だった。そしてソ連崩壊後も建物や車をそのまま使っていて、ほとんど変わってないのだ。
  街を歩くと、ロシア人が多い。「なになにスタン」と聞くとイスラムのイメージがあるがイスラム系の人は少なく、モンゴル系の顔立ちをしたカザフ人とロシア人が多い。長身で細身の金髪美女も歩いている。ここまで世界が変わる国境は初めてだった。


 中央アジアはVISAや滞在登録、税関の手続きが面倒で、色々分からないことがあったので、日本大使館によってみた。

 すると大使館の人いわく、6月の初旬に日本人旅行者が夜の駅前でいきなり首を切られ、さらに胸を刺されて重傷を負い、入院したとの事だった。夜の一人歩きには十分注意してくださいと言われた。

 僕はつい昨夜、「意外と平和そうじゃん」なんて思って人気のないところ歩き回ってたところだった。

 危ない。


 でも一番緊張したのはカザフスタンとウズベキスタンの国境越えだった。

 アルマトゥから寝台列車に乗って、国境近くの町、シムケントに着いたのは朝だった。

 ここで僕にとって一番不安だったのは、チャルニェイフカという一番近い国境が開いてるかどうかということ。2008年12月の情報では改装工事で閉まっているということだったが、僕の中ではもう半年もたってるんだから開いてるんじゃないか、大事な国境をいつまでも閉じたままにはしてないだろう、という思いがあった。でもはっきりしたことは分からない。開いてなければヤルラマというかなり遠回りになる国境を越えなければいけない。

 シムケント駅前のタクシーのおっさんに聞いてみると、チャルニェイフカは開いてるということだった。「なぁーんだ、やっぱ開いてんじゃん」と思い、かなり安心した。そのおっさんのタクシーに乗ることにした。

 ちなみにここ中央アジア一帯では、公式のメーターを載せたタクシーというものはない。そこらへんを走ってる普通の車を止めて乗せてもらうのが一般的だ。駅前でタムロしてるタクシーを生業にしてるようなおっさんたちも、メーターの載ってない普通の車に乗ってる。だからどいつが安全で、どいつが危険なんだか分かりにくい。(基本は安全なんだけど、そこでは国境の情報が不確かなことが、危険の可能性を大きくしていた。)

 タクシーに乗って3分もしないところで車が止まり、ゴッツイ体の怖そうなロシア人が乗り込んできた。そこでドライバーが、実はチェルニェイフカは開いてないと言い出した。ヤルラマまで行かないといけないがかなり遠い、だからこれだけの金が必要だ、と言う。もちろんその提示された金額は法外、とまではいかなくてもかなり高い金額だった。

 この時点で完全に信頼できなくなった僕は、タクシーを降りることを決意した。でもやつらは怒鳴り込んで「何も問題ない、このまま行くぞ」と言って聞かない。車は止まってるので降りることはできたが、トランクにメインのバックパックが積んであるので、降りた瞬間そのまま持ってかれてしまうのが怖い。かなり言い合った後、窓の向こうに人が見えたので急いで車を降り、またすぐ乗り込めるようにかまえながらも、大声でトランクを開けてくれとまくしたてた。するとようやく向こうもあきらめたらしく、荷物を降ろしてくれた。

 降りた後、途中までバスで行こうと思い、探してみるが何故か見つからない。で、結局また違うタクシーのおっさんと話し込んでると、やはりチャルニェイフカが開いてないのは本当らしい、ということが分かった。また、バスは途中まで行くがその後が大変だという。

 他にも数人のドライバーと話して、一番信頼できそうなやつのタクシーに乗ることにした。でもそいつも車が走り出した後で、一人だと高くなると言って値上げしてきた。ただ、そこまで高くはなかったし、もうそのころにはクタクタになってて、もういくら金払ってでもさっさと国境を越えてやる、という気になってた。

 2、3時間走っただろうか。やっと着いたところはまさに「辺境」の国境という感じだった。回りには掘っ立て小屋のような小さな売店のほかに何もない。両替屋のおっさんが数人たむろしてるだけで、外国人は僕一人。

 越境にはかなり時間がかかった。ウズベキスタン側の国境では、所持金の細かいところまで聞かれた。

 国境を出るとそこは何もない草原だった。タクシーが待ってると聞いていたがそのときは何故かいなかった。税関の人に聞いた話では、数キロ歩かないと町がないという。

「マジで?」

 途方にくれてると、車で国境を越えてきた人がいた。で、その人に乗せてもらうことになったんだけど、また足元みられて高値を吹っかけられる。いや、でもしょうがない。

 走って10分すると小さな町について、そこで車を乗り換えろと言われた。金はもう払ったから必要ないという話だが、運転手と同乗者がみんな変わる。

 「え?大丈夫?また金取られるっしょ。てかホントに目的地まで送ってくれるの?」

 でもこのころにはもうヤケクソになっててなんでもいいから行っちまえ、という気分だった。

 実際にはそのドライバーは分かりにくい宿も最後まで辛抱強く探してくれて、かなりいい人だったんだけど。


 そしてやっと宿のベッドに身を投げたときの気持ちといったら。。。

 ホントに大変で疲れ果てた一日だった。

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