はじめての投稿でEランクだった私

「意味不明でおかしな文章。行き当たりばったりで書いたものを個性とは言わない。読むのが苦痛でたまらなかった」

これは私の初投稿小説についた講評である。
私の物書き人生は、A〜Eランクのうち、最低のEランクからスタートした。
創作という、新しい世界に足を踏み出したばかりの私にとって、それは手痛い挫折だった。

6年前、あるアーティストにハマった私は、萌えのパワーに押されるまま、彼らをモデルにしたオリジナル短編小説を完成させた。

「小説を書き上げる根気は、私にはない」
長くそう思い込んでいた私にとって、それはまぎれもない快挙であり、奇跡的な出来事だった。
私はその原稿を雑誌の新人賞に送付した。
なにか1作品でも完成させたら、投稿する。
何年も前からそう決めていたから。

「小説を書く」という行為は、以前から私の身近にあった。
ママ友やmixiで知り合ったブログ仲間が、自作小説をホームページにアップしていたのだ。
聞くと物心ついた頃から、チラシの裏に小説を書き綴っていたという。
長い経験に裏打ちされた友人たちの小説は、とても完成度が高く、私はその才能にうっとりとなった。

「なんでこんなすごいものが書けるの。私だったら絶対どっかに投稿するのに〜! そして作家を目指すのに〜!」

謙虚な友人たちは、「そんなの無理だよ」と笑っていたが、私は大真面目だった。
当時はネット小説も今ほど流行っておらず、個人出版の仕組みもなく、作家になれるのは一握りと言われていた。
しかし、そもそも作品がなければ、スタートラインに立つことすらできない。

小学生の頃、お話を書き始めては冒頭部分で挫ける、を繰り返していた私にとって、物語を完成させるのは、エベレスト制覇に匹敵するほどの偉業だった。

それを難なく超えている友人たちは、当然リスペクトの対象である。
作家を目指さないなんて、もったいない、と心の底から思っていた。

いつか原稿を完成させたら、私はファーストペンギンになってやる。
シャチやサメの待ち構える海へ、最初に飛びこむ勇気ある1羽に。
果敢に攻め込む私の姿は、きっと友人達の背中を押すだろう。
そんな企みを実行する日がやっと来たのだ。

しかし結果は散々だった。
文章や構成、キャラクター造形など、あらゆる部分に難がある、と言われ、さすがに能天気な私も落ち込んだ。
Cランクくらいにはなるかな、となんの根拠もなく見積もっていたので、余計にショックだった。
これじゃ、後に続く人なんて、いるはずもない。
こんなチャレンジ、無駄だった、と肩を落とす私には、ファーストペンギンの面影なんて、もうどこにも残ってなかった。

ところが、落ち込む私に友人が言った。
「全員に講評をくれるなんて、ありがたいね。私も出してみようかな」
その言葉を効いた瞬間、私は目が覚めるような感覚にとらわれた。

そうだ。読んでもらうことも、問題点を指摘されることも、当たり前なんかじゃない。
感謝すべきことだった。

下読みさんは忙しい中、時間をとって、私の原稿に向き合ってくれていた。
それなのに、私は酷評に傷つき拗ねるばかりで、感謝の気持ちが頭の中から、すっかり抜け落ちていた。

そして私は、友人たちの背中を押したい、という使命感の浅はかさに、ため息をついた。
「他人のため」なんて綺麗事を言っているから、肝心なことを見逃してしまう。
投稿したのは徹頭徹尾自分のため。
誰かのためじゃなく、自分のために飛んだのだ。

動かなければ0のまま。
だけど勇気を出して1歩進めば、何かが始まるかもしれない。
自分では気がつかない才能を、誰かが見つけ出してくれるかもしれない。
私は内心、それを期待していたのだと思う。
しかし、あの時、それを自覚していたら、きっと足が竦んでいただろう。
「友人たちのために」という大義名分が、私に勇気を与えてくれた。
背中を押してもらっていたのは、実は私の方だったのだ。
物事の見方を変えれば、様々なことがクリアになっていく。
感謝の気持ちを取り戻した私は、いつの間にかものすごいお宝を手に入れていることに気がついた。

それはEランクからのスタートという、エピソードそのものである。

ロースペックからのスタートは物語のお約束だ。
主人公は肉体的にも精神的にも未熟な段階で読者の前に登場する。
ならば、EランクはCより美味しい。
大きな伸び幅を見せることができるから。
Eランクから始まった私の物書き人生は、最高のスタートを切っていた。

さて、私の周りにいた友人達は、その後ぞくぞくと公募にチャレンジし、商業作家への道を進んでいった。
時が満ちれば、人は自然に歩き始め、目標を見つけてさっさと今いる場所から飛び立っていく。
その背中をまぶしく見つめながら、私は今日もキーボードを叩く。
この先Aランクでデヴューできたら、美しいヒーローズジャーニーになるよなあ、なんて、ワクワクするような未来を思い描きながら。

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