アホの力 4-25.アホ、ファシリテーションする
講演会&ワークショップ当日、密かに不安を抱えながらも、まずは第1部『講演会』に登壇した私。
結果、人生で浴びた経験のないほどの拍手喝采を浴びる事になる。不安であった、隠れた高次脳機能障害の兆候を感じる事なく、無事に講演をやり切った嬉しさと、喝采を浴びた事への興奮から、思わず感極まりそうになったのだった。ここで無事に話が出来た事は、私にとって倒れて以来最も回復が感じられた事だった。そのおかげで
『次のワークショップも、きっとやれる!』
そんな思いにシフトする事が出来た。
第2部のワークショップは、夕方17時半スタートだった。こちらは『フューチャーセッション』というスタイルのワークショップとする事にした。フューチャーセッションとは、未来を一緒につくるために、所属や立場を超えて、忌憚なく話せる場をつくって行うワークショップの事で、今回はあるお題を設けて話してもらう事にした。
そのお題は
『夢の病院ってどんな病院?』
というものだ。
何故このテーマにしたのか。参加者は病院スタッフだ。日々迷い、葛藤しながら仕事をしている病院スタッフには、病院の理想をもう一度再認識してもらう事が大事だと思えたからだ。
ワークショップのやり方は簡単なものにした。グループに分かれて、それぞれのグループで『理想の病院』についてどんどんアイデア出しをしてもらう。所謂『ブレインストーミング』というやり方だ。出された意見を否定せず、そこからどんどん盛り上がってもらい、楽しい想像を膨らませてもらおうというのだ。現実の問題を抱えている病院スタッフには、とにかく『楽しさ』を味わってもらい、そして原点に立ち返ってもらいたかった。
グループは全部で5つ出来た。それぞれのグループは、看護師も、リハビリスタッフも、先輩後輩も全てごちゃまぜにした。立場を超えて自由に話してもらいたかったからだ。
しかしこのワークが、思った以上に盛り上がったのだ!
この病院では、恐らくこうしたワークショップを開いた事があるのだろう。参加してくれた病院スタッフに、戸惑いは無かった。みんな思いついたアイデアをどんどん出し合っている。『ディズニーランドとくっついている病院』『どんな病気でも治せる病院』などというアイデアも出ていた。現実の枠組みから離れて話をしている証拠だ。
アイデア出しをしてもらった後、グループごとにどんなアイデアが出たかを発表し合い、みんなでそれを共有した。生真面目な人が多いグループは手堅い内容で、ふざけるのが得意な人が多いグループはとにかく遊んだ内容で、それぞれ発表してくれていた。
それを見ながら、私は
『あぁ、こんな素晴らしいエネルギーを秘めていたんだなこの人達は!』
『この病院に入院して正解だったな!』
と、感動を覚えたのだった。
2時間に及ぶワークショップが終了した時、参加者の表情がみんな笑顔だったことが凄く印象深い。
その事だけとっても、今回の講演会&ワークショップはとても意味深いものだった。
そして何より、私個人の満足度がとてつもないものだった。
恐らく世界でも例のない『入院患者が病院スタッフを集めてのフューチャーセッション』は、私が
『これからもやれる!』
という手応えを得る事が出来、不自由を抱えながら生きていくのに必要な灯台(指針)を見いだせた、とても貴重な体験だった。
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