スイスへ嫁ぎ、遠くで思う父と母が教えてくれたこと
やがな!
NHK語学講座の出演者が「全員総春日」になってるのもヘンでしょうよ。。。
まぁ、「チュース」と「トゥース」、似てなくもないけど。
今度から、スイスでドイツ語のサヨナラを言う時は、春日のように胸を張って高らかに、
「チュース!」
と挨拶しようかな。
そんな父や母と、スイスに住む私の連絡はメールとスカイプ(テレビ電話)。
「両親からのメール」と言っても、メールを書くのは主に父。
最初の頃はドイツ語圏に住む娘を思ってか、父もドイツ語を頑張ろうとしていたらしく、日本人の我が娘に向けて、カタカナ表記でドイツ語を織り交ぜてメールを送ってくれていたんです。
…私、日本人だから日本語でいいのに。
例えば、
『グーテンターク! こちらは皆、元気でやっています。今日は温泉に行ってきました。体に気を付けて。ビスバルド!』
(訳:「グーテンターク!」:こんにちは/「ビスバルド!」:またね!)
といったところ。
「グーテンターク!」で始まり「ビスバルド!」という〆で終わる定型文が父のメールなのです。
しかし、母と二人であちこち出かけて楽しく過ごしているうちに、すっかり私のいない生活に慣れてしまっているご様子の父。
父のメールにもおざなり感が出て、カタカナドイツ語もナリをひそめ始めた今日この頃だったんですが。。。
久々にカタカナドイツ語を使用したメールがやって来ました。
「グーテンターク!今日は温泉へ行きました。ゴールデンウィークの予定はまだ決まっていません。元気で!ビスマルク!」
…『ビスマルク!』て!!
それは、社会の教科書にも出てくる、「鉄血宰相」と呼ばれたドイツの宰相の名前でしょ!
それにしても、すごく威圧感のある〆の挨拶です!
とんでもない間違いですが、遠く離れて暮らす両親が楽しく過ごしているようなので安心している私なのです。
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日本人の習性なのか、はたまた私自身の性質なのか、外国語を話す時は「文法や単語を間違えないようにしなくちゃ!」と思うあまり無口になりがちな私。
父の学ぶ姿勢や、間違ってもどんどん言葉を使ってみるというチャレンジ精神は、是非見習いたいものです。
・・・それにしても、『ビスマルク』はあんまりですが。
【4.当たり前を当たり前とくくらないこと】
スイスに遊びにやって来て、我が家に私の父と母が滞在した時のお話。
ある日の夜、私が書斎から出ると、ダンナ様のビックリ顔に遭遇。
視線をたどると。。。
なんと、トイレのドアを開けっぱなして、無防備にズボンを下げてこちらに背を向け、尻丸出しで用を足す父の姿が!
…な、なんでなの?おとっつあん!
あまりのことに、見て見ぬふりをしてしまった私。
ダンナ様と二人きりになると、
「さっき、お父さんがトイレのドアを開けたまま入ってたけど、ドアを閉めるのがゆるくて開いちゃったのかな。テヘヘ・・・」
と、父のフォローに回った私。
しかし!
ダンナ様がポツンと発したお言葉は…
「でも、朝も見えたよ。。。」
(訳:「でも、朝もトイレのドアを開けて入ってるのを見たよ」)
…ひえぇぇぇ!
何やってんだ、父ちゃん!
とりあえず確認しようと思い、父がトイレに入った時を狙って近づくと。。。
…やっぱドアを開けっぱなしで無防備な尻をこちらにさらしています!
これはハッキリ注意した方がいいのか?!
でも、いくらオッサンでも、こんな事を娘から注意されたら恥ずかしい気持ちになるかもしれない。。。と、悶々と悩む私。
でも、スイス滞在中にずっとトイレのドアを開けたまま用を足す方がもっと恥ずかしいのではないか?
てことで、父に思い切って注意することに。
「お父さん、トイレに行ったらドアを閉めて用を足してくれる?」
…我ながら「なんだそれ!」な忠告です。
すると、父から意外な答えが。。。
「だって、昨日、ojoが『人が入ってるか分かるようにドアを開けといて』って言ったやろ」
…えっ?!私??
漫画の回想シーンのように、モクモクのフキダシが私の頭上に。
あぁぁぁ!!
言ったよ、私!!
こちらのトイレやバスルームは、使用後にドアを開けておく家が多いんです。
(ドアが閉まっていると、人が入っていると解釈する)
我が家にもこの習慣があるため、ドアが閉まっていると「あ、今、人が入ってるな」と思ってしまうんですよね。
日本では使用後にトイレを開けておく習慣がないため、使用後にきちんとドアを閉めていた父を見た私が、
「(トイレ使用後は)ドアは人が入っているかどうか分かるように開けておいて」
と忠告。
それを、父は
「使用中・使用後とも、誰かがトイレに入ってるか分かるようにドアはオープン」
と解釈した様子。
あぁ!私の言葉が足りなかったがゆえの誤解!(ごめんよ、お父さん!)
しっかし、普通に考えたら、トイレを使用中のなんて、用を足してるところを見せつけられてまで知りたくないよって話です。
外やダンナ様の家族のお家でやっちまう前に気付いてよかった。。。
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普段、日本語とドイツ語が聞こえる環境で生活している私。
「日本語」と「ドイツ語」の間で意味を取り違えたりすることには敏感になっていましたが、日本語話者同士の意味の取り違えには、どこか
「そんなの当たり前。お互い感じで分かるだろう」
という考えがあり、すっかり注意を払わなくなっていました。
私の注意力の低下とも日本語力の低下ともいえる事態で父を辱めてしまった。。。
そんな私に父は「背中」ではなくそっと「オシリ」で
『当たり前のことが当たり前でない事もあるんだよ』
と語ってくれたのかもしれません。
【5.父と母が教えてくれた「明日考えよう」】
いつも、「スイスは田舎」だの、スイス出身のダンナ様に向かって「いなかっぺ」だの散々なことを言っている私ですが。。。
実は私の実家はかなりの田舎。
家の周りは山や田んぼに囲まれ、車で5分のところにコンビニがあるものの、24時間営業ではなく午前2時で閉店。
数年前には、山から熊が下りてきてひと騒動あったことも。
一時帰国時には、このような田舎の実家に身を寄せている私。
私が実家に滞在する際は、二階の客室で寝ているんですが。。。
それはある年の実家滞在時の事。
時差ボケ中の私は深夜になってもなかなか寝付けず、本でも読もうと、今は誰も使っていない妹の部屋へ本を取りに行ったんです。
妹の部屋の明かりを点け、本を一冊取り、その足でトイレに行くことに。
廊下が暗いため、妹の部屋の明かりを点けたままでトイレへ向かいました。
トイレから出ると、妹の部屋から何やらカサカサと音がします。
そっとのぞいてみると。。。
部屋の中で何か動物が飛び回ってる!!
・・・うちのダンナ様が「動物が飛んでる!」と言えば「虫が飛んでる!」という意味なんですが(うちのダンナ様、「虫」を「動物」って言うんです)、私が目にしたものは、まぎれもなく「動物」。
その動物とは。。。
なんと!コウモリ!
明かりが点いていると言えども、深夜の部屋でコウモリが飛んでる状況を想像してみてください!
スイカの種が腕にくっついてるのを見ただけでも虫と勘違いして飛びあがる超ビビリな私にとっては、失神してもおかしくない光景。
一瞬思考回路が止まって呆然としてしまいましたが。。。
「おがあしゃーーーーん!!」
(訳:「お母さーん!!」)
と、深夜にもかかわらず叫びながら、階下の母の寝室へ駆け下りる私。
寝ぼけ眼で驚く母に事情を説明すると、二人で妹の部屋へ向かいました。
うちの母、普段は虫でもヘビにでも果敢に立ち向かう「怖い物無し」のオバさんなんですが、今回どうも腰が引けてる様子。
そう。
母が唯一怖いものは、お化けでも虫でもなくコウモリ。
子供の頃、ヴァンパイアの映画でコウモリがドラキュラに変身したのを観て以来、コウモリが怖いんだそう。
そんな母を前に押しやり、背後から逃げる態勢万全でのぞきこむ私。
薄情な人間性丸出しです!
へっぴり腰で、
「なんでドア閉めてないのぉぉ!」
「なんで『お母さん』じゃなくて、『お父さん』を呼ばなかったの!」
とビビりながら怒り、外側からドアを閉める母。
!!
それじゃあ部屋の中にコウモリを閉じ込めただけで、退治になってない!
二人で階下に降り、寝ている父を起こして事情を説明。
一家の主がくだした決断は。。。
「明日考えよう」
えぇ!!
まさかの一晩放置です!
「どっかから入って来たんだから、明日になったらまたどっかから出ていくよ」
と、超テキトーな発言をする母。
コウモリが飛んでる部屋と同じ階で眠れるワケがない弱っちい私。
自分のタオルケットと枕を手に、母が寝ている隣へ転がりこみました。
(アンタ、何歳だよ!)
そして迎えた翌朝。
父の、
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