たががはずれた彼

社内恋愛は厄介。他人の恋愛をみて思っていた。よもや私がそれに陥るなんて。

同じ班になったから、付き合った。やがて班が別れて別離がきた。班が違えど仕事の絡みでよく接触した。別れてからは何もなく単なる会社の同僚に成り下がった。やがて普通に挨拶出来るまでになっていた。
別離から数年たったある日の健康診断後。診察が終わり、服を着ていたら、かつて同じ班で働いていた女子が私に話しかけてきた。二言三言でさようなら~と部屋を出ようとした私に彼女が。「わたし、あなたの知っている人と付き合って別れました」…そう。私はさらりと言うつもりだった。しかし、私は振り返り「誰?」と聞いた。すると、「あなたの知っている人です」…あいつしかいない。
そして、私は彼女とカラオケに行く約束を取り付けた。
彼女から聞いた彼は、私の知らない人だった。
彼女はおばさんの経営するバーでたまに働いていた。昼間は私の勤務先にバイト。同じ班だからと、彼は何度かバーに来たらしい。彼女はバーで知り合った当時の彼と別れる別れないと揉めていた。その彼女に彼が優しく相談に乗っていたそうだ。やがて彼と別れると彼と付き合いだす。彼女は会社が終わると自宅に帰る。そして彼は毎日彼女を迎えにいき、12時には自宅に送る…をしていたようだ。そんな生活を送るうち、彼の自宅に度々訪れる女がいた。その女は同じ会社のバイト。彼女は彼より10下。その女は彼より10上。
彼はドア越しに「もう来ないでくれ」と女に言っていた。たまに彼女も「来ないで」と言ったそうな。
彼がある日急性心不全で入院しカテーテル手術を受けた。彼女は入院先に行こうとさしたが「大丈夫だから」と彼に言われたので行かなかったらしい。
徐々に彼が彼女に冷たくなっていく。彼女は理由を聞いた。ふっくらだった彼女は彼が細身が好きだというから痩せた。さらに料理も頑張った。でも、彼はさらに彼女に冷たくなっていく。
ある日、彼のパソコンを見たら、元彼女、自分、あの女のフォルダを見つけた。見ると、同じ日に自分とあの女と会っていたのを知った。
彼はまめだったようだ。彼女とは12時まで、それからはあの女と会っていた。
あの女は、旦那の借金のため、偽装離婚をしていた。さらに、親が亡くなったかで金を持っていた。時間にゆとりがあるらしく、彼の入院中の世話もしていたらしい。
彼に「あの女のどこがいいの?」と聞いたら「お前より金持っている」と。彼女は絶望し、日頃飲んでいた睡眠薬を大量に飲み、姉に「ねえちゃん、ごめん」と電話をかけたそうな。
気がつけば、彼女は病院のベッドにいた。姉が実家に電話をし、彼女を見た親が救急車を呼び、病院に。無理やり吐かされ、胃の洗浄を受けたらしい。
彼女からベッドに寝ているところへ、彼が来たらしい。姉に呼び出され来た彼は謝罪して帰ったそうな。
彼女は会社の上司に「ある人とこんなことがありました」と言ったらしい。いちバイトの言うことだが、上司は、課長に進言し、彼にそれなりの処罰を受けさせることにしたらしい。
彼女から聞いた彼は、私の知らない彼だった。私と付き合う前は、会社内で社内恋愛し、婚約までしたのに、ふられた男で有名だった。だから、私は安心して付き合った。彼は私を結婚相手とは見れないと断罪したので、別れた。その彼が?
彼女が嘘を言っているようには見えなかった。でも、彼女は彼と別れて、半年から一年後には社内の別の男性と結婚していた。
さらに数年がたち、私が東京出張に行った時。共通の同僚を交えて四人で地元の居酒屋で飲んだ。そのときに、彼に彼女のことを聞いた。彼は笑顔で否定もせず、「俺、あれから、係長より上に上がれないぜ」「何度も昇進試験受けても面接で落とされるぜ」と宣った。
居酒屋で別れてから、深夜に、彼から電話があった。「寂しいだろ?」…もはや、彼を拒絶するようになった私だ。
別れた彼を嫌いにはならなかった。でも、別れてからの彼の言動はあまりにも理不尽過ぎていた。居酒屋で事実確認をした彼は、かつての私の彼ではない。
なぜ、健康診断で、彼女と会ったのか。
なぜ、彼はかつての彼じゃなくなったのか。
私はそっと昔の彼を心の奥にしまった。
今では、私は会社をやめて、結婚して家庭をもっている。元同僚から聞く彼はまだ独身貴族らしい。そうなんだと私は言うだけにした。彼は仕事熱心で人情味がある人であったから。


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