ゴキゲンライフ2.0 ~南の島のモミアゲ男から学んだゴキゲンすぎる成功法則~ 【人生出発編!】
全身を前後左右に動かしながら、大胆に踊り出した。
唇を尖らせ、間抜けで晴れやかな表情のまま、首はカクカクと、腕はしなやかに、手首はクルクルと動かしている。
そのまま、
ダンス。ダンス。ダンス。
青く大きな大自然の中で、リズミカルに舞うモミアゲ男がいた。
すぐ横を、ベビーカーを押す夫婦がにこやかに、可笑しそうにしながら通りすぎた。
モミアゲ男はきちんとそれをよけながら、それでも唇を突き出し踊り続けた。
開いた口が塞がらなかった。
頭がポカンと真っ白になった。
え……、?
あまりの困惑に、僕は思わずキャリーケースから手を離していた。
これが、モミアゲ男との初めての対面だった。
第一章
どこにでもあるような日々
とある日の夜。
ぼんわり、ぼんわり、薄暗いオレンジの光に飲み込まれそうになっていると、厨房の方から野太い威勢の良い声が聞こえる。
らしゃあーせぇーい。よっ。ありがとうございやしたぁ!
居酒屋だ。
ちらりと横を見ると、ワタルはすっかり俯いて、眠ってしまっている。というか、もうツブれかけている。
黒ぶち眼鏡がすっかり鼻からズレている。濃い眉をズンと落とし、すうすうと静かに寝息を立て始めていた。
僕は酒の入ったグラスをぞんざいにガツンと掴むと、勢いよく口の中へと注ぎこんだ。
グラスは、ゴンッと、テーブルを打った。
「だからさあ、どうしようもないんだよ~」
なんだか、むなしい心地になって、勢いよくそう吐き出す。
むなしさの塊だ。ドロリと、ダークなキモチを放出した。
ああ、オデコの奥がくらくらとする。随分飲みすぎた。だけどもう、これでいいのだ。どうにでもなってしまえ。そう思い、グビりとまたお酒を飲む。
目の前に座るのは、腐れ縁のヒビキだ。
めちゃくちゃ、ムカつく髪型をしている。
クルっと曲がる癖っ毛を上手にヘアワックスで操っていて、ウェーブを描く前髪は目の上へと降り、ハッキリと弧を描くまぶたを強調している。
大きくパッチリと開かれた目は強い意志を感じさせるようだったから、彼は昔から異性受けが良い。
そう、憎たらしいことに。
暇さえあれば鏡を確認し、髪型のチェックをおこたらない。まるで指揮者のようにクネクネと頭の上で髪の毛を触る。キモチワルイ。
だけど今、その口はニヤリと緩んで、だらしない印象を漂わせた。
「そうそう。ほんと、それだよ! ほら、もっと飲もうぜ~」
ヒビキは得意そうに、グラスを持ち上げた。
「ああ~、もうー。そうだよなあ。よしヒビキ、注文取って」
「よっしゃ、任せとけ!」
ヒビキは、すいませえ~んと、大きな声で店員さんを呼んだ。
ゆらゆら、ゆらゆら、霧がかった意識の中、ヒビキに促されて適当に注文をする。
「そんなにさあ、人生焦らなくていいんだってー。まだ俺たち二十とかだよ?」
ヒビキはニヤけながら語りかけてきて、わざとらしくチラチラこっちを見てくる。
だけど今はそれもなんだかイヤに思わなくて、僕は彼の言葉を聞きながら、うんうん、そうだなあ~と相槌を打っていった。
もう、お互いポンコツだ。
思考がついていかない。こうなるともうしょうがない。
どうにでもなれ、という自分がいることを、ぼんやり思う。
ヒビキはニンマリと満足そうに僕を見る。なんだか、隙をうかがう肉食動物みたいだった。
「ほら、小説家になりたいって言ったって、簡単なことじゃないじゃん? なれればいいなあ~、くらいで、気楽に考えればいいやん!」
「あ~、たしかになぁ」
「そうそう。疲れるだけだって~、そんなに気にしても。へへ。ほら、一次選考すら通らなかったって、そんな人他にもたくさんいるんだし」
「まあ、そうかなぁ~」
力が抜けていく感じがする。
フラり、頭が垂れそうになった。
店員さんがやってきて、そんなにお酒が強いわけではないのに、もう何杯目かわからないドリンクが目の前に置かれていく。
「ほら、飲もうぜ」
ヒビキはニヤニヤしながら目を輝かせる。
変態かよ、コイツ。どんだけ飲むんだ。
氷が、カランと、音を立てる。
冷たくスカっとした気持ち良さと、酔いの波が心地よく、意識をふらつかせる。程よい脱力感が、僕をゆらゆらと試しているみたいだ。
ヒビキが、こちらをチロりと見ているのがわかった。やけに様子を窺っているように見える。
「それにさぁ~」
ヒビキは、グビりとお酒を飲むと、ごつんと机におろす。
「この前のあれも、ダメだったじゃん?? おれ、あれには少し期待したんだんけどなあー。惜しかったなあ」
本当に残念そうに腕を組みしながら、どこかナナメ上方向を見た。
オレンジ色の明かりが小さく揺れていた。
「まあ、そうだなあ」
ため息をつくようにそういうと、僕はヒビキの言う、アレについて思い返していた。
そう、アレだ。
ヒビキに釣られるように腕を組んだ。
僕は酔いの心地よさと共に、目をつむった。
つい、最近のことだ。
大学帰り、ヒビキは突然宝物でも発見したように口を広げ、キョウレツな笑みを浮かべた。
僕は少し警戒した。
「うわ、これみてよ!」
彼はいきなりスマホの画面を見せつけてきた。
ずっと夜空を見上げていたからか、一瞬、視界がぼやけてよくわからなかった。
星の瞬きがまだ、目の奥に残っていた。
「……ん」
『パソコン一台で仕事をしながら、世界中を旅しよう』
「え?」
「ほら、ここにそう書いてあるでしょ。うわ、ヤベえ。遂におれの時代が来たかも」
よくみると、それは動画だった。
タイトルはヒビキの読み上げた通りで、画面には三十代くらいのスーツを着た男性が、何かを表現するように両手を広げている。
いかにも、胡散臭い、とにかくそういう感じがした。
ヒビキはいつも面白そうな動画を探しては、何時だろうとすぐに送ってくる癖があった。(女子かよ! といつも思う。)
近くの道路を一台の車が通り過ぎた。
ヘッドライトの光が揺れて、夜の闇でおぼろげになる。
「いや、明らかに怪しいでしょ、こういうの」
僕は、画面から視線を逸らした。
それでも、「パソコン一台で旅をしながら」、その言葉が強すぎて、頭の中を何度もグルグルと回ってくる。
かなり、シゲキが強いフレーズだ。
ヒビキは珍しく真面目な表情をした。
「うーん、どうだろ。でも、もしかしたら怪しく見せているだけでホントに凄いやつっだったとしたら。これで、チャンスを逃すのは勿体なくない? ほら、限定公開中だって。説明会があるみたい」
ヒビキは興味深そうに口を走らせる。
「へえー」
「え、気にならない?」
僕はヒビキの表情を見つめる。彼はいたって真剣だった。
「じゃあ、試しに再生してみてよ」
僕たちは歩道で立ち止まった。
ヒビキの指が液晶をタップする。
暗闇の中で、薄明かりがふっとひらめく。
動画が始まると、スーツを着た彼は、黒い長髪を振るいながら、身振り手振りに熱く語りだした。
一度、深くお辞儀をして、口を開いた。
彼の話は、まるで何かのストーリーを描くかのようで、アツイ想いが含まれていた。
――――――――――――――――
人生は一度きりだ。
世界には、素晴らしいものがある。
旅は人生を変える。
私は決断出来る人を待っている。
誰でも変われる。
あなたは、ただ知らなかっただけ。
――――――――――――――――
そういった言葉を次々と空中に放って、両腕は何かを描くように動かした。
そして、勢いよく僕たちに語りかけてくる。
いかにもアヤしい、というのが、まず素直な感想だった。
だけど彼は真剣そのもので、そのアツさはそのまま僕たちに伝わってくるみたいだった。
その姿をじっと見ていると、なんだか怪しむ気持ちを忘れた。
コトバの真っすぐさが、ジリジリと身体を巡る。
――この人の言っていることは、どういうことなんだろう?
次第に、そういう気持ちに変わっていった。
ヒビキはだんまり、食い入るように見入っている。
僕は動画を見ながら、さっきまで見上げていた星のことを思い出していた。
気付けば、脳裏に浮かび上がっていた。
綺麗な星は遠くにあって、消えそうで、繊細に瞬いている。
僕はゆっくりと、一つ深呼吸をした。
もし、この人の言っていることが本当だとして、世界中を旅しながら仕事が出来るとして、いろいろな国へ旅をして、小説を書いていけるのなら。
――色鮮やかな感情が、全身を駆け巡る。
まるで、ワクワクがそのまま空から舞い降りてくるようだった。
僕は思うままにイメージした。
行ったことのない国へ行って、見渡す限り、初めて見るものばかりで、時に圧倒されるくらいに綺麗な光景で、美しくて、暖かい人がたくさんいて、僕はそれを日々全身で体感しながら、小説を書いている。
今まで感じたことのない自由な気持ちだった。
心の底から湧き上がる、限りない喜びだった。
計り知れない輝きだった。
……だけど、それはその時だけのこと。
僕は水滴の垂れたグラスをぐっと力強く掴むと、グイと飲みこむ。
「三十五万、ねえ」
ヒビキは僕をイチベツすると、はぁ、と息を漏らした。
ワタルの寝息が小さく響いてくる。
「ほんと、それだ」
ヒビキは珍しく落ち込んでいるように見えた。
想像以上に大きな会場だった。
ざわざわと落ち着かない雰囲気の中、僕はこっそりと席につく。
ずらりと並んだイスはたくさんの人たちでぞろぞろと埋め尽くされていた。もはや、アリの集団みたいだった。
みんなの目的は同じで、説明会に出ることだ。
天井も高く、正面には巨大なスクリーンが下がっている。
僕は緊張で息を呑んだ。
結局、予定が合うのは僕だけで、ヒビキは代わりに行って確かめてきてよ! と、ひたすら目を光らせるだけだった。
というものの、老若男女、たくさんの人がぞろぞろといるなかで、僕は少し後悔をしていた。
なんだか、大学の友達に話せば怪しいシュウキョウみたいだとバカにされそうだった。
僕自身、初めて来た異様で新鮮な空間にすっかり委縮していた。
結局、あの日はこういうことだった。
動画でみた、彼、こと黒田さんは包まれるような拍手で迎えられると、動画と同じように語り出した。
ライトが落ち、薄暗い室内で、スクリーンには興味の引く内容が次々と映し出され、黒田さんはそれをわかりやすく寄り添うように説明してくれる。
自分はずっと同じ場所にいるのにもかかわらず、まるで工場見学みたいに、いろいろなところに出向いて、その場その場で説明を受けているような心地がした。
そのくらい僕には未知の世界で、引き付けられる話だった。
会場中の人々もみな、興味深そうに話を聞いているみたいだった。
ノートを取る人、腕を組んで時折頷きながら話を聞いている人、ただ黙って真っすぐに話を聞いている人。
なかには居眠りをしている人もいた。僕にはどうして居眠りが出来るのかが理解出来なかった。
時間を忘れて聞き入っていると、気づけばおおかた説明が終わっていた。
そして、最後にはこう語ったのだ。
「以上のように、私のビジネスモデルは単純ではありません。転売、投資、アフィリエイト、仮想通貨、なんだって学んでいただきます。みなさん、どうしてかわかりますか。いいですか、私の話を聞きながら、考えてみてくださいね」
黒田さんは一人一人見渡すように顔を動かした。
「それは、どうしてか。なぜなら、この先一つの方法で稼げなくなっても、対応することが出来るからです。そして、私はそれらで稼げる仕組みを持っています」
「みなさん、これまでの話はよく理解出来ましたでしょうか。それでは、どうしたらみなさんがこの手段を使って稼げるのか。そうです、私の次世代ビジネスコミュニティの紹介をさせていただきます」
彼は一度マイクから顔を離して一拍置いた。
しっかりと全体を見据え、真面目な表情をしていた
。
「こういった話をチマチマとするのは好きではないので、手早く率直に説明します。私がみなさんを稼がせるために作ったコミュニティは二つあります。一つ目は、レギュラーコースのコミュニティ。こちらは三十五万円でのご案内です」
黒田さんはスクリーンを指しながら続けた。
「もう一つあります。マスターコースです。こちらは本気でビジネスをしていく、僕のようにみなさんを引っ張っていく決意のあるような方にしか、基本的にはご案内していません。なのでこちらを希望される方は、私と一対一での面接を受けてもらいます。こちらは、六十五万円です」
黒田さんはスクリーンで文字を追いながら、簡単に説明を続けた。
それからスクリーンを消して会場中を見渡すと、僕たちに向かい合った。
「みなさん、金額を聞いて驚かれた方や動揺した方、自分には無理だと思われた方がいると思います」
彼は真剣な表情で、力強い手振りで語った。
「しかし、私は強い押しやセールスはしません。今、ここで決断できる人だけをお待ちしています。それこそが、その決意こそが私が本当に欲しいものです。それでは、みなさんの決断をお待ちしています」
――ヒビキはもう、すっかり眠そうにしていた。
ハッキリ整った大きな目もダラリと垂れ落ちている。
彼はパチパチとまばたきを繰り返した。
「もう~、わけわからん。三十五万とか無理やし」
僕は目を擦りながら無言で頷く。
「てか、やっぱり夢見るとか、諦めた方がいいよ、マジで」
ヒビキはテーブルに伏せた身体を起こした。
「お前も、小説家とか、やめとけって」
その時だけ、やけに静かだった。
厨房からの音が止み、他のお客さんの方からも何も聞こえない。
無の一瞬だった。
すると、隣でじっと眠っていたワタルがすくっと起き上がり、
ギロリとヒビキを睨みつけた。
「なに言ってんだよ」
「うわ、ビビった。ワタル、起きてたなら言えよ」
ヒビキはそう言って、少し目を丸くする。
「お前、夢見ることをバカにするなよ!」
「え」
ワタルは切れ長の目を見開いて、ヒビキを真っすぐに見た。
濃いふと眉に、迫力が乗っている。
「いいか、おれも作家を目指しているが、きちんと計画してるんだからな。公務員になって、安定して書ける時間を作って、日曜は必ず好きなことをする。そう、好きなことをするから刺激が生まれて、だから安定して書けるんだ。そうやって続けていけば、きっといつかはなれる。いや、なる! そう、そうやって、おれは決めてるんだぞ。おれは、ちゃんと決めてるんだぞ!」
ワタルの大きな声が店内に響く。だけど次第に騒がしい店内に飲み込まれていく。ただ僕たちの中で虚しく反響する。
そのまま渦を巻いて、僕たちの間にゴウゴウと轟いた。
胸の奥が、ずきんと軋んだ。まるで傷口に触れられたみたいだった。
ワタルはヒビキを真っすぐに見据え続けている。
「ああ、わかったわかった。すまん、そういうつもりじゃなかった」
勢いよく怒鳴りつけるワタルに対して、ヒビキはすっかりしょんぼりとしてしまった。両手をテーブルの上に載せて、視線を下にした。
反省した犬みたいにシュンとした。
どうしていいかわからないように、グラスを持ってチビチビと飲んではテーブルへ置いて、またすぐにグラスを掴んだ。
「わかったなら、それで良い。てかお前も、もっと自信持てよな。いい文章、書けるんだから」
ワタルそう言って横から僕の肩を叩く。言葉を受けて、ワタルの手にずっしりとした重みを感じる。
僕は目を合わせることが出来なかった。
「ごめん、ありがとう」
それでもワタルはじっと目を見つめてくる。
黒い眉が優しく見えた。
そうして無言で頷くと、腕を組んでまた下を向いた。目をつむって、すぐにまた、すうすうと小さく寝息が聞こえ始める。
僕らが静かになって、厨房から騒がしい声が流れ込んでくる。
いつも穏やかで、真面目なワタル。
人当りは良かったけれど、たまに感情的になることがあった。
僕が作家を志すようになったのは、高校時代のワタルの影響もあった。
彼の純粋な物語への愛や好奇心は、いつも僕の心をくすぐって、ワクワクとした気持ちにさせてくれた。
アニメを見たり、映画を見たり、小説を読んで。毎日のように語り合った。
それが僕たちの、高校時代からの付き合いだ。
ヒビキは物語ではなく、イラストが好きで、授業中によく描いていた。
今もこうして、三人でいるのだった。
気持ちを重ねて語り合って、時間を共有して、些細な日常に心地良さを感じ合った。
それがいつしか――僕たちはもう、大学三年生だ。
ヒビキは黙って、僕の方を見る。
それに応えるようにヒビキと目を合わせる。
「なんかごめん」
「まあ、うん」
「なんか、酔い、醒めたな」
「そうかも」
「もう出るか」
ヒビキは眠そうに目を擦った。
僕たちはワタルに肩を貸しながら、店の外へと出た。
ワタルは外に出るとスクっと意識を取り戻した。僕たちに礼を言うとヒョイと片手をあげ、フラフラと帰っていった。
行きつけの地元のお店だったから、終電を気にする必要はなかった。
僕とヒビキは同じ方向で、しばらく無言で歩いた。
もうすっかりと日付が回っていた。
人通りはほとんど無かった。
外の空気は冷たく、さりげなく頬をかすめる。
風はまるで呼吸をするように何度かやってきては、僕たちに寒さを思い出させる。
夜空はやけに広く、星たちが浮かび上がるようにチラチラと瞬いている。
その今にも消えてしまいそうな小さな光を、僕はいつしかじいっと見ていた。
吸い込まれそうなくらいな静けさと、ヒビキが隣をぴったりと歩いている気配を感じる。視界の隅っこで、かすかに影が動いている。
しぃん。星々の頼りないチラつきが、いつしかシャワーのようにやってきて、僕の気持ちをじわじわと静めていく。
まるで、夢を追う僕そのものみたいに見えた。
必死に遠くに輝いているけれど、やっぱり途方もない、ただ小さな光だ。
知っている。そんなものはすぐに、ちょっとした雲に隠れる。
耳のすぐ横を、風がもう一度過った。
夢ってなんだろう、と、そう思う。
ただ安っぽいオモイを振りかざしているだけなんだろうか。
ワタルの熱くて、赤い声。
真っすぐなコトバ。
ふと、高校時代の記憶が蘇ってくる。
堅く高い立派な校舎。肌を焼く太陽。
毎日が透明で、限りない未来が溢れているように見えたあの頃。
まだ何を選んでも良くて、時間もたくさん有り余るくらいにあって、ちょっとおおそれた恥ずかしいことを言っても、腹から笑って許された時代。
ウソみたいに自由だった。
突然空が暗くなって、巨大で禍々しい神様がゆっくり降りてきたとしても、きっとあの頃なら信じられたはずだ。
振り返るには、遠くて、眩しい記憶。誰にでもあって、いつしか許されただけの時間へと移り替わっていく。
僕は遥かな星空を見上げながら、一つ瞬きをした。
限られた時間の中で、どこを向いてあるけば正解で、どうすれば幸せと呼べるのかなんて、誰が知っているんだろう。
気が付けばヒビキは俯き加減にスマホをいじりながら視線を沈ませて、もうさっきまでの出来事はポカンと全て忘れ去っているように見えた。
「あ、じゃあここで」
ヒビキは眠そうに手を振った。
その後ろ姿は不器用そうに、まだフラフラしていた。
僕は夜空の下を一人で歩いていく。
小さな星たちは変わらずに、遠くで静かに瞬いている。
ずっと見上げていると、ふんわり、なんだか眩しいくらいに思えた。
まだまだひよっこなので、歯を食いしばりながらですが、、笑
特に日本は特有の制度である元号が変わりました。
てきました。これからはどんどん、いろいろな変化の波がやってきそうです
なります。正直、いつもビビりまくりです。だけど、人類の誰もが経験したことのない時代に向かっているので、それも当然だと思います。
(僕は物書きなので歌はつくれませんでした。笑)
あなたの親御さんの人生を雑誌にしませんか?
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