ダイアログインタビュー ~市井の人~ 井上禄也さん8

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インタビュー日時:2016年11月11日 12時00分~16時00分

インタビュー場所:南相馬市立図書館内 喫茶「Beans」

天気:晴天

 

◎パワーバランス
 
 井上 最近、前よりSNSを使っての発信を増やしてるんですよ。Facebookなんかですね。新商品の案内であるとか。
 
 ――前より更新は増えたようですね。
 
 井上 「アイスまんじゅう良いね! 」「新商品のバニラアイス良いね! 」みたいに皆さん反応してくれるわけですけど。常にそうやって人から「これ良いね! 」と言ってもらえるようなモノや状況を作らないと、お客さんはその商品を買ってくれません。で、そうした情報の合間合間に、その日の出来事や僕自身の興味なんかの情報を挟み込んで出してるんです。あのページは僕個人の名前でやっているものなんですけど、井上禄也個人には、基本的に誰も興味を示さないですよね。
 
 ――:そうかなぁ。そんな事は無いと思いますけど(正直、この考え方はシニカル過ぎると思っている)。
 
 井上 やっぱり「松永牛乳株式会社代表取締役社長」の井上禄也だからみんな見てくれるし。僕は常にどこにいても、松永牛乳代表取締役社長の井上禄也でしか無いんですよね。
 
 ――それが井上さんの肩書ですからね。
 
 井上 プライベートでしゃべっていても、その肩書きは抜けないんですね。どこまで行っても、裸のキャラクターとしての「単なる井上禄也」というキャラクターは存在しないんです。戸田さんも“松永牛乳社長として、地域であれこれやってる井上禄也”の話を聞きたいと思って来てるわけでしょ(笑)。
 
 ――まぁそうですね。それが井上さんの実像な訳ですから。
 
 井上 そうなんですよね。それ以外の部分は別に無いから。SNSでの色々な発信にしても、ある種仕事みたいなところも感じながらやってます。ずっと周りの人に興味を持ち続けてもらうためにね。そのためには楽しんでもらう必要があるし、面白いと思ってもらうためにはどういう書き方をした方が良いかなと、考えながら記事を書いてます。読んでいる側も色んな人がいて、真面目な人もいるし、本が好きな人もいるし、アイスに興味のない人もいるし。そういう色んな所にアンテナを立てていれば、自然と自分のアンテナも磨かれて、自分の興味の範囲も広がっていく。あとはそれに従ってしつこく繰り返し発信していけば、色々な人に興味を持ち続けてもらえるかなと。だからあれは、さっきも言った通り「仕事の一環」なんです。
 
 ――なるほど。
 
 井上 「裸のキャラクターなんて無い」という視点で言えば、「市民と行政の連携」ってのは、僕はちょっと違うかなと思うんです。「裸の市民」って大した力は無いんです。地域を動かす事を考えたら、「行政と事業所」という括りになるかな。
 
 ――そういう意味ですか。
 
 井上 そういう視点じゃないと、地域って動かないんじゃないかな。こう言っちゃなんだけど、その辺のおばちゃんと行政が連携しても、それで動かせるものは九割方無い。やっぱり行政を動かすとなったら、行政の力を考えるとある程度の権力と理屈が必要。行政の力って大きいんで、それと渡り合う力って必要になってくる。そうなってやっと、両輪のバランスが取れるかなと思うんです。「市民と行政」という括りにしちゃうと、パワーの差が明らかなんですよね。という意味で、「市民と行政の連携」は、言葉としては「違うかな」と思うんです。井上禄也と行政が連携しても何もできないけど、松永牛乳と行政が連携すれば地域を動かせる可能性があるんじゃないかな。
 
 ――実際のところは、行政と連携するのは「個人」なのか「事業所」であるべきなのかを考えると、そのどちらもだと思いますよ。事業所の構成員となっているのはその地域の市民だし、市民一人の力より、事業所としてまとめた方が意見は通りやすいけど、実際に街を動かしている力って、行政が受け持つ領域と地域の事業所が受け持つ領域以外の「隙間」的領域があるわけで、そこを個人としても市民が受け持っているというモデルが成り立っていると思います。「市民と行政の連携」と言った時、「市民」と「事業所」はほぼイコールな意味合いで使ってるんでしょうね。
 
 井上 なるほどね。実際にどういう意味合いを込めてるのかは分かりませんけど、もしそうだとしたら、その事に無自覚な人は多いですよね。この地域で、会社の社長をしながら市民活動をしている人も結構多いけど、そういう人たちが何かとあちこち呼ばれているのも、その人の活動内容の素晴らしさも然ることながら、やっぱり「地域の会社の社長」「地域の名士」としての顔もあるからじゃないですか。そんな「地域の名士」が震災後にメッセージを飛ばした、だから話を聞くんですよ。そういう人はメッセージを飛ばす場所を知ってるし、飛ばす相手もいる。そういうものが無い人は、メッセージを飛ばしたくても飛ばせないじゃないですか。そうした事を自覚しているかどうかって、結構重要じゃないかなと思うんです。
 
■ この辺りの話では、井上さんと私では「力」の認識に違いがあるのかなと感じた。井上さんがここで言う「力」とは、行政や世の中に働きかける「具体的な力」の事で、私がここで言う「力」とは、もう少し情緒的な、「想い」「エネルギー」のようなものを指している。この辺りの違いは意図的に変えているわけでは無いので、はっきりと「こう違う」とは言えないのだが、ニュアンス的にはこういう違いがあるのではないか。
ただ、私たち二人が「概念の違う力」について語っていたとしても、どちらの力も街づくりでは必要不可欠だ。「具体的な力」を動かすには「想い」が必要だし、「想い」を実現させるには「具体的な力」が必要だ。これもやはり、両輪が揃わないとならないのである。

 

~つづく~

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