ワイルドなアメリカ人の留学生と大須の街を散策

私が高校生の時のお話です。

高校3年生の選択授業で国際交流を選択していました。毎回違う国の人がゲストに来て母国についてお話してくれます。

韓国、中国、インド、アメリカ、イギリスなど色々な国の方が来て、その国の文化や食生活、言語や宗教など色々なお話があるのでとても楽しみにしていたのを覚えています。

外国のことも知らないことだらけだけど、日本のことを伝えるためにもまだ自分の国のことも知らないことだらけだった高校生の頃。

夏休みは海外からホームステイの学生の子が来るので、ペアになって名古屋の街を案内してあげるという授業がありました。

私のペアになったのはアメリカから来た同級生のサム君。澄んだ青い瞳にブロンズの髪。背が高くてレオナルドディカプリオを幼くしたようなイケメン。

どこか行きたいところはないか尋ねると、大須で日本の文化に触れたいと言うのでとりあえず大須に移動することに。

当時はスマホもなくやっと携帯にカメラ機能がつきはじめた頃で画質も良くないし、デジカメが出回り始めるもまだ高くて高校生には手の届くものでもなく写ルンですを買って写真を撮っていた時代。

大須で写ルンですを買ったら街に繰り出します。

大須観音に参拝し、お土産を買いながら街を散策するルートを二人で決めました。

女の子同士ならメイクの話やファッションの話しなど女子トークに花が咲いたのかもしれないけど、ほぼ女子高みたいな周りに男子が少ない学校で同世代の男の子と絡むこともほとんどない私は同世代の男子と何を話したらいいのかわからずに、拙い英語と片言の日本語で少しチグハグでかみ合っているようで噛み合わないコミュニケーションを取りながら探り探りの二人。

大須観音では、本堂でろうそくと線香を買って火を着けるんだよと説明している横で「ハッピーバースデー!」となぜか嬉しそうに自分のろうそくの火を消そうとしたり、賽銭箱にお賽銭を入れて鰐口をならす時も鰐口が取れそうなくらい思い切り鳴らしたりと自由なサム君。

私の英語が下手過ぎて説明が全く伝わらずにサム君は思いのまま。現代のようにアプリで翻訳なんてないし、電子辞典もないので、必死に身振り手振りで説明してもどこ吹く風。

周りの人にすみません!すみません!と謝りながら参拝を終えたら、次は商店街を散策します。

たまたま見つけた床屋のクルクル回る看板の前で日本の床屋で記念撮影したいと言い出したので写ルンですで記念撮影。サム君はそのまま床屋に入ってカットしたいと言い出します。

床屋のおじさんが「今は暇だから予約なしでもいいよ」と言ってくれたのに「侍みたいにして欲しい」と言い出すサム君。おじさんが持ってきたヘアカタログから気に入った髪形を選んでカットしてもらい大満足の様子。

それでも「僕はサムだから、日本のサムライみたいにしたかった」とずっと言っていたサム君。たまたま通りかかったお店でちょんまげの被り物を見つけたのでお土産にすると買ってそのままかぶって歩き出すサム君。お面みたいな素材のちょんまげの帽子みたいなものですね。せっかく髪の毛カットしたのに被るんだ。

正直恥ずかしくてたまらない。

さらには変わった漢字のTシャツを売っているお店を見つけ、この字は「侍」、これは「愛」、これは「東京」とひとつづつ読み方と意味を教えてあげていました。中には「痔」とか「馬鹿」とか他にも卑猥な単語や説明しづらいものもあったのでそれは見ないことにして、お土産にしても大丈夫そうなものを選んでいたのに、ちょっと悪そうなヤンキー風の店員のお兄さんが出てきて親切にきわどい単語のものも勧めてくるのでさらに逃げだしたくなった。

「日本人だけど難しくて読めない」と誤魔化していたのに店員さんが勧めるから漢字の意味が気になるサム君。先生かホストマザーにきいてみたら?と言ったらよりによって「小便小僧」というTシャツを買ってしまうサム君。

「これは何て意味?」と聞かれたから「ちいさい男の子だよ」って誤魔化すことに。

地味な冴えない日本人の私の隣には小便小僧というTシャツを着て侍の被り物を被ったイケメンの外国人。すれ違う人たちの視線が痛くて逃げだしたくなる。

アメリカの両親と兄弟にお土産を買いたいんだけど何がいいと思う?と聞かれたので、扇子とかキーホルダーとか風呂敷とかかな?といろいろ探してみたけど高校生の二人にはもう手持ちのお金がのこりわずか。

「このままじゃ、お母さんにお土産かえないかも」としょんぼりしているサム君。まだ歩けるか聞いたら歩けるというので栄まで歩いて百円ショップを目指します。百円ショップなら安くていろいろ揃っていてお土産も買えるはず。一日歩きまわって足も痛かったけど、しょんぼりしたままお別れするのは寂しいので頑張って歩く。

百円ショップでアメリカで待つ両親や兄弟に扇子や湯飲みなど気に入ったお土産を買えて一安心。最後に折り紙をやりたいというので日本っぽい柄の千代紙を買って一緒に折ることに。名古屋のソウルフード寿がきやでラーメンを食べて折り紙で鶴を折ってお別れ。アメリカで一人で折れるようにと何個も鶴を練習するサム君。

一緒に歩いていた時は恥ずかしくて早く逃げだしたかったけど、お別れするのはちょっと寂しかったな。

それに、サム君の恰好は最後まで侍のままでした。

後日レポートを提出した時に友達や先生に面白い!と高評価をもらえたのは他でもないサム君のおかげ。

最後に、先生を通じてもらった封筒の中には一日楽しかったありがとうと短いメッセージとサム君が自分で折ったのか、何度もおりなおした跡がたくさんついたボロボロの折り鶴が入っていました。

アメリカでもみんなに作ってあげられたかな?

サム君とはあれから一度も会っていないし連絡先も知らないので会うこともないけど、あの高校生の夏休みの中で一番忘れられない一日になった。

そんな彼が今どこかで元気に過ごしていることを願っています。





著者の高須 暢子さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。