偏差値40の浪人生が、半年で20万人以上を追い抜いて第一志望の国立大学に合格した話
1月19日、センター試験当日。
アイちゃんが自宅を出ようとしたときに、庭先でペットの犬が、何かを察したかのように急に駆け寄ってきてくれました。それを見て、その場でなぜかぽろぽろ涙が出てきてしまったアイちゃん。一瞬、あまりに強いプレッシャーから緊張の糸がほどけてしまったのでしょうか。これはお母さんからの後日談ですが、この日のために心血注いで日々の努力を重ね、尋常でないプレッシャーの中、アイちゃんは身も心も満身創痍だったのでしょう。
しかしアイちゃんはすぐに気持ちを切り替え、その後全身全霊でセンター本番を乗り切ってくれました。
自己採点の結果、900点中613点(68%)。
見事に帯広畜産大のボーダーを超え、この半年ほどの間で100点以上の得点アップを成し遂げてくれました。
全教科で6割を超え、数IAと現代文では8割を超えるという結果に。
ここだけの話ですが、私はアイちゃんから結果をもらい、思わず「うぉ ぉー!!」と叫んでしまいました。
直後の指導で、私が「やったねー!!!」とハイテンションで呼びかけましたが、しかしアイちゃんはむしろ落ち込んだ様子。理由を聞くと、
「英語で7割取るつもりだったのに、思ったようにできなくて6割しか取れませんでした」
とのこと。
いやいや、いいんだよアイちゃん!
実際の本番では、実力に対して点数が上振れしたり下振れしたりするもの。今回は7割を目標にして、英語ではたまたま下振れしたようですが、他教科では大きな下振れがありませんでした。本当によくやったよ!素晴らしい!!
・・・しかしその日の指導で、私はアイちゃんにこれまでで一番の檄を飛ばすことになります。
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センター試験では良い結果を残し、第一志望である帯広畜産大学へ出願することになったアイちゃん。
しかしもちろんセンター試験で入試が終わりではなく、むしろこれからが本番。この後により難度が高い、二次試験が待ち受けています。
センター試験でボーダーを超えたアイちゃんは、二次試験で400点中220点(55%)の得点で合格できるという状況でした。帯広畜産大はセンター試験の配点が比較的大きく、アイちゃんは他の受験生よりやや優位な状況だったのです。しかし二次試験55%は、アイちゃんの実力的に達成できるか本当にギリギリのラインでした。
その後アイちゃんから、こんな相談がありました。
「二次で、数学をやめようと思ってます」
ここにきて、これまで一番得点が高い教科をやめようと言い出すアイちゃん。理由を聞くと、センター後1週間に取り組んだ過去問で、数学だけ結果が惨憺たるものだった。対して生物・化学ではある程度得点は安定しているため、二次は総合問題の5問中、英語2問、生物2問、化学1問でいくべきではないか、という相談でした。
確かに数学は得点の振れ幅が大きく、ある種ギャンブル性の高い教科。アイちゃんが二次試験で必要なのは、大きな賭けをすることではなく、手堅く必要最低点を確実に取っていくこと。その意味で、より点数が安定する英語・生物・化学に教科を絞るのもアリだと私も考えました。
こういった話をしながら、アイちゃんが当然のように英語を2問解く前提でいることに、私はしみじみとアイちゃんの成長を感じていました。7月に最初に会った時には、大の苦手教科だった英語。二次試験でまさか本当に2問英語を解くなんて、当初は想像もしていなかったはず。それが今では当たり前のように、「できる」と信じて疑っていない。
「苦手」「無理」と思っていることでも、自分を信じて努力し続ければ、いつか必ず克服できる。もっと自分自身を信じて大丈夫なんだということ。アイちゃんは私が指導で一番伝えたかったことを、確かにつかみ取ってくれたようでした。
一方で、私はあえてその日はアイちゃんに厳しく接していきました。
なぜなら、センター試験後に学習の手が緩んでしまっている様子だったからです。
試験後から指導日までの時間に対して、明らかに学習量ががくっと落ちている。ノートの取り方などから集中力が良い状態でなく、学習の質も落ちていることが明白でした。
「センターが終わったからって、気が抜けていませんか?」
「これで入試が終わったつもりですか?もう合格する気はないんですか?」
「本当にやる気はあるんですか?」
こんな風に、あえてかなりキツめに問いただしていきました。
センター試験が終わった今、受験生にとっては二次試験本番まで、何が何でも一番頑張らないといけない時期なのです。私もギアを上げて、アイちゃんの合格可能性が1%でも0.1%でも0.01%でも上がるよう、熱をこめて指導をしていきました。
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(2月上旬の週計画。二次試験本番に向け、気合の入れ方が以前と段違いに。〇印の予想時間に、10分単位で実際の所要時間を緑色で逐一記録。時間の使い方への意識が別人のように上がってきました)
センター明けから二次試験本番までは、専ら「赤本」を使った過去問の演習に力を入れていきました。過去問演習では、個々の教科の総復習に加え、問題の傾向分析や自分自身の分析も深く行うことが不可欠です。
実は「赤本」を正しく使いこなせていない受験生は意外に多く、過去問を解いてもそれが実力に結びついてないケースがほとんどなのです。過去問の傾向分析から、類題の対策をどのように行うのか。自分に不足している考え方や着眼点を、自己分析を通してどのように見つけていくのか。特に難関大学の受験においては、思考・分析の方法について、上級者や専門の講師からのアドバイスや指導が不可欠であると考えています。
帯広畜産大学の二次試験の問題は、難度は標準的ですが試験時間が短いため、いかに効率良く「稼げる問題で稼ぐ」かが勝負の分かれ目となりました。アイちゃんはそうした取捨選択を苦手としていたので、入試本番までは徹底して、どの問題に注力してどの問題を捨てに行くのか、判断力を上げるトレーニングも行っていきました。
毎回の指導で英語の細かい知識や解法テクニックを伝えながら、猛烈な勢いで日々過去問演習に取り組んでいきました。過去問の点数は、各教科4~7割を行ったり来たり。直近の過去問では合計点が目標の220点を安定して20点ほど上回りましたが、入試合格は本当に5分5分といったところでした。
2月中旬、滑り止めの私立大学にも無事に合格。2月末、万全の状態で、いよいよ帯広畜産大学二次試験の本番を迎えます。
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その約1週間後の3月6日。
国公立大学前期の合格発表日でした。
私のメッセージに、アイちゃんから連絡が。
感無量の結果です。
改めて、アイちゃん。合格本当におめでとう。
そして、これまで懸命にがんばってくれて、本当にありがとう。
受験勉強での努力は、きっとこれからの人生にも大きく役に立つはず。これからもアイちゃんが、自分の人生を自らの努力で切り拓き続けてくれることを、心の底から願っています。
今回はこのストーリーを通して、諦めないことの大切さ、自分を信じ続けることの大切さが少しでも多くの人に伝わればと思い、執筆を始めました。
アイちゃんのように、目標や夢を高く掲げているけれども、実現の仕方が分からなくてくすぶっていたり、周りからバカにされたり否定されて自信を失ってしまう人は、きっと数えきれないほどいるのではないでしょうか。
そうした人を一人でも多く導いて、人生を歩むための自信をつけてもらうこと。それが私の教育者としての使命だと考えています。
自分を信じて努力さえ続ければ、人はどんなことも成し遂げることができる。これは私自身の信念であり、それをより多くの人に伝えていくことが私の人生のミッションの一つです。
そしてアイちゃんが志望校に合格できたのは、何を置いてもアイちゃん自身の不断の努力によるものだったのです。これは決して奇跡のようなものではなく、アイちゃんが最後まで自分を信じて疑わず、努力を重ね続けたゆえの結果なのです。
ちなみに後日の成績開示で、アイちゃんの二次試験の得点は258/400(64.5%)と、最低合格ラインを大きく上回ったことが分かりました。センター試験と合わせた総合得点では、全受験者中260人中47位(合格者148人)と、合格者の中でも上位に入っていたのです。決してマグレなどではなく、実力で合格を勝ち獲った証拠です。
偏差値40の状態から、半年で20万人以上の受験生を追い抜いて帯広畜産大学合格を成し遂げたアイちゃん。絶望的な状況からも、必死に努力して第一志望への合格を成し遂げることができたのです。
この度は最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
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