スタートライン 3

 松田は電話で話していたみたいだが、僕は直接話をするのも久しぶりであった。ドリンクを入れてから、和やかな雰囲気の中会話が始まった。

 まずはそれぞれの近状を話し合った。会わなくなってからの数年間を埋めるかのように、主な出来事を僕らは喋った。彼、松田ときて、最後に僕の順番となった。どこから話すかは決めていたが、この今の想いがどうにかうまく伝わりますようにと、願いながら、そして言葉を選びながら話した。
 まずは僕が起業した理由を打ち明ける所からスタートした。何故なら、松田にもだが、これまで僕は本当の起業した理由を誰にも話してこなかったからだ。これは、何故自分の店に彼を誘いたいのか?何故必要なのか?という大切な部分として関係してくるので、話す必要があった。

 そこから今考えている事、店とダイビング業界の未来の話へと繋げていった。どういう店がいいのか、どこを目指しているのか、その為にこれまでしてきた事、そして今している事を伝えた。店のビジョンと、そのゴールはやはり特に重要だ。ダイビングショップは大阪にも沢山あるので、他の店と僕が目指す店との僕なりの違いを説明した。
 彼とは一度数ヶ月だか働いた経験があるので、彼の理想とするダイビングショップ像はなんとなく把握している。それは、僕の目指す店と近いと思っていた。だから誘ったというのもあるが、一番は、一緒に働いた人間の中でダントツに人間としての器とダイビングに対する熱意が大きかったというのがある。だから彼が僕たちの掲げる理想の店に必要な存在なのは明かであった。松田と目指す店の将来を話し合った時、必要なピースとして真っ先に上がったのが彼であった。名前は澤田という。

 澤田は現在、トラックに乗る仕事をして生活していた。
 ダイビングの仕事をやめた後、大阪に戻ってきてからは朝早くからトラックに乗り、市内を荷物を運ぶ為に沢山移動する生活を続けていた。
 楽しいかどうか聞いたら、楽しくはないと返ってきた。ただ、生活があるのでしているという印象を受けた。
 彼から質問も受けたので、僕はそのすべてに極力丁寧に答えていった。
 彼は僕達と働いた後、他のダイビングショップにも席を置き、その後今の仕事に行き着いている。いくつかの店にもいた経験と、異業種で働いている今、彼の視野は広かった。勿論、その場で色いい返事があるなどという、期待は持たずに来た。しかし、会うという事は少なからずチャンスはあると僕は考えていた。じゃないと、わざわざ時間を作って会いはしないだろう。
 その場ては、何もずっと真剣な話しかしなかった訳ではない。時折大きな笑い声も上がった。すぐに数年のブランクなどなくなったとみんな感じていたはずだ。澤田は当時から変わっていなかった。見た目に少し安心感が加わったかも?と思うくらいで、中身はあの頃のままであった。言葉の節々から、ダイビングと海が本当に大好きで、お客様の事を真剣に考えているのがわかり、益々彼とまた働きたいという気持ちが大きくなった。

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