スタートライン 6

次話: スタートライン 7

 「まさか」の1つとして、僕は奄美大島に来ていた。本当にまさか、だ。奄美大島には仕事をする為に来た。予定では、部下にこの仕事を事前に割り振り、大阪で仕事をしているはずであったが、「まさか」の出来事が発生し、急遽自分が代わりに務める事にした。さすかに怒りたくなったが、すぐにそうすべきではないと結論づけた。怒っても無駄だ。怒って改善したら良いが、そうはならないのはわかっている。そしたら、その怒る体力がもったいなく思え、淡々と受け入れた。他にも従業員はいたが、自分しか行ける人間がいなかった。

 さすがに嘆きたくなる。泣かないけど泣きたくなる。何だよ、これ。何度もその言葉が出かけたが、ぐっとこらえた。言うべきではない。これが今の店の現状だと、受け入れないといけない。松田に急遽まかせる事も出来たが、重要な用事がある彼に頼む事はさすがにしなかった。これが今の店だ。いつかれだろう、いつから歯車が狂ってしまったのだろう、いつからこうなってしまったのだろう。いつから、いつからと今はそこを追求するより、やるべき事がある。そうなっていたのは以前から知っていたのだ。僕は松田が来てくれてから、悲観するのをやめた。もう僕は前を向いている。今あるモノの中で、やれるだけやって理想の店にする、と決めている。だからこれ位では僕の心はちっとも揺れない。一人じゃない。

 ダイビングは2日間実施した。奄美大島の海で潜るのは初めての経験であったが、とにかく魅力的な海だった。複数のクマノミがいたり、ウミガメにも会える。ウミガメは沖縄の海よりも見れた。やはり、屋久島や奄美大島はウミガメの産卵地にもなっているので、多くのウミガメに会える事で有名だ。ウミガメ好きな自分として、テンションが上がらない訳がなかった。他にも、無数の珊瑚、多種多様な生物など、奄美の海に多くのダイバーがはまる理由がすぐにわかった。

 水中カメラを使いたくなるスポットもとめどなくある。小さな生物を撮るのが好きなマクロ派も、広い世界を撮りたいワイド派も満足する海。1つのダイビングスポットでも、何度も潜りたくなる魔力を秘めている。仕事で潜ったが、心はずっと喜びと癒しで満たされていた。ダイビング中、常に一緒に潜る人たちの安全を考えているが、そうしながらも楽しめる術を僕は知っている。趣味としてのダイビングも、こうやって全体の安全を考えながら潜るスタイルも、どちらも好きだ。ダイビングをやり始めて15年になるが、毎回ワクワクし、毎回癒される。潜る度にやはり自分はダイビングが大好きであり、ずっと続けたいし、このスポーツを伝えていきたいと思う。この癒しを知って欲しいし、伝えたい。19才の頃にそう思ってから変わらない。これが僕のあきらめない原動力にもなっている。あの時救われた自分のような人たちを救いたい。身近な異世界を知ってほしい。宇宙に行くのはまだまだ難しいが、水中の世界は近くにある。遠くはない。すぐに行ける異世界。この異世界に僕らははまっている。遠くから覗くだけより、この中に入った方がずっとずっと楽しい。大好きな世界だ。

続きのストーリーはこちら!

スタートライン 7

著者のTakashi Makiさんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。