塾の先生と呼ばないで

学生時代から含めると、もう10年以上も塾というものにたずさわっています。この仕事をどうしてもやりたいという気持ちは少しもありません。成績が上がったからって、なんなんでしょうか。ちがうテストなのに点数が上がると表現するのは、ちょっと滑稽な気もします。いい高校、いい大学に入ったからといって、なんなんでしょうか。そのレールの先がこの様かもしれないじゃないですか。かといって、ふてこい態度で授業をしているわけでもなく、むしろかなり熱い思いがたぎっています。ほんとは私の場合はこうやったよ、こうすればもっとよかったかもしれない。そういうことを伝えていきたかったのです。阪大くらいならちょろいぜ、って。教育ってのは、僭越ながら、また漠然と、考えていることを言うと、より正しい道に誘い、より正しくない道に行かないように導くことです。親に強制されて嫌々な子をみているのはいたたまれない。勉強なんてものはみんながみんなそんながんばるもんじゃない。おのおの、好きなことを好きなだけやってりゃいい。そのうちのひとつが勉強だったりするし、しなかったりもする。あ、あまり関係ないですが、教育の理想のようなものもついでに語っておいちゃおう。あまり詳しくはないですが、ゴータマ・シッダールタのエピソードで、最愛の子を亡くした母がいたんです。どうしようもなく悲しいので、ブッダのところへ相談にいきました。息子を生き返らせて欲しい、というスーパーなことを期待していたのでしょうが、ブッダはなんかの実か種かなんかを手渡してきて、これと同じやつを持っている人を探しに、いろんな家を訪ねてきなさい、と言うのです。ただし、その家からこれまで誰も死んだことのない人がいる家が見つかるまで。そういう家の人と同じやつを探してきなさい。それで息子が生き返るのなら、と母はずいぶん旅して周ります。しかし、いつまでたっても見つかりませんでした。そりゃ、いままで誰も死んだ人のない家なんて、ありませんから。おじいさんのおじいさんとか、おばあさんのおばあさんとか、ってなるとむずかしいでしょう。けっきょく見つからなかったし、だから息子も生き返ることはなかったのですが、母はそれよりも大切なことに気づきました。誰でも、ツラい他人の死を経験していて、それを乗り越えていま生きているんだ、ということ。私がこの話ですごいと思っているのは、ブッダの計算力です。目的のためにはなんでもするからと必死な人に、とりあえず分かりやすい命を与え、その経験を通して自分で大切なことに身をもって気づいてもらう。仮に、ブッダが、そんなんあるあるやで、なんて言っても救いにはならなかったでしょう。そんなことは分かってる。でもそれをどう伝えるのか。こういうことを考え試行錯誤するのが私の喜びのひとつでもあります。でも、本題。2つだけ、いままでこの仕事をやっていて嬉しかったことを言って終わりにします。ゆうちゃん。そんな勉強は好きでもない。みんなもいってるみたいだし、とかそんな理由で塾に来るようになった。その塾は、これこれのテキストをいついつまでにきっかり終わらせてください、と上から指定されるタイプの塾だった。でも、疲れてたり、気分じゃないときは、そんなやってもなんにもならんやろ。てなわけで、じゃあ作文する?って私は聞くのです。すごく喜ぶんです。子どもはみんな作文が嫌いなもんなのだと勝手に思っていましたが、将来はものを書く人になりたいというその子は、書くことがとにかく好き。もう書き出したらとまらない。お題をひとつ決めて、私と書き合いっこなんてものもたくさんしたっけ。すごくたのしかった。私が嬉しかったのは、そういう才能に出会えたこと、勉強なんてできなくてもべつにいいんだ。国語の点数なんてあんなん大人が適当に決めてるだけだ。読みたいように読んで感じたいように感じればいいし、書くのなんてなおさら。ありがとうね、ほんま。よしくん。出会いは ”Excuse me.”って長くて言いにくいから、” 'scuse me ”って言ってもいいんやで、からやったね。おぼえてるかしら。医者になりたい、っていう夢が、ほんとにずっと本気であって、最初は三角形の面積も求められないくらいだったのに、ものすごい一気に勉強が得意になっていった。私立の中学に合格して、その中学では数学と理科の塾がぜんぶ英語で、でもそれでも飽き足らず、いまではもうNZでの一人暮らしが1年にもなるやんね。さらにこんどはもっとすごいとこ転校するとか。すげぇわ。ふつうに尊敬。私もその姿をみて感化されて、おっさんやけど医学部いこうとしてるんやから。ありがとうございました。ほかのみんなも、つぎ会うときは友達っていうか、仲間として、やで。元気でなっ!

著者のTeimo Nikiさんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。