20歳目前の愛猫の死、理想的に見送れた話 ~看取りのプロが自分のペットとどう向き合ったのか~後編

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201897日:日記より     

今朝から寝たきりなったミーシャちゃん。

 

今までも右後ろ足が悪くて良く転んでいたけど、いよいよ歩けなくなった。

 

朝起きると、夜中に見た時と同じ体勢でいた。

 

いつもなら夜間に排尿を1~2回してるのにしてない。食事をした気配がない。

 

全く動いてないということ。

 

そしてミーシャは寝たきりに。朝は死相も出ていて。

 

あ、昨夜20年分の感謝を伝えたから、もう逝くことにしたのか。

 

ゆっくり胸に抱いたり、寝たままで御飯やお水を与えたり身体をマッサージしたりしていたら、少し目に力が出てきた。

 

いよいよお別れが近づいてきた。

 

完全看護、今までの感謝を伝えよう。

 

20年ありがとう。あなたの好きなだけ生きてください


寝たきり猫の介護     

 この頃の体重は1.5㎏まで減って、あらゆる場所の骨が出っ張っていた。

 

両足を全く動かすことが出来なくなったミーシャは寝返りも打てない。

 

床ずれを作らないように低反発の丸いクッションをベッドにして、2時間毎に体位変換をした。

 

寝たきりになっても食欲だけは旺盛で、スプーンに一口ずつ乗せて食べさせた。

 

水は飲みたがらなかったのでタラを煮込んでスープにして飲ませたら、飲みすぎじゃないかというくらいガブガブ飲んでくれたのでホッとした。(飲んだ後に口の周りがタラの身だらけでエライことになってたけど・笑)

 

 問題は排泄。膀胱がパンパンになるまで我慢している様子。

 

「出しても大丈夫だよー」と言うけれど、寝たままだと腹圧もかかりにくいから出せないのは仕方ない。(私も寝たまま出すのは難しいもの)

 

それでも11回、1日分の大量の尿を出すようになった。

 

ペットシーツの当て方によっては、ミーシャの身体が濡れてしまうこともあって、身体を拭いてドライヤーをかけることもあった。

 

便は止まってしまったので、整腸剤の内服は中止した。

 

 動けないことはただでさえ不安な上、目、耳、鼻ときかなくなっているので、私の姿が見えないことは不安が大きくなると思った。

 

体位変換をしたら反対側を向いてしまうのだけど、クッションを回転させて、いつでもミーシャから私が見えるようにして声をかけ続けた。

 

夜は、私の布団のすぐ隣にクッションを運んで手を繋ぎながら寝た。

 

長年寝室に近寄らなかったミーシャだった(私の寝相の悪さにトラウマがある模様)ので、一緒に寝れて嬉しかったのは私の方だった。

 

 食事、排泄、身体の清潔を保つこと、床ずれの予防、足の運動・・・・本当にやっていることは人間の介護と全く同じで、人間に比べて小さいのでやりやすかった。

 

私が看護師として今まで経験していたのは、ミーシャを看取る為だったのかもしれないという程、全ての経験と知識を注ぎ込んでいた。

 

そして介護出来ることが、とても幸せだった

 

201899日:日記より     

ミーシャが完全寝たきりになって3日目お互い、生活に慣れてきつつある。

 

尿失禁も、膀胱がパンパンになるまで我慢に我慢を重ねていたのが、通常量で出るように。

 

出る前に、手足や頭を動かしているサインもわかってきた。

 

夜は、私の布団の真横にクッションを置いて、途中で体位変換したりして、常にミーシャから見える位置にいるようにしてる。

 

今朝は、尿失禁してるのに寝ていて気づかず。おそらく身体が濡れて気持ち悪かったのか、めったに鳴かないミーシャちゃんが「にゃーんって鳴いて教えてくれた。

 

お腹には、硬く硬くなった便が触れて。

 

整腸剤は中止して、お腹のマッサージしてたら、びっくりするほど山盛りに出てくれた。

 

2時間毎に体位変換して、マッサージして、お水飲ませて、ご飯食べさせて、ブラッシングして、関節が固まらないようにリハビリして。

 

一歩も歩けないことに淋しさを覚えながらも、好きなご飯の時には目の色変えて喜び、がっつく姿に嬉しくなる。

 

あー、人間も猫も看護の方法は同じだなと、看護師さんで良かったなとつくづく思うのだった。


2018911日:日記より     

昨夜のミーシャちゃん

 

完全寝たきりになって4日目の夜

 

午前中は食欲があったのだけど、夕方から何も口にしなくなった。

 

何となく苦しそう。お腹というか、腸がソーセージのようにパンパンに張っている。

 

前日に、何日分?というくらい山盛りに排便したのに、なぜお腹が張るのかわからず。

 

夜になり、悶えはじめた。前足で私の腕を何度も掴もうとしたりと様子がおかしい。

 

老衰なら食べなくなって飲まなくなって、静かに苦しむことなく眠るように逝くはずなのに、それとは様子が違う。

 

食欲はあったし、苦しそうだから、何だか老衰とは様子が違う。

 

こんなに苦しむくらいならお別れは悲しいけれど、早く楽になって良いよと、涙を流しながら何度もありがとうを伝えた。

 

私の胸の上に乗せて、お互いの温もりを感じたりした。

 

すると、苦しみが落ち着いたのか、眠りはじめた。落ち着いたというより、意識が落ちて感覚がなくなって楽になっているようにも見えた。

 

今日は、お風呂も入らず、朝まで眠らず側にいようと思った。

 

数時間後、急に目が覚めたかのように顔がしっかりして、ご飯を食べはじめた。これ以上、お腹が張ったらどうしようと思いながらも、意識が良くなったことにホッとした私もいた。

 

ミーシャを撫でながら見つめていたら、肛門の奥、直腸がミルミル張ってきた。ミーシャが苦しそう。触れると便ではなく、ガスだった。だけど、肛門がキュッと固く閉まっていて、腸は風船のように膨らみ続けていつ破裂してもおかしくない張り方に焦る私。

 

そういえば、肛門の少し奥に小さな硬い腫瘤があって、数日で大きくなっていることに気づいた

 

もしかして、腫瘤が肛門を栓してガスが抜けない?

 

慌ててオリーブ油をつけた綿棒で肛門を開き、手で腫瘤を少し横にずらしたら、プシュ~~~っとガスが沢山出てきた。

 

しばらくしたら、お腹が随分とへっこんだ。

 

ミーシャも楽になった様子。考えてみると、寝たきりになってから寝たままご飯や水を飲んでいたので、かなり空気を飲んでいたのだろう。

 

もう少しで腸が破裂するんじゃないかと思った。破裂したら、即命に関わるし、何と言っても強烈に痛い。

 

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