安本豊360℃ 歌に憧れたサッカー少年 Vol.40 「プロローグ」
豊とタケシは、もう20年来の音楽仲間である。
地元の喫茶店Tree Topでスタートした、3回目のマンスリーライブ「屋内路上」に、豊はタケシを呼んだ。
ふとした思い付きだったが、豊は「屋内路上」を、本当に自分の自由にやっていこうと思っていたので、気のおけない友人と一緒に、自分自身が楽しむつもりだった。
2nd LEGの「回遊魚ツァー」で東京へ行ったとき、関西の名前も知らないユニットに、お客さんたちは何も既成の期待をしなかった。
豊たちは、活動休止を決めた後だったこともあり、ただ純粋に自分たち自身が演奏することを楽しめた。
それが、豊たちにとっても、お客さんたちにとっても、あのライブが素晴らしく楽しいものになった理由だろう…豊は、そう思っている。
「自分自身が楽しむこと」
もともとはそこからスタートしたはずだった。
流れにのって、意気揚々と進むうちに、いつの間にか、期待される自分を演じるようになって、そんな「当然のこと」を見失ってしまっていた。
2019年1月23日 「360°」のCDはリリースされた。
豊は、タケシを、Tree Topでのマンスリーライブ「屋内路上」の準レギュラーとした。
ユニットではなく、ソロシンガーが2人で自由に進める屋内の路上ライブ…回を重ねるごとに、豊もタケシも、それがだんだん面白くなってきた。
この企画、Tree Topから持ち出そう…そんな話にも発展して、豊の地元から少し北に上ったタケシの地元でも、同じタイトルでライブをすることになった。
こうなったら、全国展開も面白いんちゃう?
タケシとそんな話が盛り上がり始めると、豊は、一時止めていたビールを、また飲み始めた。
「俺、最近CD発売したところなんですけど、なんかまた新しいアルバム、作りたくなってきたんですよねー。」
「屋内路上」のライブの中で、豊は、そんなことを話すようにもなった。
Tree Topのオーナーの橋渡しで、海沿いのレストランで「屋内路上」を企画することにもなった。
リンゴ農園で、酒蔵で…さまざまな話が持ち上がる。
新しい曲も作り始めた。
僕は、今、豊と一緒に歌っていて、とても楽しいと感じている。
豊を見ながら、微笑まずにはいられない。
可能性は、いつだって360°開けている。
ここからが、豊の新章のプロローグだと、僕は思う。
~END~
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