ボーダーの私が『普通』になるまでの物語②

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どうでもよかったんだ。

 

 

17歳 魔の年】

 私が17歳の4月、愛犬が死んだ。

体調があまり良くないのは知っていた。

でも正直、自分のことでいっぱいいっぱいであまり考えていなかったと思う。

愛犬が死んだ夜、私は悲しいはずなのにその日の夜も大量のうまい棒アイスを食べては吐き続けた。

そんな時でも過食をする自分が心底みじめだった。

泣きながらトイレで吐き続けた。


その日の夜。

愛犬をかかえ正座をしている父親の後ろ姿が目に焼き付いて離れない。

 

 同じ年の8月、祖母が亡くなった。

癌だった。

祖母は5月から入院していたが私は一度もお見舞いに行っていない。

自分のことしか考えられず当時は祖母がなぜ亡くなったのかも知らなかった。

自分はこんな状態だから仕方ない。

誰かに責められているわけじゃないのに自分にそんな言い訳をしていた。

 「誰も私を責めないで」

一番責めていたのは自分自身だ。


祖母が亡くなってから35日後、父親が死んだ。

私にとっては突然のことだった。

普通にリビングの椅子に座っている私を、母は後ろから抱きしめ「お父さん死んじゃった」と言った。

その時の前後の記憶はあまりない。感情も覚えていない。

ただ、自然と涙が出ていたのだけは覚えている。

 

 父はアルコール依存症だった。

私がひきこもりになってからは父とほとんど話をしなくなった。

昼夜逆転生活の私は夜中にテレビを見ていることが多かった。

父もそんな生活だったため、夜中に同じ空間にいることはよくあった。

私はテレビ、父は新聞を広げ、お互い何も話さない。

私は心の中で「早く寝ればいいのに」と思っていた。

父のそんな生活もあり、徐々に別居状態に。

父は、当時住まいの下にあった自分の事務所で生活をしていた。

父はそこで吐血して倒れていたところを母親が発見したらしい。

母親が見つけたときはすでに亡くなっていた。

母が私に父が亡くなったことを言ったのは亡くなった数日後。

それまで私は家族の変化に何一つ気づかず、何の違和感も覚えなかった。

 

私は父親のお通夜にも葬儀にも出ていない。

最後に父の顔見たのはいつだろう。

「死」という実感がないままどこか遠くにいってしまったような感覚だ。

愛犬もおばあちゃんもお父さんも、みんないつの間にかいなくなった。

 

そこから母と姉もクリニックに通い、私の自傷行為はますますひどくなった。

毎晩みんなが寝てから、カッターで自分の左手首を切った。

泣きながら何度も何度も切った。

お父さんのことが許せなかった。

「何で死んだんだ」「お前が死んだら私は死ねないじゃないか」

「何で私だけ置いていったの」「何で自分だけ楽になるの」「ずるい」

 泣き叫びながら自分の左手首から腕にかけてカッターで切り続けた。

心臓の近くを切ればより死に近づけるのではないかと思い左胸もカッターで切りつけた。

家族5人分の傷

 

この頃の私は、異常なほど家族を嫌い、異常なほど求めた。

 

自分を止めることができない。

次で最後。あともう少しだけ。

あともう一回。

これ以上やったら大変なことになるのではないか。

でもあともう一回だけ。

 

 自分を傷つけると落ち着いた。

どうしようもできない気持ちがスーッとなくなっていく気がした。

切った後はトイレで処置をする。

この時はすでに気持ちが落ち着いていて冷静。

顔はぐちゃぐちゃ。

絆創膏でおさまらない傷にはガーゼを貼った。


前の傷が膿んでいる。

頭の片隅でこのまま傷が悪化してどうにかなればいいのにと思っている自分もいる。

自分なんてどうなってもいい。

でも家族にばれるは怖い。

血のついたカッターを隠し、血のついたティッシュをバレないようにゴミ箱の奥の方におしこんだ。

 

助けてほしい。

気づいてほしい。

 

でも気づかないで。

 

そんな地獄の毎日が続いた。

 

一生分の涙を流したんじゃないか、そう思うほど毎日毎日泣いた。

 

「平成16年は魔の年」

 

愛犬、おばあちゃん、お父さん、みんないなくなった。

 

 私は17歳だった。

 

 

 それからしばらくは家でひきこもり状態。

毎日、朝から晩まで食べては吐いての繰り返し。

食べたくないのに胃がはちきれそうになるまで食べては必死で吐いた。

泣きながら食べて、泣きながら吐いた。

 

異常だ・・

 

もうこんな生活嫌だ。

 

「あーーーーーー」

 

叫びながら物を投げる。

暴れる。

 

叫んでいないと気が狂いそうだ。

叫んでいないと自分が壊れそうだった。

 

 

 

私は毎日何をしているんだろう。

 

同級生が毎日学校で勉強をし、部活に明け暮れ、友達と遊び、恋愛をし、喜び、悲しみ、苦しみ、楽しんでいる中、私は何をしているのか。

 

生きている意味はあるのか。

 

いったいいつまで続くのか。

 

いつかは抜け出せるのか。

 

死にたい。

 

そんな毎日だった。

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