ハロー!クロスアセクシャルマンの愉快日記4~お待ちかね絶望編2~

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 さて。前回は体格差の事についてお話したわけだが、今回語る二つ目の「観点」というのは、”就職活動”から得たものである。何のことだか分からないという方は、もしお時間があるようだったら日記1からぬるっと読んでほしい。すると、僕はとっても嬉しいです。

 閑話休題。本筋に戻る。あくまでも僕が「体の性別を無視して生きることはできない」と思い至るきっかけになった観点の二つ目は、就職ではない。就職活動、という例のイベントによって、である。
 学校の性質的に比較的就活にキリキリしない我が校でも、3年生の12月となると、少しずつ就活セミナーなるものを学生課が用意したり、あわただしくなってくる。3年夏に多く開催される企業さんのインターンは、夏休みが10日も無い以上参加は不可能に近く、それもあって「就活、動き始めの本番は冬」という雰囲気がもりもり漂う中、僕は一人、見当違いな方向に頭を悩ませていた。
 普段稀に頭が完全女の子の日でもなければ、必要に迫られた時以外メイクなどしない(今年の夏までメイクの仕方すら知らなかった)僕である。だが、裏を返すと「頭が完全女の子の日なら、まだ『メイクしよっかなー』という気にもなる」ということであり、女子のメイク方法しか知らない僕にとって、特に何もないのにメイクをする、女の子らしい服を着る、というのはぶっちゃけ感覚としては「女装」に近いのだ。
 これが、まだ頭が男の子全振りでないのならば、女装という感覚で止まってくれるから良い。もう、完全男の子の頭の日ならば最悪だ。だってさ、理由も嗜好も無いのに、抵抗なく女の子の服に袖を通せる男はいないと思うんです。女の子はまぁ、ファッションでメンズアイテムを取り入れる、とかもあるのかもしれないけれど、僕が周りでよく見かけるような男の子たちで何もないのに平然とレディース服を着ることに抵抗のない奴はいないと思う。
 就活ヘア。就活メイク。服装自由。オフィスカジュアル。パンプスにストッキング、襟付きブラウス。・・僕は、ネクタイを締めることはできない。レースアップの革靴も、シャツも、僕は着ることができない。普段着ならまだ許されるけど、社会では、常識では、許されない。そう、ここで得られた「観点」は、「社会・・というかとりあえず就職活動では、体の性別が絶対である」ということだ。
 普通に考えればその通りだし至極当たり前の事なのだが、僕はまだまだ学生の身分であり、社会、というものはどこか遠くの存在であるかのように感じていた。今のバイト先の制服は、レジ部門以外は男女の区別が無い(というか全て男性用)であるから気にもならなかったが、そう、”就活”ならばそういう訳にもいかない。今の世の中、就活で女子のパンツスーツというのも割と受け入れられているようには思えるため基本僕はスーツの時は躊躇わずパンツだが(スカートだと確実に風邪を引くというのもある)、そうなると、逆に猶更というか。・・ああ、ネクタイ、僕は駄目なんだな、って。スーツが嫌な訳ではない、むしろフォーマルはかっこよくて好きなのに・・「こっちが正しいのに」と多くのタイミングで思う方は端から見たら大間違いなのだ。
 インターンやら何やらで女の子の格好をするとき、普段9割は頭が男の子であると言った通り、僕は「男の子」であることが多い。その格好で、メイクで、この場に佇む僕は、一時演劇をかじってた影響か母親の教育の賜物か、自身を役者か何かと思って無理に葛藤をやり過ごしているが。「役者ならば異性装くらい当然、抵抗を持つ方が可笑しい」「やりきれ、『女の子役』を演じるだけ」と、本当にこんな感じで言い聞かせているのだ。・・完全男の子、なときだと、これでもしんどい時はあるけれど。仕方がない。メイクをすれば女の子(・・というにはちょっと迫力があるらしいが)の顔にはなれるから、「大丈夫、わたしはイケてるわ、誰が見ても」と言い聞かせ、僕はヒールを鳴らして形だけでも「わたし」になるのだ。
 明日はせっかくだから、母に買ってもらったワインレッドのフレアスカートをはこう、ついでにこのブラウスも。そんな浮かれた気持ちで翌日の服を用意して眠りについて、目が覚めて、何考えてんだ、馬鹿じゃねぇの、こんな服着れるか、とお気に入りのボタンダウンシャツにジャケットを羽織る朝。長い付き合いの友人への誕生日プレゼントにネクタイピンを購入した時、自分のものになる訳でも、まして自分で使う機会がある訳でもないのに、何か素晴らしいものを買ったような気分になった。せめて、どちらかであれば。いっそ、完全に常に頭が男の子であれば、もしくは、完全に正しく頭がいつも女の子であれば。就活セミナーで服装マナーの講義をされた後、そんなことを呟きながら、全てにおいて半端な自分に嫌気が差し、夕日の余りの赤さに誘われたのか、度胸も無いのに制限速度を守らない乗用車の前に飛び出してやろうかなどと考えていたのが、先週の話だ。
 ・・・と、長くなったがこんな具合で、僕はとうとう「性別を適当なままで生きることは自分的にも社会的にもできない」という結論に至り、思考を大暴走させていた訳である。友人には恵まれた、だがいつまでも自由にやっていける訳ではない。ある程度堅い職種を望んでいるならなおさら、どうにかしなければならないのに、どうにもならない。その捌け口を求めて、こうしてよしなしごとをネットの片隅で語り始めたのである。何も気にせずに話したかった。誰か一人にでもいいから、正直な僕の性別感覚を話したかった。・・男の子っぽく振舞わなきゃとか、女の子っぽく振舞わなきゃときゃ、そんなことを考えなくてもいい場所が欲しくて、久々にこのサイトで筆を取ったのだ。・・なんだか、徹夜したってのにすっきりとした朝だ。
 これからは不定期に、自分の性別に関わって起きた色々な事を綴っていこうと思う。あれだけの口を叩いたものの、基本的に「性別の揺らぎが日々ある人間からするとね、」ということを多少お話したい、というだけのストーリーだ。独り善がりかもしれない。自慢したいつもりもない。ただ、こういうのが世の中いたりするんだよ、とね、それだけだ。宜しければ僕の筆が続く限り、お付き合い頂きたい。そうしてもらえるだけで僕は少し、嬉しい。
 午前6時も回った。そろそろ寝ようかと思う。
 お付き合い頂きありがとうございました。おやすみなさい。

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