恋人と別れたけれど、心穏やかなクリスマス
いよいよクリスマスだが、僕は1ヶ月ほど前、大好きだった彼女と別れた。付き合い始めたのは今年の8月からなので、交際期間は3ヶ月ちょっと。
これまで僕は何人かの女性とお付き合いしたことはあるものの、正直に言って恋愛に対する優先順位が低く、恋愛を楽しんだ経験があまりない。
いま振り返れば本当に申し訳ないのだが、『今日たまたま空いてるとかならいいけど、先の予定をわざわざ時間を作って会いたくない。』と言ってブチ切れられたことがある。
そりゃそうだ。本当に申し訳なく思っている。
そんな僕がこんなに人を好きになるなんて考えもしなかった。
毎日でも会いたいと思うし、付き合う時点から結婚を前提にした交際のつもりだったし、彼女も最初はそのつもりだったと思う。
本当に幸せな時間だった。
しかし、少しずつ、小さなズレが広がっていっていることに僕は目を背けていた。
彼女から別れ話を切り出されたとき、意外とは思わなかったし、もちろん悲しいものの、比較的冷静に対応していた。
なぜか涙は出なかった。涙は出なかったが、心に大きな穴が空いたような感覚だった。
その次に湧いてきた感情は、自分への怒りだ。
反省するところを上げればキリがない。
僕が彼女を好きすぎた結果、重くなって苦しめた部分もあるだろうし、彼女を焦らせてしまった部分もあるだろう。そして、彼女も起業しているので、いまは仕事を優先したいという気持ちもあったと思う。
彼女とは一回り以上年齢も離れているから、そもそも恋愛対象としてみるのも難しかったのかもしれない。
なかなか簡単に現実は受け止められなかったし、やり直したいという思いも精一杯伝えたが、彼女の意思は固く、お別れすることになった。
希望があるとすれば、嫌いになったわけではなく、いまは恋愛そのものに積極的になれないという彼女の言葉。
その状態でやりとりしても逆効果になると思ったので、この1ヶ月、僕からの連絡は控えていた。
一方でこの1ヶ月は生きた心地がしなかった。ストレスなのか、胃の痛みと吐き気がひどく、夜も寝付きが悪い。
1日1食しか食べれないことも多く、明らかに弱っていた。
あまり人に頼ったり、弱みを見せるタイプではないので、会食の場ではかなり頑張って食べたり、そもそも極限までお腹を減らして行ったりしていたので、あまり気がつかれなかったかもしれない。
それでも一部の友人には気づかれてしまい、状況をすべて話した。泣きながら人に相談するなんて、いつぶりだろうか。
友人からのアドバイスは一言だった。
あきらめるな。
自分でもびっくりするくらい、僕は彼女のことが大好きだ。
ただ、相手はもう距離を置きたがってるし、僕がアプローチしてもむしろ迷惑なんじゃないか。それだったら他の人を見つけた方がいいのでは。頭の中でぐるぐるぐるぐるいろんなことを考える。
そして、街はクリスマスムード。カップルを見ると辛くなってしまう自分もいた。
それでも僕はあきらめなかった。なにより彼女への想いが溢れすぎて、ほかの女性に興味も持てなかった。
しかし、頭ではわかっていても心は正直だ。
彼女の投稿がSNSで流れてくるたびに心が病んでいく。彼女のアカウントをミュートして、できる限り考えないようにしながら1ヵ月を過ごした。
そして、いよいよクリスマス。
もともとクリスマスプレゼントに渡したいものは考えていた。しかし会うことができないので、郵送で送る準備をしていた12月23日。
彼女からLINEが届いた。
『いま麻布十番にいたりしない?』
驚いて手が震えた。
僕は渋谷にいたので、居ないけどすぐ行けるよと返した。
『大丈夫。まだ予定中だけどちょっと会いたくなっただけ。』
このメッセージを見た瞬間、僕は家を飛び出して麻布十番に向かっていた。
彼女も会いたいと思ってくれていた。一瞬思っただけかもしれないけれど、今日会わないともう次は無いと思った。
僕は夜もやっている花屋さんを探し、駆け込み、赤いバラを3本買って麻布十番に向かった。
会ってすぐ、彼女を抱きしめ、バラを渡した。
『あなたを愛してます』
3本のバラの花言葉だ。
この1ヵ月のこと、お互いに思っていたことを話した。結論としては、今日付き合いがもとに戻ったわけじゃないし、僕はいま彼女がいない。
でも心はとても穏やかだ。
彼女ではないけれど、心から愛している人がいる。相手も出来る限り向き合おうとしてくれている。
いまの僕にはそれで十分だ。
クリスマスだから恋人がほしい。その気持ちはわかるが、僕は恋人を作らなくてよかったと思う。
彼女はいないけれど、僕はいまとても幸せです。
みなさん、いいクリスマスを。
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