将棋 プロ挫折後5

将棋部に入ることにした。

そして関東にも出ることにした。


古郡はそうするとわかっていたかのように笑みを浮かべながら入部届けを受け取った。


やっぱりなんかこいつはムカつく。


部活にも出るようになった。

部員のやつらとめっちゃ将棋指した。

けど脳が震えるようなことはなかった。

指導対局が部活での日課になっていった。


「やっぱ部活じゃもの足りねえよなあ。みんなが強くなってくる姿を見るのも楽しくないわけじゃないが、ここじゃ俺は強くはなれない。」


久しぶりに道場でも行くか。


小学生の頃通った、毎週土日に営業してる矢板の囲碁・将棋センター。師匠の藤原さんがいる将棋センターにまた通うことにした。


藤原「お、久しぶり。また懐かしい顔が来たな。」

俺「ど、どうも。お久しぶりです。」

藤原「もう将棋はやってないんかい?」

俺「あれから色々ありまして、今また高校の将棋部で再開しました。」

藤原「じゃあ今度は目指すは高校生チャンピオンか?」

俺「そんなこと言えるほどもう強くありませんよ。それでも部活だと相手がいないんで、またお世話になろうかと思って来ました。お願いします。」

藤原「そりゃそうはいないさ。なるほど、じゃあ一局指そうか。あれからどれだけ弱くなったか見てやろう」


そんなはっきり言わなくてもねー。


一局二枚落ちで指した。


藤原「めちゃくちゃ弱くなったね。こんなに力が落ちてるとは思わなかったよ。」


自分でもわかってはいたが、めっちゃ弱くなっていた。二枚落ちで勝てないなんて。

小学生の時は角落ちで時々勝てるくらいまで行っていたから、その時に比べるとだいぶ弱い。


俺「自分でもわかってます。だからあまり来たくはなかったんです。」

藤原「そうだよね。んで、これで今どのくらいなんだっけ?」

俺「先日大会で3位でした。今度関東です。」

藤原「それでも3位か。まあ栃木はレベルが低いからな。これだけ落ちてると、力戻すのにだいぶ時間がかかるぞ。」


このひとが言うなら本当だろう。

藤原さんは日本将棋連盟の指導員で、プロの人にも勝つことがあるほどの実力者。アマ5段の腕で、一度全国チャンプの高橋さんを育て上げたほどの人だ。


俺「わかってます。今のままでは昔の自分にも、元奨の連中にも到底太刀打ちできないのはわかってます。しっかり時間をかけて以前より強くなって、結果を残したいです。」

藤原「そうか、わかった。じゃあまずは角落ちで勝てるようになるところまで戻そう。話はそれからだ。」


昔の自分を超えないとそれ以上に強く離れない。

それは当たり前のように見えるけど、そうじゃない。技術的なものだけじゃない、メンタル的にもそう。以前越えられなかった壁をしっかり乗り越えて、過去と決別を果たした先のことを考える。それが大事なこと。


自分との戦いが始まる。


そう確信した瞬間だった。


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