女上司と男部下、ジェラシーから始まる物語 後編

前回の続き
――
男「てか、ホントに来るんすか?」
女「行ったらだめ~?」
男「いや、、なんか」

小池が口を開いた。
にらんだ通り、上司が家によることを願っているのか自ら話題を振る。
女性の上司は酔いなのか普段からなのか甘え口調が増し、それが更に小池を欲の渦中へと巻き込んでいく。
そんなことより、小池の目的地はどこなのか。
左折と言う指示したっきり彼はそれどころではない。
小池の降りる場所が知りたい、そこがこのドラマの重要なポイントでもあるのだから。

――

女性の上司は相変わらず弄ぶように小池を試す。
既婚の先輩女上司が家に行きたいと言っていることに、冷静さを保つように見せるが小池はちらりちらりと欲望が顔を覗かせる。

女「トイレ借りたい、これは本当に」
男「ホントにトイレ貸りたいなら貸しますよ」
女「・・・そういえばさぁ、前に高橋と三宅がヤったみたいな噂あったよね」
男「ありましたね~」
女「あれ絶対あったでしょ」

女性の上司が急に話を折り曲げた。
家に行く、トイレだけど、というワンターンの件が完結することなく話は次に進む。

男「まあ、結局今は付き合ってるって言ってるんでいいんじゃないっすか」
女「その時は、二人ともなんでもないみたいにしてたじゃん」
男「まぁ、そうっすね~」
女「私たちもそうなったらどうする?」
男「いや(笑)だから~、」
女「え、なに?すぐ人に言っちゃう人?」
男「別に言わないですけど」

再び切り返した。
この女性の上司はどういう狙いがあるのだろう。
ただ小池を弄んでいるだけなのだろうか。
酔っていることもあり、なかなか本心が見えてこない。

女「私は絶対言わないかな、ていうかバレるのがよくわかんない」
男「いや、だからって人の奥さんを」
女「じゃあ家行ったらダメってこと?」
男「いやいや(笑)ダメっていうか」
女「トイレしたいんだけど、ホントに」
男「あ、トイレ?ホントにトイレしたいんですか?それなら別に貸しますよ」
女「トイレ貸すだけ?」
男「えっ?」
女「貸すだけで終わり?」
男「・・・じゃあ、なんかお茶とか出しますよ」
女「ホントに?ホントにお願いだからそれだけにしてよ?」
男「いやなんで僕が無理やり誘ってるみたいになるんすか!(笑)」
女「はあ、しょうがないから、トイレだけ借りる」
男「トイレは別に貸しますけど. . . (笑)」

小池の欲望が沸々と湧き上がっているのを運転席で感じている。
先輩と・・・という欲望が。
ただ、誘うことはなくあくまで受け身。
そして、私は声が掛けられない。
二人の空間でクライマックスに向かおうとしている。
そこに横やりを入れることにならないだろうか、そんな考えを巡らせていると

男「あ、運転手さん、あそこの信号の次の信号でお願いします」
私「んん‐、かしこまりました」

小池が急に声を掛けてきた。
予想外だったことから反応に詰まってしまう。
目的地はもう100mとちょっと先。

女「・・・帰ってもつまらないしな~」
男「・・・。」

あと100m

女「・・・ん~」
男「・・・。」

50m

女「・・・はぁ」
男「・・・。」

10m

女「・・・。」
男「・・・。」

止まる。

女「・・・・」
男「・・・・」
私「・・・・」
ハザード「カッチ、カッチ、カッチ」

男「あ、運転手さん、もう少し先」
私「あ、かしこまりました」

更に50m、二人は無言のまま走った。

私「えっと~、この辺りで?」
男「はい」

女「・・・・」
男「・・どうします. . .?」

小池は誘いはしない。

女「ん~、どうしよう」

二人で降りるにしても小池だけ降りるにしても何かしら動いて欲しい。
二人のこの空間に居合わせる運転手は息を潜める以外にやることがない。
二人の会話には入っていないが、
二人の行動に私も左右されている。

いつのまにか、三人で無言が10秒ほど続いた。

どうしてるんだろうと、後ろを見ると

私「(はっ!!えっ!?乗って来た時となんか顔が違う!!!)」

小池の顔が驚くほど欲に塗れていた。
目じりが垂れに垂れ、
目には「(先輩人妻と、、、)」という欲望が表れ
鼻の下が口を覆い隠すくらい伸びきっている。
男の我慢しきれない欲望が顔に現れていた。
見てはいけないものを見たような気がしてすぐに目をそらし、前を向く。
理解が出来ないこの感覚に私史上初の鳥肌を立てた。

小池は今にも欲望を満たしたいはずだが、自分を守るためか
「行こう」とは言わない。
そして、いかにも平静を装って
「どうします?」
と聞くが、表情で嘘は付けないようだ。
いや、嘘をつくために我慢した結果、欲に塗れた顔になったのかもしれない。
とにかく見ていられない表情だった。

小池は先輩を待つ、降りるなら降りればいいし待つということは期待しているということだろう。
一方で先輩は二人の空間ではなく、三人の空間でもあると感じているのか先ほどのノリはない。

女「・・・んー」
男「もう行きますよ」
女「ん~、じゃあ、一旦タバコ吸いたいから降りる」
男「了解っす」
女「じゃあ、支払いはカードで」
男「あ、ありがとうございます」

男は降りて、家へと向かう。

女「すみません、時間かけちゃって」
私「いえいえ」

やはり三人の空間になってたことを感じていたのか私に気を遣う女性の上司。
そして、気まずそうにもしている。

それよりも、私は小池のあの顔が気になってしょうがない。
今までも、男と女が乗ってくることはあったがここまで欲が見える姿を見たことがない。

支払いを終え、先輩もタクシーを降り私はその場から離れていったが、
バックミラーに映るのはその場でガードレールに腰掛けながらタバコを吸っている女性の上司のみ。

もしかして、あの欲望の顔に引いてしまったのではないか。
そう思いながら私はその場を後にした。
人間は、欲望にまみれると人間じゃない顔をする。

著者の敬人 與那城さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。