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道草物語 第四話

Image by Olia Gozha

まず手配しなきゃいけないのは、内装屋さん。奇跡的に妻の友達に内装屋さんがいたので、すぐに連絡をして、一緒に内見をして設計図を引く作業が始まった。僕らが決めたコンセプトは「家庭的」。だから、飲食店にあるような大きな調理器具も厨房器具もいらない。お家の、もしくはシェアハウスくらいの少し大きめのキッチンでいい。電化製品も家電サイズでいい。とにかく家庭の延長を作りたい。そうお願いした。

見積額を見て驚いた。いや、まだ飲食店の中では安い方だったと思うのだが、それでも見慣れない桁の額に驚いた。覚悟を試される時だった。

そこから一ヶ月は、ほとんど記憶がない。怒涛のような忙しい毎日が始まったのだ。見積もりをお願いしている裏で、銀行などを回って、どれくらい借り入れできるのか、クラウドファンディングもやろうか、てゆかお店の名前は、コンセプトは、色は、ロゴは、メニューは、仕入先は……決めても決めても、さらに決めなきゃいけないことが出てきて、もう決めたくない、もうやだ。とウダウダしていた。

あぁ、夢ってお金で買えるし、お金で叶えられるものなのだなぁ、と思ってしまった。お金さえあればなんだってできる。そしてお金がなきゃなにもできない。そう思ってしまうと、この世界が少しだけつまらなく、そして少しイジワルに感じた。

そうこうしているうちに、お店の名前が決まった。「ハチドリ食堂」だ。渡り鳥が出入りするように、ここのお店が何かの始まりと終わりを内包しているような、そんな物語のあるお店になったらいいな。そんな思いから名付けた。

ロゴマークも作って、内装もこだわって設計した。

そして契約当日。

僕たちの契約書は白紙に戻った。

塗りたくった夢のキャンバスも、全て白で上書きされてしまった。

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Image by Jukka Aalho

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