タクシー運転手の日常「人は見た目じゃないと言うけど」

深夜2時、繁華街からは離れ、ひと気のない場所で乗って来た。
男二人と女一人。
そのうち一人の男は腕まで見えるくらいタトゥーが入っている。

時間帯といい、乗る場所といい、見た目といい、
どうしても偏見なしに見ても良くは思えない。
時たまある警戒したくなるお客様。

タトゥーのお客様は助手席に座る。
時間も時間、場所も場所、見た目も見た目、
全てを含めたうえで助手席。
警戒心が高まるはずだが、何故か消えた。

そのタトゥーのお客様に、柔和で温かなモノを感じた。
フィーリングと言うべきものかもしれないが、
「なんか喋りやすい」「なんか合う感じする」
その類いのやつ。

乗って早々、ネームプレートの僕の名前を気になって聞いてくるところも
警戒心を拭うのに役立った。

人懐っこいのかもしれない。
今思うとそう感じる。

目的地へ向かう道中は、見えてくるお店での思い出をあれこれ語る。

10m進むたびに、
「この店は誰々と初めて会った」
「このお店は頑張ってお金払ってお蕎麦食べた」
「このお店ではよくリリックを書いていた」

いろいろ面白いが、リリックを書いていたというあたり、
ラッパーなのかもしれない。

中でも気になったのは、
「裁判沙汰を起こしたお店」
というエピソード。


「裁判沙汰を起こしたお店」という思い出話というのが、
助手席のタトゥーの男が酔っぱらって揉め事のなかで殴ってしまい、
慰謝料を請求されるハメになったこと。

その時に、後ろに乗っている男に弁護士を紹介してもらい、解決する。
という後ろに乗っている男とタトゥーの男の初めての出会いであり、
救ってもらった出会いだとか。

酔って、揉めて、殴ってしまう。
は定番であり、何度かあるそう。
見た目からいくと、そのことに驚くことはなく
警戒心も高くはならなかった。

何がそんなに警戒心を拭いさるのか、
決定打はないまま目的地に到着した。

支払いを終え、降りる時、
タトゥーの男は「ありがとうございます」と丁寧に言った。

見た目は良くても横柄な奴だっているからな~と、
決定打を得た嬉しさの余韻に浸りながら見たタトゥーの男の後ろ姿は
ガラの悪い歩き方だった。

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