面白い事話してよ

何か面白い話してよ、地元での飲み会の都度そう友人からお願いされる。しかし面白い答えを返せたためしがない、自分はただ医者を目指して医学部に在籍しているだけだ。

地元の友人は高校卒業後から既に働き始めていることが多く、忙しくも変わらない毎日を送っていることが多い。中高とも進学校出身ではないため大学まで進学した友人は少なく、また彼らの多くは地元企業で働いていると聞いた。中学時代仲の良かった友人らは地元に残り働き、時間が合えば今でもよく集まり遊んでいた。たまたま自分も実家に帰っていた時連絡をとって遊びに混ぜてもらえるように頼んだ。長い間あっていなかったが二つ返事でいいよと言ってもらえた。
中学の時から自分たちのグループは遊ぶといってもこれといった目的を持たずに集まることが多かった。昔は集まってゲームをしたりだらだらと時間を過ごしていたが、今はボードゲームをしたり軽く食事を取ったりと変化していた。昔の話に花を咲かせながら一通りグダグダした後、友人の一人から医者の面白い話ない?裏話とか聞かせてよと言われた。
隣の芝生は青く見えるというが、日々の生活が退屈になってくると自分と縁がない界隈が何か面白いものに見えてしまうのだろうか。昔、自分は医者にならなければプログラマーやプロゲーマーにでもなりたいと考えていた。今ではもうなる事はないだろうが時折彼らがどんな生活を送っているか気になるしその分野で何か面白い話を聞いてみたいと思うことがある。似たようなものだろうか。
結局その時はまだ働いていないからよくわかんないわ、と適当な返事をしてその場を収束させた。後になってから自分なりに面白い事を考えた。頭に浮かんできたの何故だか分からないが、子供のころ読んだ「そーなんだ」という雑誌。この雑誌では科学知識を漫画形式でかなり分かりやすく教えてくれて子供のころに熱中して読んだ思い出がある。知的好奇心がくすぐられるのが子供ながらに気に入ったのだろうか、そういえばトリビアの泉というTV番組があってそれも似たような感じで面白いと思ったことがある。
一年生のころ教授から人の鼻の穴は二つあるが多くの人は片方の鼻の孔で呼吸をしており、またこの開いてる孔は15分から30分くらいで交互に閉じたり開いたりしていると聞いた。これは交代制鼻閉と呼ばれていていくつかの説があるがなぜこれが起きているか実はよくわかっていないそうだ。当時の自分はこの話を聞いてスゲェと思ったが今になって思い返してみると糞どうでもいい。でも一瞬でも感じたあのスゲェが面白いにつながるのだろうか…

前置きがとても長くなってしまったがここからは自分が医学について学んでいるうちにスゲェと思った知識をつらつらと書き連ねていこうと思う。よかったら飲み会のネタにでもしてください


ハニーボーン

小学生のころ肘の内側の骨が出っ張っているところをハニーボーンと自分の周りでは呼んでいた。ここをデコピンで上手くヒットさせると手がびりびりと痺れるのだ。子供のころは叩くとなぜだかビリビリ痺れる、ハニーボーンがなんだかすごいもののように思えた。友達のハニーボーンを叩きしびれが来たらここハニーボーンって言うんだよと教えてくる奴がクラスに一人いるくらいには皆ハニーボーンが好きだった。ではそのハニーボーンとはなんなのか…
結論から言うとハニーボーンと呼ばれている物は神経である。人の体は様々な神経が縦横無尽に駆け巡っているが、この部位には尺骨神経という神経が通っている。この神経は上腕骨(腕の力こぶができる側の骨)の内側面にある尺骨神経溝という場所を通っており、デコピンによって底を刺激することによってあの感覚が生じるのだ。しかしなぜハニーボーンと呼ぶのか?少し調べてみた。
すぐに分かったことだがハニーボーンはfunny boneの訛りである。これならば何となくわかるのではないだろうか。Funny(おかしな)​ Born(骨)
叩いたら何故か痺れたようなおかしな症状が生じる骨
そんな感じで名づけられたのだろうか。他にも説はあるがこれが一番馴染みやすかったので紹介しておこう。ハニーボーンは骨と名がついているが実際は神経であり、それが刺激されることによってびりびりとした感覚が訪れるのだ。
さてここから先はハニーボーンの少しマニアックな話となってしまうので難しい話が苦手だよって方はとばした方がいいかもしれない。
何回か叩いてみると鋭い人なら何か違和感を感じる方がいるかもしれない。
なぜ肘を叩くと指先が痺れるのか?痺れるの先ほど説明した通りで神経刺激によるものだ。ではなぜ指先なのか?ふつうしびれが生じるにしても叩いた皮膚のとこではないのだろうか?鋭い人ならここに違和感を感じるだろう。
この叩いたところと違う所が痺れるおかしさがfunny boneのfunnyの所以であり、子供のころスゲェと感じつい人に教えたくなってしまう所なのだろう。ここを簡単に説明しようと思うがもしよかったら頑張って聞いてほしい。医学初心者の方が分かりやすいように、ひいては飲み会の酔った状態の相手に伝わり且つ酔った状態の自分でも伝えられるレベルを目指したいがまぁ難しいだろう。

結論から話すとこの指先が痺れるのは尺骨神経の支配領域と脳の誤認から生じるのだ。尺骨神経の感覚の支配領域は狭くて指先のあの痺れる場所しか支配していないのだ。そのためハニーボーン(尺骨神経)が刺激されると脳が誤認してあたかも指先が刺激されているかのように感じる。
メタルギアⅤファントムペインというゲームを知っている方はいるだろうか?コナミから発売された有名なゲームシリーズの一つでありこのゲーム主人公はとある出来事から片腕をなくし義手を装着する。義手には感覚を感じる機能はないが主人公は度々なくした腕から痛みを感じるという。これをファントムペイン(幻肢痛)と呼ぶ。これは実際に事故などで腕をなくした人でも起こることがあるらしいがこれらは前述のfunny boneのくだりで説明できる。腕はなくなってしまったが、残った神経が刺激され脳が誤解してしまいあるはずのない腕が痛いと感じ取ってしまうのだ。
長くなってしまったが言いたかったのはハニーボーンってすげぇってこと。文章を普段書かないせいもあるけどハニーボーンだけで一時間弱書いてしまった…解剖学についてのお話だったから次も人の構造について話そうか。

喉仏と医学生

喉仏(のどぼとけ)は知っているだろうか?首にある飛び出している構造物で上を向くと飛び出しが顕著になるあそこだ。触るとなんか不快な感じがする場所で友達の喉仏を触ると十中八九嫌がられる。なぜ仏が付くかというと人を火葬した時ご遺骨のこの部分が仏さまが座っているかのように見えるからだ。そしてこのご遺骨は納骨の際も手厚く扱われる。割と有名な話であり知っている方も多いと思う。
ではこの喉仏とはなんなのか?
のどぼとけの正体は背骨の一部だ。更に正確に言うなら背骨を椎骨と称すが、その中でも頸椎であり七本ある上から二番目の骨である。この骨はタイトルにあるように医学生にとっても思い出の骨(私の大学だけかもしれない)である。
どのように関りがあるのか…
医学部で実施される数ある実習の中に解剖学実習というものがある。これは名前の通りで解剖を通して人体の構造を学んでいくものである。医学生はこの実習を通して様々な事を学ぶ。先ほどの尺骨神経も然りである。学生は班を組み丁寧に実習を行うが当然初めての試みであり四苦八苦しながら実習を進めていく。人の構造は複雑で血管一本をとっても教科書通りに通っているとは限らない。また解剖するご遺体の臓器は血管を含めて大抵は脂肪に埋もれているため丁寧に行っていても傷つけてしまうことも少ないながらにある。しかし絶対に傷をつけてはいけない臓器がありそれがこの喉仏なのだ。我が大学ではこの喉仏を傷つけたものは退学の処分を受けることになっていると、解剖実習の初日に教員から伝えられる。そのため医学生はこの喉仏を自分の親より大切に扱わなければならないのだ。
解剖はご本人とご遺族のご厚意と且つ厳正な審査を通じてさせて頂けるようになる。解剖実習が終わったのちご遺体はキレイにされご遺族にお返しされるのだ。そしてその後火葬される。そのためご遺体の解剖は適当に行ってはならない。ご本人とご遺族の厚意によって成り立っているためご遺体のお返しした後に嫌な気持ちにさせてはいけないのだ。納骨の際喉仏は重要なポジションにあるためこれを傷つけてはいけないという事となっている。そんなわけで仏様を傷つける不届きものは退学となってしまうのだ。

喉仏の偉大さは伝わったと思うが実はこの骨は解剖学的観点からもかなり重要な役目を持っている。骨と骨の間を関節と呼ぶ。関節は人の体の動きに重要な役割を持つがこの喉仏は凄い関節を持っている。それによって人は頭を左右に回転することができる。多くの関節は手足を見てもらえれば分かると思うが曲げ伸ばししかできない。しかし喉仏は独特な関節を持つことによってこの回転の動きができるのだ。
そんなわけで医学生はこのやんごとなきお骨であり解剖学的にも素晴らしい喉仏に頭が上がらないのだ。余談ではあるがこの喉仏の骨は英語でaxis(軸椎)と呼ばれ、関節を作っているもう一つの骨であり頸椎の一番目をatlas(環椎)と呼ぶ。頭蓋骨を支えている環椎をatlasって名づけた人は結構おつだよね。

耳抜きとエウスタキオ管

耳抜きはみなさんできるだろうか。気圧差がかかる移動をしていると生じるあれを治す方法である。多くの人は飛行機に乗っての移動や車で山道を移動している時などに経験したことがあるのではないだろうか?耳が詰まった感じがして何となく不快になるあれである。
あれの正体は航空性中耳炎と呼ぶ。今回はこれについて簡単に説明していこうかなと思うけど例の如く解剖学なので酔った頭で理解できるだろうか…医学って面白いけど伝えるのが難しい、せめて相手のJCSが一桁であってくれればなんとかなるか。
詰まった感じのあれを理解するには耳の基本的な構造の理解をしないといけない。けど今回話す内容は全て高校の基礎生物でやる内容なので知っている方も多いと思う。
耳は外耳、中耳、内耳の三つに分かれているが今回話すのは外耳と中耳。外耳は耳介(耳たぶ)から鼓膜までを表し、中耳は鼓膜より内側の事を言う、内耳はもっと奥の事を言う。重要なのは外耳と中耳が鼓膜で隔たれているということだ。また基本的に中耳は閉鎖空間なので圧の変動はないが外耳は開放的なので周囲の空間の大気圧によって圧は変動する。これによって内外の圧差が生じる。飛行機に持って行ったポテトチップの袋がパンパンになったのを見たことがあるだろう。簡単に言えばあれの状態だ。あんなものが人の耳に起きるわけだから当然不快感も覚えるだろうし痛くなることもある。
しかし人の体は素晴らしくそれに対する対抗手段を持っている。それがエウスタキオ管(耳管)なのだ。この管は中耳と鼻の奥とを繋げておりあくびや唾を飲み込んだ際などに開くことがありそれによって内外圧差を保つようになっている。他にエウスタキオ管を開く裏技に水を飲むことや飴を舐めることなどがある。個人的にはあくびすることが一番治しやすいと思っている。
必殺技でバルサルバ法というものが存在する。聞いたことがある人も多いと思うが鼻をつまんで息こらえをするあれだ。タイトルの耳抜きという名のように表現されることがある。強制的に耳管に空気を送り込む方法でこれによって開かせるのだ。この方法は便利だがあまり強くやりすぎると中耳を傷つけてしまうことがあるため、注意が必要となっている。気を付けて行おう。

エウスタキオ管って聞きなれない単語だが私たちは普段から彼らにとてもお世話になっているのだ。

同じように耳が詰まったりする症状を風邪の時に経験したことがある方も多いのではないだろうか?風邪の時って熱が出て頭が痛くてなんだかボーっとすることが多くまた時々耳の調子が良くない感じがすることも多いと思う。自分の声がいつもと違うように聞こえたり、なんかうまく音が聞こえなかったりすることがあるだろう。それもこのエウスタキオ管で説明できるのだ。
風邪の時はゴホゴホと咳をすることが多いと思うがその咳には痰やら分泌液などが含まれているのはご存じであろう。これらがエウスタキオ管を閉塞させてしまうのだ。それによって中耳内に液が貯留したり圧差が生じたりして前述の症状が生じてしまうのだ。風邪の時のあれと飛行機の時のあれが同じことで説明できるってスゲェって思う。医学は知るにつれて日常の自己の変化を説明できるようになるのは面白いよね。
同じエウスタキオ管の話でも風の時に耳が詰まった症状に耳抜きをやるのはやめておこう。説明した通り耳管に液体が詰まっているので耳抜きすると中耳に押し込まれる恐れがあります。風邪が治ったら自然に治るものなのでそっちの方をケアしましょう。風邪はたいてい寝てたら治ります、休みましょう。

医学と漫画

人って知識を付けるとそれを使いたがる習性がある。これは医学にもおけるし他の分野でも同じであろう。感覚で楽しめばよいものをつい理屈で考えてしまう時がある。漫画やアニメなどのフィクションを楽しむ時だ。
頻繁に違和感を感じるのはやはりアクション漫画だ。彼らの大半は凄い能力を持っている。時を操ったりチャクラを練ったり手と手を合わせることで物を作りだしたりする。そこに疑問は感じたりしない。そういう世界観だと割り切ってみているし何よりカッコいいからだ。しかし戦闘描写に関しては物申したい時が多々ある。
戦闘漫画で強い敵が主人公の腹を強く殴る描写が取られることがあるがこの時しばしば口から血を吹く(喀血)するのだ。これは普通に考えておかしい。腹を強く殴って出血することはあるだろう。実際格闘技では内臓破裂などで出血することもある。しかしこれは体の中での出血なのだ。おなかの中で出血してそのままおなかの中にだらだらと溜まっていく状態であり間違っても口から飛び出すものではない。また医学的に喀血(ゴホッっと血を吹く)のと吐血(嘔吐するような感じに血を吐く)は区別されており前述の物は気道病変、ひいては肺が一般的と考えられるので間違ってもおなかを殴った症状ではないのだ。
そういう漫画の表現を見るたびにこいつらは人に見える何かで体の構造も違うんじゃないかとかしょうもないことを考えてしまう。自分だけではないだろうかと思っていたが先日予備校のビデオ授業を見ていたところ講師の先生が漫画で自分の血液の鉄を自在に操って戦うキャラに対して物申しているのを見て安心した覚えがある。ちなみに鉄は人体の中では血液と肝臓に大半は貯蓄されているが数g程度しかない。間違っても血液から刃物を生み出し攻撃などはできないのだ。

ここで話は少し変わるのだが痛みで人は死んでしまう、これは医学的に正しいのか正しくないのか。皆さんはどう考えますか?

つい最近まで知らなかったのだがこれは医学的には正しい。しかも死因は何かというとこれが非常に以外で溺死してしまうのだ。これも予備校のビデオ講義でお話を聞いたものであるので医学部6年生なら聞いたこともあるかもしれない。何か異論があるかたは某予備校のDr.Kまでお願いします。
通常人の痛みは受容体と呼ばれるたんぱく質で刺激を受け取り認知される、それが脳まで神経で伝導、伝達され認知されるのだ。この過程からでは人が死に至ることが想像できないが、なぜ起こってしまうのか。
実は人は極度の痛みを感じ取るとサイトカイン(伝達物質)を放出する。それが肺の血管に作用すると肺水腫と呼ばれる病態を引き起こすのだ。名前からも分かる通りこれは肺が水分で水浸しになってしまう状態でそのため、肺でのガス交換が行えなくなる。これによって人は酸素化を保てなくなりなくなってしまうのだ。ちなみに分かりやすく溺死と比喩したが、実際は溺死ではない。病態もARDSと呼ばれるもので救急に詳しい医療者なら広く認知されている物である。一般的な臨床像は現場に出ていないから分からないが、医師国家試験では交通事故後の続発症の非心原性肺水腫として問われることが多い。そのため普通に喧嘩して小突かれた程度なら起こることはないため普通の方は心配することはない病態だ。漫画のキャラみたいに数十メートル吹っ飛ばされて壁にたたきつけられるような喧嘩をしていたなら別であるが…
痛いだけでなくそれによって溺れてしまうとは人の体の仕組みはつくづくとんでもないもんだと感じる。職業柄気になってしまう点というものはどんな職業についても感じるものであるのだろうか。

最後に

書く前に案を10個くらい用意してきたけど意外に一つ一つが長くなってしまった。全部書くと疲れるので今回はこれくらいにしておこうかな。飲み会でふらっと小話をする時にまとめたものだけど見返してみるとどれも簡単に伝えられないものばかりだな…医療従事者同士なら全然問題ない内容ではあるけど初学者に教えるというのは難しいものだね。書いていて​患者さんに病状説明するドクターの大変さが追い浮かべられた(笑)
もし見ている人がいたらよかったら知りたい事とか訂正とかを書き込んでもらえると次に暇になった時の俺が喜びます。

今回の記事内容は医学的知識を基に作成したものではありますが、医学生の戯れで作られた内容です。ご容赦下さい。

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