スペック・ハイ(承)

スペック・ハイ(承)


(場面1)

 1560年。桶狭間の戦い。馬の走る音。剣戟の音。断末魔の声。大混乱。信長の勝利に終わり、今川義元(いまがわよしもと)は討ち取られる。

(信長)「おい、サル。わしは 義元の居場所を通報した梁田政綱(やなだまさつな)を第一の功(こう)、義元に一番槍をつけた服部小平太(はっとりこへいた)を第二の殊勲(しゅくん)、そして義元の首級(くび)をとった毛利新介(もうりしんすけ)を第三の手柄とするつもりじゃ」

(秀吉)「はは。上様のなさりたいように。しかし、さすがでございますな」

(信長)「なに!サル。お前にはこの差配(さはい)の意味が分かるというのか」

(秀吉)「情報がすべてということでござるな?」

(信長)「やはり、そちは油断のならない男ぞ(笑)」


(場面2)

(桜 )「先生が京大を7回受けたのは英語と数学の学力を生徒に信用してもらうためだったのですよね?」

(高木)「そうだね」

(桜 )「ということは、国語と社会は無勉強で受けたのですか?」

(高木)「そうだよ。高校の国語と社会の指導していないからどうでもいいんだね」

(桜 )「でも、先生の成績開示を見たら国語も社会も京大二次で5割前後ですよね。勉強しなくても5割とれるのですか?」

(高木)「京大の国語は全て記述式だし、地歴(ちれき)も記述式が多い。古文と漢文、それに地歴の固有名詞はすべて忘れたけれど記述式は常識があれば何も勉強しなくても半分くらいはとれる」

(桜 )「やっぱり英語と数学で合否が決まるのか」

(高木)「そう。私の場合は国語と社会が無勉強でも総合点はボーダーくらいだったよ。私は女心が読めないからバツイチになったんだよ。小説に出てくる女性の心理はまるで読めない(笑)」


(場面3)

 四日市高校の教室で。

(男子)「おい、タイガ」

(桜 )「だから、私はタイガではなくて“オオガ”なの」

(男子)「だって、おまえ空手の黒帯なんだろ?」

(桜 )「だから?」

(男子)「みんな言っているぜ。猛獣タイガーって」

(桜 )「なんですって!!」

(男子)「おおコワ。タイガー桜!」

(桜 )「『ドラゴン桜』をもじったつもり?悲しいくらいセンスないわね」

(男子)「ちっ!」 

 男子が走って逃げていく。


(場面4)

 学校でALT(ネイティブの補助教師)の先生と高木先生が生徒の質問に答えている。

(高木)「じゃ、ALT(エイエルティー)の先生に尋ねてごらん」

(生徒)「先生、参考書の例文はこれなのに何故ダメなんですか?」

(ALT)「これは文法的に正しいし通じるけど、第二次世界大戦の頃の英語だよ」

(生徒)「でも、日本の大学は日本の教師の教える内容でいいんじゃないの?」

(ALT)「しかし、現在のアメリカ人はそんな英語使わないよ」

(生徒)「ボクは予備校の参考書を信じる」

(ALT)「じゃ、好きにすればいい」

  生徒が教室から出ていく。

(ALT)「あんなバカじゃ難関大に合格できるわけない!勝手に落ちろ」

(高木)「まぁまぁ。高校生に真剣に怒ってもね。マイクロソフトのゲイツさんはハーバード合格。アマゾンのベゾスさんはプリンストン大合格。あの子はそういうレベルをめざしていないから」

(ALT)「でも、これじゃボクは何のために日本に居るのか分からない!!」


(場面5)

 塾の教室で塾生の保護者と高木先生が面談している。

(母親)「うちの息子は学校のテストはいつも80点以上。これなら京都大学も合格できますよね?」

(高木)「え?学校の定期テストの点数は大学合格のめやすにはならないのですよ」

(母親)「どういうことですか?」

(高木)「大阪の北野高校なら毎年京大に70名、阪大に50名ほどが合格します。クラスの3分の1くらいに入っていればいいんです」

(母親)「うちの息子の高校からは京都大学に合格者が出たなんて聞いたことがない」

(高木)「だとすると、いつも校内テストで90点以上だからといって京大に合格できるとは言えませんよね」

(母親)「でも、うちの子は小学校のときは県内58位でした」

(高木)「どこかの模試ですか?」

(母親)「はい」

(高木)「三重県では最大の塾が実施する統一テストでも受験するのはほんの一部の子だけ。ほとんどの生徒が受けていないテストで5年前に58位といってもですね・・・」

(母親)「わかりました!もう結構です!!」

 母親は怒ってドアをバーンと閉めて出ていく。

(高木)「ふぅ・・・」


(場面5)

(高木)「ほとんどの子は正しい情報を得ずに敵に突入する雑兵(ぞうひょう)のようだ」

(桜 )「討ち死(うちじに)間違いなしだね」

(高木)「でも、本当のことを言うと怒るから黙って不合格になるのを見ているしかないね」

(桜 )「気の毒だね」

(高木)「小学生の頃から塾に通っている子が一番困る。ほんの表面だけ教えて『すごい!高校生レベルまでマスターしました!』ってヨイショする塾が多すぎ。真に受ける子がいるからね」

(桜 )「大阪の北野高校の偏差値は76だもんね」

(高木)「そう。そういう高校なら情報が豊富だから判断を間違わないんだ」

(桜 )「草野球で良い選手だからってメジャーで活躍できるはずがない。まずは、県大会、次に甲子園、そしてプロ」

(高木)「そういう正しい情報を持っている人って少ないね」

 自分は何もかも知っていると思うな。人からおだてられても「私には分かりません」という勇気を持て。決して尊大になってはいけない。
                                                            =イワン・パブロブ=  
                                                   終わり

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