23時過ぎに新橋駅でラーメンを食べる

23時過ぎに新橋駅でラーメン食べようとしてガード下のラーメン屋に入る。店員二人と店長とおぼしきおっさんの三人で店を回している。
声優みたいな高くて甘ったるい声で応対してくれたのは、丸顔で目がくりっとしたベトナム人の女の子。あまりの可愛らしさに萌える。これから週三で通おうと心に誓う。もう一人の店員はこれまたベトナム人の男子。
このふたりは時々ベトナム語で一言二言、言葉を交わしながらてきぱきとラーメンを運び会計をこなす。厨房に引っ込んでいるおっさんの姿は目に入らないのでぱっと見、ベトナム人の若夫婦が切り盛りする店みたいな感じで、このベトナム人の男子店員のことが大変羨ましく、意味不明な嫉妬の炎が心にぽっと灯る。
隣には、受験生らしい日本人男子二名。一番安いラーメンをすすりながら、必死で話している。
「18歳って人生で一番がんばらないといけないんだよ!この夏が勝負なんだよ。今、必死でやらなきゃならないんだよ!」
そーか、18歳とはそういう歳だったのか。うっかりしたなー。わしが18の時は、お母さんに河合塾行くって嘘ついて四万円もらって、チペワのエンジニアブーツとチノパン買って喜んでたなあ。
ひたすら反省する。
そう思いながら丸顔の可愛い店員さんを見ていると、お客さんには素敵な笑顔なんだけど、食器の上げ下げやお茶の補充作業の合間に見せる顔はびっくりするくらいに険しい。
きっと必死でがんばっているんだな。
上部が全面チャーシュー仕様のラーメンをふーふー言いながら食べて、可愛い店員さんにお会計してもらう時に名札が目に入る。ゴックさんって言うんだ。モビルスーツと同じ名前じゃん。また、違う意味で萌える。
店を出で駅に向かう。交差点で信号待ちをしていると、酩酊した中年カップルがふらふらと歩いてきて、青信号を待つ間、だらしなくちちくりあっておる。色っぽいおばさんが言う。
「タケルさんのことなんか全然タイプじゃないんだから~」
「なんだよー、じゃ、今日は帰るぞー。」
ちょいワル風50がらみのおっさんがおばさんの腕をつかんで言う。おばさんはおっさんに抱きつながら何か言い返している。
世の中はすっかり大人が不真面目に、若い人が真面目になった。そして、僕は水陸両用モビルスーツと同じ名前の丸顔のゴックさんに萌えていた。
真夏の夜の湿った空気。首筋から背中に流れる不快な汗。もうすぐ日付が変わる。
日本の夏、おっさんの夏。
合掌

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