10人生の岐路 / 鳴り止まない電話

前編: 09人生の岐路 / 中途半端になる
後編: 11人生の岐路 / マネージャーからキレられる
前述した通り、私は学生広報スタッフを軸に、2つのプロジェクトと授業において時間を費やしてきた。

自分が心からやりたいと思ったからである。
ただ、最後まで続けるのって相当大変なんだなと痛感した。
特に、映画祭のスタッフをすることで実感した。

専攻する映画学科では毎年、映画祭を行っている。
映画を意欲的に制作する学生は多いものの、人に観せる機会をあまり作らないのだ。撮影をし、編集を終え、作品に関わってくれた人を集めて上映をしたら終わりという流れである。もっと公に、そして自分達の作品を見せる場を設けるべきでは…という先生方の熱い想いにより、映画祭と呼ばれるプロジェクトが授業の一環として組み込まれることになりました。

私達の代は、2日に渡り映画祭を実施した。1日は特別上映を、そしてもう1日は学生映画の上映というプログラムを組みました。
特別上映は北白川派という撮影チームにより、作られた映画を流すというもの。

映画学科には、北白川派映画祭という大きなプロジェクトが2つあるのだ。
北白川派…プロの俳優を呼び、現役の教授陣と学生が1つとなり、映画を撮影するというもの。
これまでに、
木村威夫『黄金花』
高橋伴明『MADE IN JAPAN 〜こらっ!〜』
山本起也『カミハテ商店』
林海象 『弥勒』    などが制作された。

そして、私達が上映するのは木村威夫監督『黄金花』だった。

映画祭のチームは9割が1年生で構成されていた。
何も分からない状態で始まった映画祭の準備は、先輩の助言と、影で努力を惜しまないリーダー達により、着々と進んで行ったのだ。

夏休みも映画祭の準備などで、ほとんど大学に通う日々だった。
正直、夏休みが潰れても構わなかった。そのくらい、映画祭に掛ける想いは強かったのだ。

しかし、夏が過ぎると、一人一人の意識が大きく分かれた。
やる気がある人、やる気がない人。
自分は…どっちの立ち場か分からないが、だんだんと意識が薄れていったのは確かだった。

当日が近づくにつれ、準備期間の担当部署から本番の担当部署へと役割が変わり、私は晴れてゲスト対応班になった。しかも、リーダーという大きな立ち場を担ったのだ。
私の他に友人が2人と、頼れるリーダー陣3人がいた。主に、ゲストのタイムスケジュールを割り出して、往復の交通に、ホテルに、入り時間に、トークの内容に…と様々な手配と段取りを組んだ。

ゲストの方は、1日目…木村威夫監督、原田芳雄さん、松坂慶子さん、河津祐介さん、松原智恵子さん、あがた森魚さん、絵沢萠子さん
2日目…有名な映画監督お2人
と、言った錚々たる方だったのだ。

私がゲスト対応班に入ったのは、みんなより、ゲストの方と接する機会が多いのではないだろうか…と言った興味からだった。

単純すぎたからこそ、すぐに心は折れた。

先生から先に話はお伝えしているようだが、段取りなどを伝えるのは学生の役目。
メールではないんですね…。先方とその場でやり取りができるように連絡は電話で行う。私が苦手とする電話だったのです。聞く事をしっかり書いても緊張しすぎて話をスムーズにすることができない…。
焦りました。
しかし、私がやるしかなかったのです。
ゲストのマネージャーさんに電話をして…出られた時の緊張感と言ったら、心臓の鼓動が瞬く間に早くなるのが分かった。
用件を伝えた後の質問は心臓がバクバクしていた。
どんな内容が来ても受け答えができるように様々なシミュレーションを繰り返したが、敵わない時が到来した。
でも逃げ出すわけには行かなかったため、ひたすら頑張るしかなかったのだ。

そのような時に、私は逃げた。

今日は集まりもないし、元々友人たちと遊ぶ予定が入っているし別に良いか…と思って、映画祭の準備よりも遊びを優先したのだ。
良く言えば、休息。悪く言えば、サボり。

だが、神様は見ていたのだ。
タイミング悪く、ゲスト対応にミスが発覚し、核となるリーダーから電話が来た。
今から大学に来て、と。
しかし、私は友人の家にいた。大学がある京都市内ではなく、市外だった。
ごめん…無理と言って電話を切った後に、3人の友人から一人10回の電話が掛かって来た。
私は全てを無視した。

すると今度はメールが来て、ほとんど脅しに近かった。
一緒にいる映画祭の友人をかばった事で事態は大きくなり、仕方なく、夜の22時を回った時に、私は泣く泣く市内に帰ったのを覚えている。
結局、4時間ほど粘った。

リーダー陣の視線は驚くほど冷たかったが、正直、どうでも良かった。
誰から何を言われようが、だから?と心の中では反抗心で燃え上がっていた。
ただ、一人の友人から言われた信頼は失ったら取り戻すのにどれだけ時間が掛かるか分かるの?という言葉は冷め切っていた私の心に熱湯を注ぐほどの破壊力があったのだ。
自分を責めた。
みんなの前で泣いてお詫びをした。

以来、信頼度ゼロの私はとにかく自分から動き、映画祭に向けて走り出したのだ。
ただ、道はたいらではなかった。

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11人生の岐路 / マネージャーからキレられる

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