新しいものをつかむために古いものを捨てる

苦労して築いたものは手放しにくい

深夜のファミレスで決意したこと

バブルが崩壊してまもない頃、フリーの編集者として独立した。そんな時勢に仕事はあるのかと心配する人もいたが、仕事は自分ひとりではこなせないくらい、発注があった。そのころから、すでに仕事を他人にふり、自分はコントロールをするという体制にあり、よきブレーンにも恵まれて、仕事はどんどん増えていった。
 ある日、いよいよ最終チェックをして印刷所に入れる段階となって、夜遅くに、DTP会社近くのファミレスで仲間の編集者と一緒に作業をしていた。そのころの私は自宅を事務所にしていたため、作業をするスペースがなく、出版社の片隅などを借りて仕事をしていたのだ。
コーヒー一杯でねばりながら、テーブルにゲラを広げて最後の校正をしていたとき、黙々と作業をしていた仲間がポツリとつぶやいた。
「作業ができる事務所が欲しいね」
互いの領域を超えないように気を遣いながらではなく、ゲラやテキスト原稿、辞書などを思いきり広げて作業ができたら…。
編集といえば、マスコミ業界でも憬れの仕事。クリエイティブな仕事のはずだ。それが、深夜のファミレスで、ちまちまと作業をしている。これが現実というものなのかもしれないが、現状に甘んじている自分はクリエイターと言えるだろうか。
自分に協力してくれている仕事仲間のためにも、いつか、ちゃんとした事務所を構えたい、構えてみせるぞ、と心に固く誓ったのだった。





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