22人生の岐路 / 初監督として

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映画を専攻しているんだから、一度は映画監督を務めてみたいものだ。
そう思い、大学三年生のゼミで私は監督をした。
はじめの授業の時に、各自、企画書の提出を要された。
想いだけは人一倍強い私。
ただ、行動力が伴わないのがダメなところ。
監督になりたいと思ったものの、企画書に何も手をつけていない。
アイデアさえ思い浮かばない。
そんなモヤモヤを抱えながら、ゼミの初日を迎える。
朝ー
ふとアイデアが降りてきた。
思うままに打ち込む。
確認もせず、提出をすることとなる。

企画書の冒頭が先生の目に止まり、私の企画はその年のゼミ作品として製作されることとなった。
時間をかけたのはほんの一瞬。
それだけで決まった。
なんて単純なんだろう。
でも、嬉しかった。自分で企画した作品が通ったってね。

ちなみに冒頭は、人生はこおり鬼である。です。
のちの作品のタイトルにもなる。『こおり鬼』と。

決まったときは浮かれていたが、そんな余裕はすぐに消えた。

企画書から脚本におこす作業。
何度も考えて何度も書いた。というか打った。
でもすべてのシナリオに先生からのダメ出しが入った。
これはシナリオじゃない、と。

1、2年生と脚本の授業は受けてきた。
そこそこ評価も良かった。
だけど、先生からは一度もOKが出なかった。
挙句の果てに、先生が考えたストーリーとなった。
クレジットには潤色と明記で先生の名前が載っている。
シナリオに手を加えたという意味だが、9分の8は先生が考えたものだ。

大橋には監督になる才能がない、とも言われた。

撮影に入る前から、企画だけが自分。
あとは先生のストーリーという意識となり、監督を務めながらも心はモヤモヤする日々だった。
でも、最後まで責任を持ってやる。
その気持ちだけは変わらなかった。
だって、私は監督だもん。

今回の作品で、大きな壁となったのが、
・演出
・キャスト
・編集 である。
まあ、すべてですね。

・演出
カットが分からない。
どこでカットをするか、カメラ位置をどうするか。
一切、アイデアが浮かばなかった。
ゼミの時間帯にリハーサルをする。
それなのに、指示ができない。
1カットに何十分もの時間が掛かる。
この様子を見ていられない先生が演出を決める。
この繰り返しでした。
監督なのに監督の力量はなかった。
とにかく先生の助言を受け、ひたすら演出を練る日々となりました。
ゼロの知識の私は先生により、ゼロからイチの階段をのぼり始めました。

・キャスト
登場人物 男2名、女1名、そして男の子5名
鍵となるのが、男の子たちである。
ただ、あてがない。
ゼロから子供達を探すこととなる。
さて、どうしようか。
まずは、先輩や後輩、友人に聞いてみる。
知り合いや、これまでの作品に出演した子はいないか、と。
でも…ダメだった。
誰一人として候補があがらなかった。
あー、どうしよう。
自分で企画した作品にも関わらず、頭が痛くなる問題だった。
演出を考えなくちゃいけない時期と重なり、さらに、撮影のスケジュールに間に合わなかったら…と思うと怖くてたまらなかった。
とにかく頭も心も痛かった。

むしゃくしゃする中、小さな光が見えた
それは、助監の大家さんの知り合いのお孫さんと繋がったのだ。
助監の友人が大家さんと仲がよく、子供の話をしてくれたのだ。
すると、近所に住むお知り合いのお孫さんがいるから、と話をつけてくれた。

さっそく、連絡先を教えてもらい、その家に行った。
両親が共働きだったけど、時間を合わせてお母さんと子供と会うことができた。
とても良い方だった。
しかも、すぐに出演許可をいただいたのだ。
本当に頭がさがる想いでした。ありがとうございます。その気持ちだけ。
さらに、残りの男の子4名を今から探すのも困難極まりなかったので、その子のお母さんにお願いをして友達4人に声をかけてもらいました。
結果、4人ではなく、5人のお友達を引き連れて撮影に来てくれました。

子供が決まったことで、やる気は一気に高まりました。

撮影のことも。
撮影は、子供たちが学校のない夏休みに。5日間。
シーンは6シーンのみ。
5シーンが公園で、残りの1シーンが室内。
子供たちは全員サッカー少年ということもあり、元気がいい。
小学2年生のやんちゃばかりだ。
演技は一切つけず思いのまま動いてもらった。
でもここは止まってほしい部分ではみんなに声を掛けたものの、誰一人として耳を傾けず、とにかく走り回っている。
私は撮影初日に声が枯れました。
男の子たち6人の上に立つのは大変なことだ。
でも、撮りきった。どうにかだ。

ただ、『こおり鬼』のもっとも重要なカットで私はミスをしてしまった。
と言うより、演出の意図を汲み取っておらず、先生が思っていたことと違うことをした。
そのカットを見た先生は激怒。
なんでこのカットにしたんだ。これじゃ、すべてが台無しだ。
先生から言われた言葉。
もう良いじゃん。だって、これ、私の作品なんだもん。
心ではそう思った。でも声には出さなかった。
先生と私の間で冷戦が起きたのだ。
でも、これまで撮影ができたのは先生のおかげ
東京に住んでいる先生は、夏休みの撮影にも関わらず、近くのホテルに泊まり、ほとんどの撮影に来てくれた。
先生がいるからこそ、撮影が成り立っていたのだ。
もう一度、自分の作品を見つめ直し、演出について考えるようになった。
1カットのために、3日ほど撮影に時間を要したのだ。
全部の時間、撮影をした。
1分もないカット。
だけど、撮った時間は莫大。
改めて、カットに懸ける想いを考えさせられる。プロも素人も関係ない。
結局、撮影が終わったのは、秋過ぎだった。

・編集
Final Cut Pro6を使用しての編集だった。
大学の編集室にこもる日々でした。
画を繋ぐ。
一度、繋いだものを先生に見せると、参考とするようにと先生が繋いだものを渡される。
カットの秒数を比較し、より良い作品を組み立てていくことになりました。
これまで編集はかじる程度しか行った事がなかったため、ほとんど初心者同然。
フェードイン・アウトさえ分からなかった。
とにかくFinal Cutに早く慣れ、編集をした。
同じ画ばかりを見ていると飽きる。
何度も休憩を取った。
腰が痛くなった。目が疲れた。
様々な障害を越え、どうにか作品が出来上がった。
しかし、新たな問題が発生。
クレジット(エンドロール)の文字がチカチカする。
様々な方法を試してもダメ。
なんでクレジットで躓くの。
我慢の限界でもあった。
時間も来ており、最後の最後まで粘り、どうにかタイトルも作り、画の完成はした。
音に関しては、録音部にすべてをお任せした。
そして、私たちの作品『こおり鬼』は合評へと羽ばたくことになる。

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23人生の岐路 / 『こおり鬼』の評価

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