2万4千年の恐怖と、45億年の悲しみ その4 〜簡単に出ていける訳ねぇだろう!

2万4千年の恐怖と、45億年の悲しみ その4 〜簡単に出ていける訳ねぇだろう!


「すみません、一人暴れている人が居るので、一杯、先に出してくれないですか?」 
突然、別のおばさんに話し掛けられた。 
ここに被災している中で一人、ストレスで乱暴になっているおじいさんが居て、 その人が「俺のラーメンは無いのか!」と暴れているのだそうだ。 
慌てて一杯提供した。 

無事に120人分のラーメンを作り終わり、片付けをしていると、 
防護服で完全防備をした一団がやってきた。 
彼らも僕らと同じように東京から来たボランティアグループだと言っていた。 
「避難圏には入っていないが、ここも本当は危ない地域なので、すぐにでも移動した方がいい。 
 我々は、被災地の方を啓蒙しに来たんです」 
と言っていた。 

啓蒙・・・か。 

避難民を少しでもホッとさせたいと言って、 ラーメンにナルトを入れて炊き出しをするグループがある。 
その一方で、仰々しい防護服で脅して、すぐに移動するべきだと言うグループがある。 
同じように被災者を思いやる「ボランティア・グループ」でありながら、 やっていることは正反対だ。 

僕は、ここ二ヶ月で何度口にしたか分からない台詞を、もう一度口の中で呟いた。 
「一体、何が正しいのか、分からない」 

原発は安全だと言う人が居る一方で、危険だと言う人が居る。 
原発は必要だと言う人が居る一方で、不要だと言う人が居る。 
現在の放射線量では人体には悪影響は無いと言う人が居る一方で、 危険だから直ちに逃げた方がいいと言う人が居る。 
政府の発表は信じられないと言う人が居る一方で、 出所の分からないデマに流されるなと言う人が居る。 

一体何が正しいのだか、僕にはもう分からない。 
本当にここが危険なら、ラーメンなんか作っている場合じゃないのかもしれない。 
僕の作ったラーメンのせいで、この避難所の居心地が良くなり、 それで避難民の方たちの身体に重篤な症状が出たら、僕には責任が取れるのか? 

何が正しいのか分からない時は、 
自分が正しいと直感するものを信じて行動するべきなのかもしれない。 
いや、実際そうする他に道は無い。 

防護服の一団が去ってから、早稲田で長くラーメン屋を営んでいる店主が、 
「俺ぁあぁいう連中は、好かねぇ!」
と怒気を上げた。 
「危険だって脅したって、簡単に出ていける訳ねぇだろう!守るべきもんがあるだろう!!」 

外国人は「なぜ日本の人たちは、国外脱出をしないのか?」と首を傾げる。 
東京人は「なぜ福島の人たちは、県外脱出をしないのか?」と首を傾げる。 

だが自分のラーメン屋に誇りを持つ彼には、 それでも自分の街を捨てない避難民の気持ちが痛いほど分かるのだろう。 
いくら危険だと言われたって、長年いのちを賭して守ってきた自分の居場所を、 簡単に捨てることなんか出来やしない。 
人にはそれぞれ、いのちよりも大事なものがあるのだ。

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