望んでなかった生徒会役員

晴天の霹靂

中学2年の春、僕はサッカー部に所属し、サッカーと勉強に充実した毎日を送っていた。
しかし、ある日のこと。担任の女性教師に僕は意外な事を言われる。それは、思いもがけない一言だった。
「生徒会の役員に立候補してよ。絶対ね。」
僕自身、生徒会の役員になるなんて、全く予想していなかった。中学1年の時に、遠足の実行委員になったことはあった。担当していた美術の先生の進行の仕方が面白く、実行委員の活動は楽しかった。
しかし、生徒会の役員になるのは、別だ。僕は、生徒会の役員になりたくなかった理由があった。

政治家のようにはなりたくなかった

生徒会の役員になるには、全校生徒の投票によって選ばれなければならなければならない。そのためには、候補者はまるで政治家のように、「清き一票お願いします!!」とアピールし、自分に投票してもらう必要があった。
これが、僕は嫌だった。とにかく嫌だった。なぜなら、人に頭を下げてまで何かをしてもらうのは、最低なことだと思っていたからだ。(その気持ちは、20年近くたった今もあまり変わらない。半澤直樹の登場人物のように土下座をすることは、僕は出来ない)
僕は断った。何度も何度も断った。自分からは、決して「立候補する」とは言わなかった。でも、どんな経緯かは忘れたけど、立候補は受理され、生徒会の役員選挙に臨むことになった。
他の候補者が、校門の横に立って生徒に挨拶したり、校内放送で自身の存在をアピールする中、僕は何もしなかった。先生に何かしろと言われても、全て断った。
当然だと思っていた。なぜなら、自分はやりたくなかったのだから。

選挙の当日に僕が訴えたこと

選挙の当日、候補者は体育館で全校生徒の前で演説することになっていた。僕は生まれて初めて、演壇の上にたち、何百人の人の前で、自分の考えを述べることになった。人前に出ることに慣れていなかった僕は、足が震えるほど緊張した。
そして、演壇に立った僕はこう言った。
「僕は生徒会の役員をやりたくて、ここにいるわけではありません。僕はやりたくありません。だから、僕に票を入れないでください。」
前代未聞だったのだろう。ざわざわとした声が体育館中に聞こえた。笑っていた奴もいた。バカにした奴もいた。でも、僕にはどうでもよかった。それが、僕の本音だったからだ。本当にやりたくなかったのだ。

人の言うことを聞かない子供に

開票の結果、信じられないことが起きた。
僕はなんと1票差で当選したのだ。
僕は周りの人間を恨んだ。自分のことを勝手に立候補した先生とは、口をきかなくなった。「投票した」といった奴には、殴りかかった。サッカーがしたかったのに、生徒会役員になったことで、練習を休むことも増えた。
それまで、僕は「人生では、思い通りにならないことがある」なんて、考えもしなかった。でも、僕はこの生徒会役員の件をきっかけに、「人生では、思い通りにならないことがある」ということを身をもって実感した。
嫌々はじまった生徒会役員としての活動が、楽しいはずはなかった。僕にとって、中学2年に起きた事件は、未だにトラウマのように引っかかっている。この事をきっかけに、僕は周りの大人の意見を聞かない子供になっていく。その事がよかったとはとても思えない。
しかし、中学2年の自分には、こうするしかなかったのだ。反抗することで自分を守るしかなかったのだ。
あの当時を振り返って言えることがあるとすれば、僕はきちんと「NO」というべきだったのだと思う。そして、自分の考えを納得するまで伝えるべきだったのだと思う。
ただ1つ言えることがあるとすれば、僕は「票を入れないでください。」と言ったことに後悔はしていない。それだけは言える。

著者の西原 雄一さんに人生相談を申込む

著者の西原 雄一さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。