Chapter.3 夜に捧ぐ

彼女は、かけっこが得意で
僕がいつも
何処に行くの
何故そんなに急いでるの
と聞くのを繰り返しても
彼女の耳には届かない
時折振り返っては見せる
はにかんだ笑顔を
見ようとするのが精一杯で
僕は、離されないように
このレールから
足を踏み外さないように
そう思いながら、走り続ける

公園で遊ぶ友の声
子供の帰りを待つ母の胸
父の帰りを待つ子供
彼らは今どこで何をしてるのか
想いは 近づき過ぎ去って行く
ただ、僕は今
彼女の後ろ姿を見つめ走り続ける
時折見せる
木漏れ日のような
温かで、悪戯な
あの笑顔を見逃さないように

1.2.3
目を覚ます
隣には
冷めきった温もりが
確かにあった 
その跡を指で辿り
いつしか見た夢は 
過去へ流されたのだと気付く
騒々しい目覚ましが
時を告げる前に
タバコの煙で胸を満たした
木漏れ日が差し込むには
まだ外は暗かった

みんなの読んで良かった!