えにしつむぎ 第3縁 「一期一会の縁」

「世界中の人と一秒間ずつ逢うとしたら190年かかるらしい。だとすると、生きてる中で、良い出逢い悪い出逢いに係らず出会っている人達は、ものすごく貴重なんやなぁ。で、いつもそばにおってくれる人なんて奇跡中の奇跡の出逢いやな」彼女の言葉の後、静かに虫の声が鳴った気がした。さて、七夕の夜の宴が明けたら、彼女と彼はどの町へと流れ着くのだろう。今日は、第3の故郷でもある、愛すべき大阪での数あるエニシ話の一つを。初めて大阪に辿り着いた時の、最初の出逢い。大阪は新世界、通天閣真下に位置する小さな孤島『のこされ島』の話を。2008年に思い立って、いわき駅から関西行きの夜行バスに飛び乗った。ゴスペルコーラスを教えるようになり、8年目の事。宗教思想、人種、欧米人への音楽的技術のコンプレックス...ゴスペルに向かおうとすればするほど、深みにハマってしまう、そんな時期に「関西のゴスペルが熱い!」そう聞いていたことを直に感じてみたかったのだ。2600円という破格の宿を予約し、行ってみると、いわゆる低賃金労働者が集まるドヤ街にあった。夜ふらりと宿の窓から見えた通天閣まで。思いのほか観光地化されたその周辺に少し安堵感を覚え、手書きのバーの看板が目に付き、その階段を上ってみる。「いらっしゃい」小さい丸いこけしのようなボブカットの女性が東北からの旅人を迎える。その隣には190cmはあろう眼鏡の細身の大男、その絵面はいっそうこの旅の奇妙さをかき立てた訳で。女は通称のこさん、男は通称ガンジー。夜更けまで話し込み、北の旅人はその次の日の夜もその島で休息を取ることになる。「のこされ島」には、全国各地そして海外からの旅人が連日漂流する。安宿が多い為、日本へのバックパッカーが多く存在する、実は国際的な新世界。未来少年コナンの生まれた美しい島、のこされ島由来のバーの名前。 主人公コナンがおじいと過ごしたロケット小屋さながらの素朴であったかい手作り空間。この二人のほっこりした島精神が相まって、日々様々な人がそこには集い往く。彼らはそのうちに、「よっこらしょ島」というシェアハウスをオープン、あらゆる国の旅人と触れ合う日常の中、平和と生活について深く考えるように。生活にリアルに息づく思想を時に立ち上がり声高に叫び、時に仲間と音楽に乗せる。震災後直ぐ、彼らは東北に出張のこされ島を提供してあげよう!と沢山の楽器とお酒を積んで新世界から小名浜に来てくれた(その時のこさんは丸坊主で、ガンジーと揃ってそれはそれは只ならぬ後光を放っていたのだった)彼らの心はどんな時も「人」に向いている。
ー西暦2008年、核兵器より超絶威力の「超磁力兵器」使用の最終戦争が勃発。人類は大半が死滅、これ迄の高度な文明の多くが消失。五大陸は変形し地軸も曲がり、超磁力兵器による激烈な地殻変動で多くの都市が海中に没す。戦争勃発からの20年後、コナンはのこされ島でおじいと平穏に暮らすも、心ない悪党にその生活を乱され、守るべき人と自然の為に征服者に立ち向かってゆく...2013年「バラクーダ号」は、新世界から七夕の次の朝、出航する。コナンではなく、のこさんとガンジーを乗せて。小さい丸い織り姫と長く細い彦星は天の川を南へのんびりと流れて往く。暮らしとは、必ずしも住まい在りきではない。生きる様(さま)だと思う。日本を旅し、そして海をも渡る時がくるだろう。一期一会について考える。一生に一度だけの機会。生涯に一度限りであること...一期一会の縁とは、良きも悪しきも出逢う人全てに相当する。もう逢えないかも知れない。だけど、きっと遠くに行ってもこの人達は切り開いていくのだろうな、という安心感を胸に、彼らの家なき放浪の旅に拍手を送りたい。また逢えるさ、縁さえあれば、と。さてさて、大阪での縁の数々は人情てんこ盛り。また次へのお楽しみとして、結びましょう。

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