えにしつむぎ 第七縁 『荻窪の姉、ヨッシー』

ヨッシー、彼女は生粋の西会津ッ子である。荻窪駅西口の裏路地で小さな小料理屋を営み、今月の29日で開店9周年を迎える。前回登場した荻窪ルースターでカリスマ的人気だったウエイトレスのヨッシーは、2004年秋に満を持して念願の店を持つ。彼女の魅力はその飾りっ気の無い開けっぴろげな性格にある。年代や役職関係なく、衣着せない口調で誰とも同等に接する。ルースター時代も、出演者のミュージシャンよりお客様を楽しませてしまう程のフロア巡回術。丁度ヨッシーがルースターを去る頃、営業時間外で、似ていない越路吹雪の物真似をする彼女に出くわしたのが衝撃の初対面。そのステージ術に周りは釘付けで大笑い。彼女がいれば、どんな場でもぱっと明るくなるのだ。6年位前に私の部屋の真向かいに越して来て、その間柄は家族の如く。彼女の店が終わるまで待って、帰りにラーメン屋に寄ったり、休みの日曜にぶらり出掛けたり。実は彼女の上京の理由は、チェッカーズのフミヤさんに逢う為。常連客は、そんな彼女の生き甲斐を茶化しながら、彼女の大きく明るい声で一日の疲れを癒す。夜中酔って愚痴を言うと「中央線で満足するな、もっとデカイ舞台に立ちなさい」と叱咤された。私が兼ねてから出演したかった目黒の大きなライヴハウスに出演が決まった時は、誰よりも喜んでくれた。震災の年の秋に、私がゴスペルを歌うYoutubeを見て、NHK BSの「アメイジング•ボイス」から出演の依頼が来た。対談コメンテイターは、何と藤井フミヤ氏!真っ先にヨッシーに電話し、当日は彼女を付き人として連行。日頃の愚痴聞きと叱咤激励の恩返しが出来た気がした。今もなお、ヨッシーは私のライヴに沢山の常連客を連れて応援に来てくれる。ヨッシーの「バッチリ!」をライヴの出来のバロメーターにしている自分もいたり。とにかく本当の姉のように慕っている。「ならぬものはならぬのです」の名言は大河ドラマ以前に、彼女の口癖で聞いていた。その言葉に、彼女の生き様と頑固さの美学が映る。今日も豪快な笑い声で、カウンターの縁の一つ一つに酒を注ぐ。ー 結び。

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