最近中国で信者が増えているキリスト教は,実は白蓮教ではないだろうかという話

先日、NHKスペシャルで中国の「地下教会(政府未公認のキリスト教会)」についての番組を見た。現在、中国のキリスト教徒の数は(おそらくカトリック)は経済発展に取り残された人、裕福な生活を送りながらも心に不安を抱える人を取り込み爆発的に増加しているらしい。
ミサや説教の様子を見ると、これは本当にキリスト教であるのかと思われるほどに呪術的であり、そこには中国の人々の心のなかに脈々と受け継がれる土着信仰の影を感じた。失業や事業の失敗で心に変調をきたした信徒には経済的利潤という悪魔が憑依しているということで聖水を振りかける。また、顔をつけるだけで信仰を得ることができるという水に頭をざぶんとつける。ここで呪力を媒介しているものは水であるらしい。
ところで、大学4年の秋から冬にかけて、卒業論文作成のため大学の図書館の書庫の一隅で中国明朝の正史「明史」を読みふけった。それは、卒業論文を書くためというより明朝を打ち立てた朱元璋(重八)という人物の生い立ちと半生がおもしろかったからでもある。
朱重八の生い立ちは悲惨であった。ほとんど乞食といってよいほどの貧農の生まれで、名前の通り8番目の子。生まれるとすぐに皇覚寺という寺に預けられ、托鉢僧といえば聞こえがよいが、ここでも乞食同然の生活送っていたらしい。
しかし、乱世が重八を歴史の表舞台に押し出していく。元朝の衰退と共に江南地方で勃発した白蓮教徒の乱に参加する過程で彼は頭角を現していく。この過程も面白い(スパイ疑惑をかけられ殺されそうになったのだが、あまりに人相が悪かったため助命された件など)が、ここでは白蓮教について少し触れたい。
中国の歴史は虐げられてきた民衆の蜂起と反乱の歴史でもある。有名なものだけを挙げれば、三国時代のさきがけになる黄巾の乱、そして、この白蓮教徒の乱(またの名を紅巾の乱とも言う)、清朝末期の太平天国の乱。これらは全て民衆反乱であり、このような反乱をきっかけに時の王朝は倒され、新たな時代が築かれるのだが、その背後には常に土着信仰の蠢きがあった。
黄巾の乱の首魁である張角は太平道を操り、紅巾の乱の韓山童は白蓮教、太平天国の乱の洪秀全は拝上帝会を自らの正統性の根拠とした。民衆はこのような一種得体の知れない地下から湧き上がってきた感のある土着信仰の力によって反乱に突き動かされていく。
ところで、朱重八が参加することになった白蓮教。これは弥勒信仰をもととした一種の救済思想で、民衆を救済していく過程での革命と権力奪取を肯定している。この白蓮教も多分に呪術的で水を満たした甕に白い切り紙を浮かべて儀式を行う。苦しみぬき、失うものを持たない民衆はこの白蓮教に救いを求め蜂起に身を投じていった。
大学4年の秋、僕の頭の中はこの白蓮教と当時世間を騒がせていたオウム真理教の問題が交互に飛び交い、人間が抱える不安の根源とその行き着く先について思いをめぐらしていた。
話を2013年の中国における地下教会に戻す。ここで行われている儀式、信仰の形式はキリスト教というよりもむしろこれらの民衆反乱を誘発した土着信仰の一形態であるような気がしてならない。
大地から沸き起こってくるような救いに対する渇望。そして呪力を媒介する水。現代にも人々の中に脈々と受け継がれ、奔流のような反乱の引き金となる土着信仰。このように考えれば歴史上の民衆反乱も過去の話ではない。そして、時の政権がいかにこれを恐れてきたかについても無理なく理解できる。
しかし、問題はなぜ人々がそこまで苦しまなければならないような環境に置かれてしまうのかだが、ここまででも十分に長い文章になってしまったので、この話題は次の機会に考えたい。

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