…仕事をするということ。その2

前話: 仕事、それは「生きる」っていうこと。
私はこれが好きだから、得意だから、向いているから…。

背景に親やパートナーの力があるから…。
そういう「これ」や「力」がある人はいい。


食べるため、生きるために、家族のために、好きでもないしたくもない仕事にあくせくしている人のほうが多いかも知れない。

「たった一度の人生なんだから、したいことをすればいいのに」と"出来る""出来た"人は言う。


好きなことを仕事にし、得意なことで生活していける人は幸せだと思う。
しかし、そんな人が今の社会の中で、どのくらいいるんだろう。
自分の成功談をここに語る人たちは、"出来る""出来た"人が多い。
しかし、私は違う。
好きな仕事でもないし、目標を持って臨んだわけじゃない。
志高く使命感があったわけでもない。
学歴もコネも財産も…秀でた才能も何もないから、目の前のすべき仕事を、ひたすらどのようにするのかを考え、良心に問いながら、した。 
嫌いでも逃げたくても、とにかく…するしかないと思った。

そんな私でも、たとえ些細な仕事でも、やり続けたことで自分でも気づかなかった自分自身の能力に目覚め、予測もしなかった可能性が拓けた。
特にしたかった仕事をしているわけではないし、職種を選んだわけでもないけれど、親からもらった能力を精一杯耕して、その時その場に求められていることに向かって、達成感と充実感を感じながら、いくつもの仕事をしてきた。

生きていくためのお金をいただきながら、自分を見つけ、多くの人と出会い、学びの機会を得た。仕事は有難いと心から感じている。

好きな仕事じゃなくても、目標がなくても、与えられた自分の場所で自分の出来る限りを尽くす。 こういう仕事のあり方も、あってもいいのではないかと思っている。

私の前に道はない、私の後ろに道が出来る…なんて、高村光太郎だっただろうか。
まさに、そう感じている。




父の突然の死から、働く人生がスタートした。

小さな本屋の店員から出発した私の仕事の仕方は、歪んだ滅私奉公だったと思う。

とにかくどんなことでも一生懸命、会社や上司が唖然とするくらいに頑張った。
なぜそんなに働くのかとみんながあきれるほど、仕事のために仕事をした。
超過勤務手当などはいらなかった。お金のためじゃなく、会社のためでもなく、なぜそんなに夢中になって働くのか、自分でもわからなかった。
人の仕事も、他部署の仕事も、他社の仕事もすべて知りたかった。
仕事だけなら頑張ることが出来たけれど、人間関係が生ずると、はずれくじばかりを引いた。上手くいかない。認めてもらえない。
今なら、その理由がわかる。
本当にいやな人間だったんだと思う。

何にも社会を知らないまま、仕事の基本もチームワークも知らないまま、失敗ばかりの不器用な仕事の仕方だった。
人見知りで、劣等感が強く可愛気のない、自意識過剰の一匹狼…今もそれは変わっていない。

上手に甘えたり、人に媚びを売って取り入ることが出来ない性格。
たまたま調子よく乗っかったり、おいしい仕事がなかったわけじゃないけれど、そういう時に限って、普段はしない失敗をしてしまう。

いい話があると、私のような粗忽ものが受けるよりも、もっといい人がいるはずだと、変に謙遜して、アドバイスまでして人に譲ってしまう。
自己アピールが下手で不愛想な私より、愛想がよく要領のいい誰かが、いつも私よりも先にいい目にあっていた。

だけど、それが私なんだから仕方ない。
色気や愛想で上手に立ち回れないのが私。
頼りにする人も履歴も、何もない私。
負けず嫌いなくせに、自分から積極的主体的に動くことが出来ない私。
しかも勉強嫌いで横着者、好奇心が強いくせに飽きっぽい性格も変えられないのが私。
そんな自分のことを信じられない私が出来ることは、人を信じてみることだった。

私を知る人が、「あなたなら出来るよ」「これ、やってくれない?」と声を掛けてくれるときは、まず「はい」と答えてから、どうしたら上手くいくか、成果が出るのか、評価を得られるのかを考えて、頼んでよかったと言ってもらえるように、その時の精一杯でやり抜く…と決めた。
自分は信じられなくても、他人が私には出来ると見込んでくれた、その人の選択眼を信じてみようと思った。私を選んでくれたその人に「あなたに頼んでよかった」「出会ってよかった」と言っていただけるように。

そのために、出来ることからやってみた、その後の私の道のりを振り返ってみた。

何もないことを嘆いても、突然何かが降ってくることはない。
私の内にある最大のコンプレックスから克服することを試みた。

学歴がない、大学に行っていないことのコンプレックスを払拭するためには、大学に行くこと以外に方法がなかった。


つづく



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