東京に行って失ったものと得たもの・一旦終了

前編: 東京に行って失ったものと得たもの・その5

 技術部門に移ってしばらく経った後、職場に私宛の一本の電話がかかってきた。聞くと、どうも仕事の話ではなく、なにやら投資の話のようである。普通は、こういう話が来れば即切り、ガチャ切りすべきところ、当時の私はこういうことには免疫がなく、ついつい、相手の話を聞いてしまったのである。で、ぜひ会いたいと約束を取り付けられ、数日後、会社の近所の喫茶店で待ち合わせることとした。

 会ってみると、同年代の普通のサラリーマン風営業マンであった。いろいろと話しをしていくと、どうも「先物取引」の勧誘であった。このときはいろいろと説明を受けたが、仕組みについては全然わからず、まずは白金3枚30万円(1枚10万円)を投資することにした。指定の口座に30万円を振り込み、しばらくすると、関係書類が送られてきた。

 ここで、先物取引の仕組みを簡単に説明しておく。先物取引とは、金、白金、ゴム、ガソリン、原油等の工業品や、米、トウモロコシ、大豆、小豆等の農産物の取引で、限月、すなわち、決算月が決められたこれら商品を買うか売るかし、限月までに決済して、その差額が利益又は損になるという取引である。ただ、売ったり買ったりといっても、現物を目の前にするわけではなく、目に見えない「取引の権利」のようなものを売買する取引であり、目の前にあるものは、書類だけである。

  この取引を始めるには、取引に必要な資金はすべて必要ではなく、証拠金と呼ばれる担保があれば始められる。例えば白金を例にすると、現在の相場は約4000円/グラムで、取引単位(これを枚という)は500グラムなので、白金1枚は4000×500=2000000=200万円に相当する。これの売買にあたっては、200万円すべては必要ではなく、証拠金として、現在、1枚7万8000円ぐらいがあれば始められる。言い換えると、78000円を証拠金として出すだけで、200万円分の取引ができるということである。

 例えば、白金を4000円/グラムで1枚買ったとして、これが4100円に値上がりし、この時点で売れば、100×500=50000=5万円の利益となる(実際は、仲介の会社に手数料が取られるので、この差額分すべてが自分のところに入ってくるわけではない)。また、同じように、3950円に値下がりして、この時点で売れば、50×500=25000円の損となる。

 また、先物取引の最大の特徴として「売り」から始める(これを空売りという)こともできる。すなわち、現物取引の場合、現物を買って、後で売って、その差額が利益又は損失になるのだが、先物取引の場合、現物はなくてもまず売って、その後に買うという決裁をすれば、同じく、その差額が利益又は損失になる。

 この空売りをすると、相場が値下がっている状況でも利益を出すことができる。すなわち、上記の例で言えば、白金を4000円/グラムで1枚売れば、この時点で4000×500=200万円の「収入」が出ており、これが3950円/グラムに値下がった時に「買えば」、3950×500=1975000円の支出であり、こうすることにより、収入-支出=2000000-1975000=25000円の利益となる。

 ここで、先物市場において何らかの売買を立てている状態(これを建玉という)で、拠出している証拠金が残りの1/2を切った場合、証拠金の担保力が弱まるので、売買を決済するか、ないし、この状態で取引を続ける場合、追証拠金といって、証拠金を追加して担保力を付けなければならない。なお、これら証拠金の仕組みについては私が関わっていた時期のものであり、現在は追証拠金証拠金の計算は複雑な仕組みになっているようだ。

 いずれにせよ、証拠金の担保力が弱くなった時には、追加の証拠金を入れなければならないということである。実はこれがかなりのクセモノであり、先物取引を行う際の最も怖い点なのであるが、取引を始めてしばらくして、これに直面することとなった。


と、ここまで書いたものの、この先、順を追って書いても、いつまでたっても終わらないため、勝手ながら、この話も一旦ここで終了とさせていただきます。この話の続きを含む内容につきましては、今後も断片的に書いてまいりますので、ご了承のほど、よろしくお願い申し上げます。


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