SPINNING(R)(スピニング):日本人唯一のマスターインストラクターになる
話はどんどん進んでいき館兄はロサンゼルス国際空港で迎えのバスを待っていました。
一週間のスケジュールでマスターインストラクターになるための合宿を行うのです。SPINNING(R)(スピニング)マスターインストラクターキャンプという名称です。
期間中、交わされる会話は勿論、
英語
だけ。
かろうじて意志が伝えられる程度の、館兄の英語能力でどうやってついて行くのか、物凄い不安の中、キャンプの会場である、SPINNING(R)(スピニング)の総本山、マッドドッグアスレチック社に到着します。
世界中から選りすぐられた14名のマスターインストラクター候補達、そしてメイン講師の二人。彼らと挨拶する。
その中に英語がつたない3人が居た。
彼らはコスタリカ、そしてメキシコからの参加者。母国語はスペイン語。その中の一人は、マスターインストラクターになるために六ヶ月前から本格的に英語の勉強を開始したらしい。それで、あそこまで話せるのか!
想いが違う。
決意が違う。
覚悟が違う。
いきなり自分の心に冷や水を浴びせられる。
でも、そのおかげで目が覚める。
いや、こじ開けて貰った。
館兄の中にくすぶっていた小さな火種に火を付けられた。とにかく、SPINNING(R)(スピニング)の全てを受け止める。それでも燃えないのなら、
もう館兄にはSPINNING(R)(スピニング)を続けていく資格が無い。
朝9時にスタートし毎晩7時まで、そして全員でディナーを食べた後に、スペイン語圏の3人と館兄の4人を集めて、ルチアナ先生の復習がある。
彼らに負けたくないから、必死で食らいついた。
そして宿に戻ると更に自習。
初日から脳天をハンマーで殴られたかのようなショックを受ける。
昨日までの自分に怒りを覚える。
時差ぼけのせいもあるだろうが、今日習ったことが頭から離れなくて眠れない。
眠れない。
いや、眠って、頭の中から消えることが、怖くて仕方がなかった。
時差ぼけのだるさの中、アラームに反応してベッドから無理矢理起きる。今は、学びたくてしょうが無い。
もっと知りたい。
もっと理解したい。
もっと出来る様になりたい。
もっと共有したい。
10年間、あれだけ何度も読み返したSPINNING®(スピニング)の教科書。その半分も理解できていなかったのか。10年やって何かを掴んだ気になっていた自分の情けなさに、恥ずかしくなる。
だけど、今ここに居る、マスターインストラクターを目指しているみんなは、つたない英語の僕にも正面から話しかけてくれて、知識を共有してくれる。そればかりか、開発者のジョニーGが例えとして使った、東洋の言葉や概念について質問をしてきたりする。
そこに向けて、僕なりの理解を精一杯伝えようとする。言葉に詰まっていると、
と、みんなの中から言葉がかかる。
ここに居れている自分を信じよう。いや、そんな必要すら無い。今を吸収しよう。今をモノにしよう。今をつかみ取ろう。
がむしゃら、と言う言葉が今振り返ると1番当てはまると思う。全てをつかみ取りたかった。全てをモノにしたかった。脳みそが溶けそうになりながらも、あっという間に一週間が経とうとしていた。
参加者それぞれが5分ずつ担当するSPINNING®(スピニング)ライドが始まった。
ペダルを回しながら、
涙がこぼれた。
生まれて初めて、SPINNING®(スピニング)ライド中に流した涙だった。
未だに言葉には出来ない、そんな感情だった。感無量、とでも言うのだろうか。
メキシコから来たホセ。彼の元にまっすぐ向かう。
そう言って、ホセはその楽曲を教えてくれた。その時はまだ日本では手に入れる事ができず、世界中を探して手に入れる事に成功したんだ。今はiTunesにあるよ。
いよいよ明日は帰国。ルチアナ先生に正直に不安を打ち明ける。
館兄が人生を通じて行ってきたトレーニングの概念に、SPINNING(R)(スピニング)は完全に添っている。そういう意味で全く違和感は無い。ただし、日本のフィットネス業界、としてみるとその概念は全く落とし込まれていない。
つまりスタジオエクササイズとして、グループエクササイズとして行う事を考えた場合、今までの参加者は物足りないと感じるだろう。それは、SPINNING(R)(スピニング)の教科書にも載っているとおり「トレーニング」と「ワークアウト」の違いだからだ。
その1クラスのこと、のみを考えるのが「ワークアウト」だとすれば、SPINNING(R)(スピニング)は週間、月刊、年間を通して成果を積み上げていく「トレーニング」なのだ。それは初めて日本に入ってきたときから「心拍計」を使うメニューであったことからも伺える。
だけど、環境も僕の実力もそのレベルには達していなく、僕が行っていたクラスも含め日本のサイクリングエクササイズのほとんどは「ワークアウト」だった。だから、単にキツイ物になってしまい、一部のコアな人が続けてくれている状況だ。
考え込んでしまって、眠れなかった。
だが、マスターインストラクターになったのだ。なった以上「出来ない」というセリフは使えない。
「出来るはずの人」になったのだから。
「よしやろう」
決めた。きっと参加者は減るだろう。でも、怖いのはそれだけだ。もし、それでクビになるのなら、それは仕方が無い。正しいと信じて突き進んだ、初めての頃に戻ろう。初心に返ろう。
もう一度、本当のSPINNING(R)(スピニング)の面白さを日本に伝えよう。
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